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107話 ハロウィンの騒動

(12/21追記 習視点です。記載を忘れていました。すみません…)

「よし。帰りの会、終わり!一応、言っとくが、今日はハロウィンだからって羽目を外しすぎんなよー!勉強だけしてろなんざ言わんが、俺の携帯に電話かかってきたと思ったら警察からでした()なんてことにはせんといてくれ」


 了解です。ま、そこの心配はいりませんよ。……もっと変なところから来るかもですが。



「カイ。今日はどうする?」

「普通に帰って勉強します。ふふん、僕にハロウィンを楽しむなんて気概はねぇです」

「そか」


 自慢気に言われても…というところだけど、カイらしいちゃらしい。



「習先輩はどうされるのです?やはりお子さん達とハロウィン満喫ですか?それとも、清水先輩とデートです?」


 カイの中での俺のイメージがよくわかる。この後、何する? って聞いてくるときにだいたい子供たちか、四季の名前が出てくる。…その通りなんだけどさ。



「まー、子供たちとハロウィン満喫かな。ね、四季?」

「ですねー。まぁ、家々を巡ってトリックオアトリート!と言うような年では私も子供たちもないで……ないですかね?」

「微妙だね…」


 高校に通っているという一点だけを見れば「うん。そうだね」なんだけど。実年齢で見ると俺らはともかく、子供たちは変じゃない子もいる。アイリは元孤児だから実年齢不明。おそらく、中学生くらい。



カレン、コウキ、ミズキは生後1年くらい。コウキとミズキは前世の俺らの子供の転生者ということを加味すれば、2000歳とかそこらになる。



ガロウとレイコはしっかり記録が残ってるから、小学六年生から中学一年くらい。少なくともアイリよりは年下のはず。



ルナは魔族でごたごたに巻き込まれたせいで、精神的に一番幼くても実年齢は俺らよりも上。…いや、シャイツァー(魔法の道具)の中に籠ってたし、どうなってんだろ。



「ま、まぁ、満喫されるというのであれば、よかったです!」

「まーねー」


 一般的な楽しみ方ではないけどね。絶対。



「じゃあ、僕は帰るのでー!」

「ばいばーい」

「また明日ですー」


 元気よく帰ってったね。ほんと、いつ見ても気持ちがいい。さて……、残ってる戦闘班も含めて動こうか。とはいえ、俺らのやることは子供たちが来る前に皆をアメリカに不法入国させることだけだけど。



 いやまぁ、FBIからもCIAからも許可もらってるからセーフか。明らか管轄違うけど、気にしない。……あ。日本政府忘れてた。担当者さんにメールを送り付ければいいか。……これでよし! なお、ほぼ事後承諾。



さて、帰還用に作った魔法を書いた紙も渡して送り出そう。これで俺らが今日、アメリカでしないと駄目なことは終わり。俺や四季はワープ用の裂け目に腕を突っ込んでるだけだから、アメリカに行ってるかと言われると微妙だけど。



「…ん。来た」

「ありがと。さっそく、行こうか」


 子供たちも来てくれたし、レッツゴー。目的地はエディンバラ。イギリスが|連王王国《United Kingdom》と呼ばれる所以たる4つある構成国の一つ、スコットランドの首都。



「あれー?いつものところじゃないー?」

「いつもはロンドンだからね。今日はもっと北のエディンバラ」

「ちゃんと連絡は取ったのか?」

「さすがにね」


 イギリスはアメリカみたいに俺らにちょっかいをかけてきた……というには微妙か。面識がない時に俺らにちょっかいをかけるつもりではいたんだろうけど、「アメリカがお宅になんかしようとしてますよー」なんて密告してきた国だ。



 自分も何かしようとしてたくせに(アメリカ)のおいたを密告して、いい関係を築こうとするあたりさすが腹黒紳士……といいたいところだけど、結果的に何もしかけてくることはなく。初手からそれなりにいい関係は築けてる。



 アメリカもアメリカで悪くはないけど……。なぁんでFBIがやらかそうとしてるってCIAが教えに来んだか。連絡どうなってん。



「その割に人いないが?」

「あぁ、待ち合わせの人のこと?仕方ないよ。今回のは一般人が」

「ワシならばそなたらの要求は満たせるかの?」


 ……人気が全くないところを選んだはずなのになぁ。この短時間でなして人がこれんのかね。



「誰です?」


 きりっとした顔で老婆を睨みつける四季。



「心配せんでも、敵対する気はないわい。勝てんしの。ワシは『エルスペス』。この英国で数少ない魔女の一人じゃ」


 そういうとエルスペスさんはほっほっほと笑う。魔女! ……あぁ、そう言われてみれば魔法を使える気配がある。そりゃ、すぐに来れるわな。人払いとかせずに、単に誰にも目撃されずかつ、違和感のない場所としか指定していなかったわけだし。



「エルスペスさんは何用でこちらに?」

「いや、それはワシの台詞じゃろ。おぬしらこそ何をしに……あ。あーーーあれか」


 彼女はポンと手を叩くとどこからともなくスマホを取り出してごそごそと弄る。…なんかめっちゃ不安なんだけど。「ん?開かないの」とか「んー。何でじゃ?パスワード……はて?」とか言ってんだけど。



「ちいと魔法を使うぞい」

「「どうぞー」」


 許可出しは迷わない。だって、どう考えたって自分のスマホのセキュリティをぶち破るつもりでしかないもの。



「あー。おぬしらアレか。国教会(英国国教会)から連絡が来ていた、今日のための援軍か」

「教会とは関係がおありで?」

「そりゃの。おぬしらならわかるじゃろうが、魔法のような力を持っておるなら国家からの干渉は避けれんじゃろうに」

「おっしゃる通りで」


 身もふたもないことを言うと放置する為政者がいるなら馬鹿。自国で暴れられると酷いことになるし、協力できるなら協力すれば、いいことに使えるし。



「まぁ、こっちに来た当初は色々あったが、うまくやっとるよ」

「こっちに来た当初?え。まさか、エルスペスさんって、異世界人?」

「そうじゃの。異世界人じゃのう。まぁ、人かどうかは怪しいがの」


ほっほっほと笑うエルスペスさん。俺らの逆パターンの人か。んー、一応、調べておこうか。



「んー。魔法を使ってもいいですか?貴方を対象に」

「構わんぞい」

「「めちゃ素直に頷かれますね!?」」

「はん。ワシを舐めるでないわ。勝てるか勝てないかの区別くらいできるわい!」


 舐めるでないわ! に続く言葉ェ……。まぁいいか。えーと……。あぁ、偶発的な事故でこっち来てんのね。俺らみたいに神様が容赦なく異世界からいい感じの人をぶっこ抜いてきたわけじゃなく。そこは安心。



 そのせいもあって、この世界とエルスペスさんの世界の距離がかなり近い。さすがに同じ世連樹(せれんじゅ)ではないけれど、嵐が来たらぶつかりそうな距離感でしかない。その世界は……魔法がある世界か。うちの世界は許可が出てれば魔法は使える。元魔法のある世界の出身で、変な悪さもしなかったから魔法を使う許可出てるのね。



 えーっと履歴を見る限り……いや、こっちの世界でもいけるか。照らし合わせるほうが早いか。むー現在進行形で接触してるなら兎も角、ちょっと接触したけど離れましたーだとわかりにくいんだよなぁ。履歴っつっても本当にネットのアクセス履歴みたいに「どこどこと接触」て書いてるわけじゃないし。



 あぁ、あったあった。これか。やっぱ事故だね。接触した時に境界があいまいになって何人かがこっちの世界に来てるわ。逆はなし。接触がこっちの世界が下で良かったね。あっちの世界じゃこっちの生き物、即死するわ。



こっちに来た人が到着した場所は……、全部イギリス。それもグレートブリテン島。まぁ、接触した位置が位置だしな。



この人以外のこの時に来た人は……何人かやらかして討伐されてるけど、何人かは生きてる。あー。だから、エディンバラの魔女。か。他に居なけりゃイギリスの魔女とかになるよね。



「ご出身の世界は見つかりました。ご希望されるならば送り返しますが」

「いらんいらん。既に時間が経ちすぎとる。戻ったところでどうしようもあるまいよ。もっと早ければお願いしたかもしれぬが」


 ですよね。完全に割り切っておられるみたい。なら、何も言うことはなし。



「ほんとにいいのか?同族はこっちにほぼいないだろ?」

「ワシを心配してくれとるのか。ありがとうなぁ。じゃが…、そなたらと同じようなもんさね。同族でなくとも、たとえ寿命がわしらより短くとも、関係性の深い人はいる。その人らとの交流を大事にしたいのじゃよ。それに」


 指がパチッとならされる。その瞬間、目の前にいた高貴な雰囲気をまとった金髪碧眼のおばあちゃんは金髪碧眼の美人さんになった。



「見た目くらいならいくらでも弄れる」

「いや、無理でしょう。エルスペスさん。今の魔法じゃなくて、ただ背筋を伸ばしただけじゃないですか。それで皮膚がピシッと伸びて若返ったように見えてるだけじゃないですか」

「なんじゃ。シキにはバレとるのか。シュウは…」

「凝視してませんでしたが、魔力は感じられますから…」


 それで魔法かどうかはわかりますよ。



「っと、そうでした。名前を言われて思い出しましたが、名乗っていませんでしたね」


 多分、写真を見てるから個人の判別がついただけ。さっさと名乗らないと。



 で、いつも通り名乗って……どうしよ。



「俺らは目的地決まってるんですけど、エルスペスさんはどうされるつもりですか?」

「例年通り、境界が緩むところを引き締めるつもりじゃが……。なんじゃ、ガロウ。その顔。そんなのできるのにこっちに来たの?って顔しとるの。それができるからこそこっちに来るハメになっとるんじゃ。衝突で緩む境界の引き締めをしておったんじゃ。まぁ、世界(世連樹)同士の激突にはほぼ無力だったわけじゃが」


 ただの世界の衝突と世連樹の衝突では規模が違うってレベルじゃないですしね。……うん? エルスペスさんは世連樹を把握していない。そのせいで「世界」って言ってるから……よし、細かいことは気にしないでおこう!



早い話、世連樹の衝突は普通の人ではどうしようもない。次元関係に強い人じゃないと神様でさえきつい。てか、ほとんどのケースの最適解は何もしないこと。世連樹側もやばすぎることを自覚してるから影響が一瞬で済むように修理を頑張るから。



……時空の緩みやら歪みを感知できる人にとってはムリゲーすぎる。やべーの感知したけど何もしないのが最適解とかわかるかい。なお、極まれに神様クラスがまともに対処しないと大惨事になる模様。



「自己紹介も終わったことだし、聞きたいんだが、エルスペスさん以外の魔女は何してんだ?」

「ワシと同じく緩む境界の引き締めじゃのう。ガロウ。ワシがここに来たのはその仕事の途中じゃったからじゃし。……まぁ、援軍を寄越しているなら連絡くらいしてくれと思わんでもないがのう」


 どこに援軍を送るかくらいは連絡しろってことですよね。それは、うん。ごめんなさい。



「当日にならないとどこが一番都合いいかの予想がつかなかったもので」

「ごめんなさい」

「ふぁっ!?」


 そこまで驚か……いや、怯えてるのか、これ。



「批判したから殺すなんてことしませんよ」

「私達はそこまで狭量ではありませんよ」


 ほっとしたように肩を下ろすエルスペスさん。マジでめちゃ怯えられてたのか。



「そういえば父ちゃん。今回はどういういわれのある仕事なんだ?」


 あれ? 説明して……なかったね。異界から敵が来るのはいつも通りだし、まぁいいかで流してたか。



「今日はハロウィンにかこつけて緩む境界からくる悪い奴らをしばく」

「ハロウィンのそもそもの言われは日本でいうお盆っぽいお祭り、サヴィン祭にあります。スコットランドやアイルランド、ブルターニュ半島に名残が残るケルト人がやっていたものですね」

「サヴィン祭は現世とあの世の境界が緩んで家族が帰ってくるのと同時に、悪霊も来るからそれの備えをしよう!って感じだね」

「なる。となると、その悪霊をしばく感じか?」

「半分は」

「半分?」


 こてっと首を傾げるガロウ。この子、反応が大きくてわかりやすいんだよね。



「悪霊もたまにやばいのいるけど、基本はやばすぎてこっちに来れないからね。サイズ的に」

「それはさておき、境界が緩むといっても現世とあの世だけじゃないのです。現世と近い位置にちょっとやばい空間がありまして。今回は位置関係がよくなくて、そのやばい空間と現世の境界も緩むんですよね」

「ふぁーーー」


 そんな毎年じゃないけれど、たまーに近づいてきちゃうんだよねー。それこそうん百年に一回ペースで。今年がたまたまそれ。



「何でんなやばい空間が放置されてんの…?」

「この世界で出たゴミの廃棄場だし、管理はされてるよ。数千年前基準だけど」

「ふぁっ!?」


 ふぁっ!? と言われてもそうとしか言えないんだよね。情勢が急に変わりすぎたんだよ。



「で、です。管理しているとはいえ、ぎゅっと縛ってるので開けるのがめんどくさいらしいんですよ」

「らしい!?」

「「うん(です)」」


 実際、俺らが魔法を使おうとしても世界が「やーだー」とでも言ってるのか向こうにゲート開通しなかったし。俺らの魔法は世界に力を貸してもらってやってるから、やだって言われたら無理。ごり押しで聞かせられないこともないけど……、ただの確認でそれしてもねぇ。



 あれ、今、ふと思ったけど対策が不十分だったから「嫌」って言われた説。…あるかもなぁ。



「え。じゃあ、確認してないの?」

「うん。でも、今回はヤバいっぽいっての神様から聞いた」

「今回はヤバいって何で?何で前回は平気だったんだ?」

「前回は神々への信仰がまだ残っていた1400年代だったし、境界が緩んで入口が繋がったのも日本付近だったから…」

「神々の数の暴力でごり押したらしいです」


 この辺りはビバ多神教。そして、神様の別の面! ということでインド神話の神様にも出張ってもらえたらしいんだよね。…同じ神様なのに分裂しているのはツッコんだら負け。ベースとなる神話が違うから問題ないらしい。



「なる。となると、今回がやばいのは神様が干渉できないから?」

「それもある」


 ここはイギリスだしね。まぁ、ケルトの神々はおられるけれど……信仰の関係上、ご助力を得にくいし、ご助力を得やすい方は一(はしら)いらっしゃるけど……。そのお方は動けない。顕現しちゃうとちょっといろんな面で影響がでかすぎる。



「それ()?」

「うん。それ()ある。前回から今回の間で地球上の人間の数は一気に増えた」

「そのせいで転生するときに捨てなきゃいけない強い感情……恨みとかを抱いて死んだ人も一気に増えました」

「そして、家畜の数も栽培されている植物の数も増えた」

「その代償に自然は破壊されてきました。捨てられたゴミの多様性が崩れて、ある一定の方向性を持つようになったんです」


 ゴミが増えた&そのゴミが方向性を持った。ということは、その方向性に向けて超強化されるわけで。



「その方向性って?」

「ふざけんな人間。死ねカス」


 げんなりした顔をするガロウ。うん。そうなんだよね。今回の件はファンタジーとかにあるあるの「人間が神を忘れて繁栄しすぎたことの代償」みたいなもんだ。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字その他もろもろ、もし何かありましたらお知らせいただけますと喜びます。

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