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105話 誰がここまでしろと

 まだ大丈夫と思ってたら投稿予定日は昨日でした。ごめんなさい。一日遅れです…!

 理科室をそっと覗き込む。お。割と大丈夫そう……?



「そらそうだろう……。私をなんだと思っている?」

「え?(かおる)先輩ですが」

「苦虫を嚙み潰したような顔をすんなら、顧みろ。姉」

「やらかしてから、顧みてはいるんだがな……」


 それでも割と突貫してること多いじゃないですか。やだー。じゃないと賢人(けんと)先輩に止められないでしょうに。あの劇でも割と演技かもですけど暴走してましたし。



「こほん。それはそれとして。この部屋が大丈夫な理由は今、言ったじゃないか」

「え?……あぁ、劇ですか」

「わかってるじゃないか。そうとも。劇があったからな。今は習氏と四季嬢のおかげでもう演じなくてよくなったが……、今日になるまではずっと演じる予定だったんだぞ?私がいないところで酷いことになる可能性のあるものは置けんよ」


 確かに。理由がすんごいまともで安心しました。



「だから、私を一体何だと「薫さん」」


 あぁ、閉口されてしまった。でも、仕方ないじゃないですか。そういう認識なんですから。で、置いてるものは……ん? んんーー?



「割と論外寄りの物質では?」

「ですよね」

「やっぱ、そうだよな?」

「そうか?」


 やっぱ薫さんじゃないですかー! やーだー! 小鳥も賢人先輩も同意してくれてるのに、薫さんだけ駄目って……えぇ……。



「常温超電導じゃあるまいし、いいだろ」

「何言ってんだこの人」


 何で警備も何もない理科室に新種の超電導物質置いてんですか。しかも記録更新! って書いてるし。いやまぁ、確かに常温超電導でもなければ、電線に使ってエネルギー送達ロスをゼロに! なんてのは出来ませんけど、これを参考にしてもっと性能いいのを! って人が出かねんでしょうに。



「100 K(ケルビン)で超電導現象発現ってこれ、ほぼ20年以上破られてない記録ぶち破ってますね……」

「おい、姉ェ!」

「安心しろ。弟。この姉が何も考えずにこんなのをポンと出したと思っているのか?」


 速攻で頷く賢人先輩。信頼なさ過ぎて草。いや、逆にあるのか…?



「作り方の特許を取る手続きはした。今日、特許公報とかで出てるはずだぞ。……出てないとヤバいから、軽い説明しかしてない」


 小声で後半言ってますけど、誤魔化せてませんから。何やってんすか、マジで。駄目だったら新規性喪失とかほざかれるんでしょ? 確か。



「そうだぞ。後、今、特許出願中の作り方でできた物質がどういう構造になっていて、どうして超電導現象が起きるのかを検証した論文も書いてる。こっちも作り方だけだと新規性怪しいが、原理とかまで触れてるからいけるだろ。知らんけど」


 知ーらんのかいっ!



「いつの間に書いてたんだ…」

「暇な時」

「だろうな。って、そうじゃなくて」

「普通に弟がいない時さ。勇者召喚に巻き込まれたのは間違いなく不運だったが、望月氏達と関係が持てたのは幸いだったな。鶴月グループの企業と連絡とって、そこの研究者さん達と連携できたから」

「あーー。オンラインで喋ってた時か。さすがにやらかさんだろと思って、目を離してた時かぁ」

「イエス」


 じゃあ、知らんけどじゃなくてほぼいけるのでは……?



「まぁ、駄目だった時に怠いしな」

「そういうもんですか。……あれ、というかこの物質、こういうやつですって書いてるのはいいんですけど、作り方ないのはいいんですか?」


 これ、科学部の展示ですよね? たぶん。部活動で作りました! ってんなら実演 or 作り方の説明を置いておくとかしないと駄目な気が。



「無理に決まっとるが」

「無理なんですか」

「当然だろう。作り方は特許の関係で無理。実演はこんなとこで作るには設備が足りない」

「「えぇ……」」


 じゃあどこで作ったんですかね。



「どこでって……、作るに足る装置があるところだが?論文書いたって言ったろ?」

「最初はどうやって……?」

「そりゃコネだよ」

「コネで設備貸してくれるんですか……?」

「そこは調整しだいだな。私は夏休みに研究インターン的な感じで行った」

「何やってんすか」


 普通に夏休み、習先輩達に頼まれてお仕事されてましたよね!? その合間にインターンって、それいいの!?



「認められたからできた」

「そりゃそうですよね」

「カイ。小鳥。間違いなく、姉は天災(天才)側の人間だから、あんま気にしない方がいい」

「目の前にいるのにこんなの言うのあれですけど、明らか外れ値ですもんねー」


 真似しようとは思いませんね。そも、あんま人のこと言えないかもですが、ちょくちょく頭のねじが外れてる行動されてるので…。



「ちゃんと研究計画書とかも出したぞ」


 なんでんなの書けるんですか。…あぁ、薫さんだもんなぁ。



「でも、科学部の展示としてそれっていいのですか?」

「ん?小鳥嬢。何を言ってるんだ?」

「「え?」」


 あれ? 何で通じてないんだろ?



「おい、姉。やっぱ駄目じゃねぇか。俺、言ったよなぁ!?この部屋に置いたら絶対、科学部の展示だって思われるって!」

「学園からの許可はもらったぞ?」

「そら出すだろうよ!「我が校の生徒が活躍!」みたいな宣伝打つために、どっかに置いといてくれって頼まれたんだから!」


 もしかしなくても “科学部とは無関係”。



「だぞ」

「「えぇ……」」

「む。それで姉だけが批判されるのは納得いかないぞ。大宮(おおみや)氏もそこに建築の図面を置いているじゃないか」


 大宮氏……あぁ、大宮恵弘(えこう)先輩ね。確か親が大工さんだったはず。教室の魔改造にも一枚噛んでるんだったね。



「魔法が主に建築に向いたやつですしね」


 そんな人が建築図面を置いてると。なぁぜなぁぜ。確かに科学じゃ……いや、科学では。おもくそ免震構造を最適化した云々言ってますが。でもでも、科学部としてはおかしいよね!



「それに有宮(ありみや)嬢は植物のレポートを、豊穣寺(ほうじょうじ)嬢は……彩のプロトタイプを置いてるぞ」


 お前らもか。えーと……? 有宮先輩はなんかよくわかんないけど、めったに花を咲かせない植物が花を咲かせる理由を特定したって? 多分、すごいんだろうなぁ。(小並感)



 豊穣寺先輩は別に見なくてもいいね。(あや)を知ってるし。てか、プロトタイプて。……豊穣寺先輩の人格ぶち込んでんだから、プロトタイプもくそもない気がするんだけどなぁ。



「雑多に色々ぶち込みすぎでは?」

「”科学”が包含する意味が多いのが悪いな。小鳥嬢。科学は英語で言えばScienceだが、Scienceは理科とも訳される。その時点で極論、理科っぽいものは全てScienceだよ」


 哀れ科学部は領域を占拠されて爆発四散!……にはなってないね。人いないと思ってたけど、普通にいたわ。こっちの最精鋭やらかし集め場とは全力で無関係を主張するためにカーテンで仕切ってるけど、向こうから楽しそうな声と爆音(比喩じゃない)がなってるもん。



「だな。実に楽しそうだ」

「監督者たる先生が横でぼーっと見てるはずとはいえ、「爆ぜよ粉塵!」だの「出でよ濃硫酸!」だの「爆ぜよ粉塵!」だの言ってるもんな」

「「何で同じのが二つも!?」」

「ちゃんと違うぞ。見てくると良い。私は出禁くらってるからな」


 えぇ……。なら、あんまり行きたくないかな。あのノリの中に突っ込んで生きれる気がしない。



「そうか。まぁ、やってるのは簡単だ。うまいこと合成させて作る叩くとちょっとだけ爆発する粉を爆発させてるのが一つ。もう一つが強脱水作用を持つ濃硫酸を何かにぶっかけて炭化させてるのが一つ。最後が適量の小麦粉に息吹き込んで火をつけて粉塵爆発させてるのが一つだ。やろうと思えば気合で材料確保すればだれでも実験出来るだろうよ。だが、やるならちゃんと安全確保してやるように。調べて興味を持って、雑にやって事故っても私は知らん」


 いわゆる専門家の監修のもとでやっています。ってやつですね!



「あぁ。安全確保は何よりも優先されてしかるべきだからな」

「姉?」

「……」


 安全確保しなかったお前が言うの!? って目で賢人先輩が薫先輩をガン見してる。薫先輩もツイって目を逸らすんじゃなくて、だから今はやってないだろ? とか言えばいいのに。出来ないってことはなんかやらかしてるって言ってるようなものでは。



「眼鏡してるから安全眼鏡してないくらいだぞ……」

「普通に隙間から入ってくるときは入ってくるが?」

「くそ暑いからあれ、嫌いなのだよ」


 あれって言われてもどれ……あ、ありがと。小鳥。わざわざ調べてくれたのね。あー、眼鏡ごと目を守るために結構な広範囲を覆っちゃうのね。そりゃ、暑いわ。



 普通の眼鏡も隙間あるやつもあれば、眼鏡してる人の眼鏡……ゴーグルかな? より範囲が狭いとはいえ覆うやつもあると。まぁ、慣れないと暑そうね。



「よし、そろそろ次に行こうと思うけど、どう?」

「ですね。行きましょ。こっち側は習(にい)の関係者のやつばかりで既に知ってますし、あっち側はなんかアレですし」

「ね」


 興味がないわけではない。けど、なんかカオスそうだし、やらかされても困るし。最悪、薫先輩と賢人先輩に再現を頼むなり、習先輩達に放映してもらうなりすればいい。次に行こ。隣はー、怨敵、音楽部かぁ。



「怨敵て」

「僕ら特進コース的な立場からしたら怨敵でしょ。いやまぁ、運動部も大概だけどさ」


 特進コース(爆)なせいで、普通のコースに比べて授業終わるのが遅いし、終わってもテストとかがある時はある。そんなときに部活で変わり映えのない音垂れ流しやがって……! 音楽部め。



 音出すのむずいのわかるけど、「ぷぁーーーーー」の一音だけ永久に垂れ流さないで。気が散る。邪魔。うざい。



「それはそうですね。まぁ、学校の構造が悪いです」

「ね。まぁ、音楽部が音楽室でやるわけないけど」


 少なくともうちの音楽室は大規模な演奏をして、それを見る部屋としては設計されてないしね。ちょっと舞台? 的な場所は広そうだけど観客に40人も入ればいい方じゃない? 音楽の授業はないから入ったこともないし知らんけど。



 そんなんじゃ中で満足に練習もしにくいよね。特に最初の方の慣れてないときなんか。



 別の階に行くかぁ。ここは……うわぁ。



「何でゲーム大会が隣接してんだろうね」

「しかも同じ時間に第一大会とか開催するみたいですね。お客さんは一体、どう分散するんでしょう?」

「む!その研究テーマは私らのです!」

「え、あ。はい」

「わかればいいのです!」


 ……え。うん? え。えーと……、誰。喋ってたら唐突に会話にしゅばってきてしゅばっと去ってったね? 誰あれ。最精鋭の人ではないのは確定なんだけど。



「わたしもわかんないですね。さすがうち。たまに狂人が湧いてきますね!」

「若干、狂人認定はかわいそうな気がしないでもないけど…」


 テーマとしては割と興味あるもん。……何に使えるかはわかんないけど。



 誰か知り合いいるかな? んーー、割と人いて探しにくいな。でも、探すためだけに部屋に入るとなぁ。どう考えても小鳥が埋まる。身長そこまでないし。てか、小鳥は興味あるのかな。



「ちゃんとありますよ。わたしも習兄とよくゲームしてましたし。もっとも、こういうゲームでもタイマンよりはコンピューターをチームで殴ってましたねー。長時間」

「長時間?」

「です。お祭り乱闘ゲーなら残機99機でよくやりましたし、レースゲーなら全32コース総当たり。パーティーゲーならMaxの50ターンで」


 どれも平気で1h超えるやつじゃないですかーやーだー。



「よくやったね…」

「まぁ、パーティは兎も角、前者は1,2 hもあれば終わりますし。パーティも兄妹なので、最悪、「また明日」でなんとかなりますし。だって、夜は絶対に顔合わしますもん」

「そか。僕では出来ないやり方だ…」


 やるにしてもすぐ終わるやつだったなー。残機3機のバトロワとか、レースなら4コース。パーティなら10ターン。……てか、チームでやるなら1VS3のゲーム一生埋まらないのでは。



「ですね。なので、やりたくなったら1VS3を取りに行ってましたね。踏むマス考えれば割と効率的に行けます」


 小学生くらいだよね? よー考えてやったね……。



「です。まぁ、習兄いますし。んー、声的には割と最精鋭の人いるっぽいですね?」

「いる?てか、よく声でわかるね……」

「それなりに会う機会ありましたし。座馬井(ざまい)兄妹に青釧(おうせん)さん。後は……帰還魔法捜索隊だった男子面子ですかね?いっつも寝ている朝昼夜(あさひよ)

「待って。矛盾するの止めて」


 声って言ってたのに寝てるって何!?



「寝息ですね」

「え。何でここにいるの!?てか、寝ながらいるの!?」

「いつものことじゃないですかー。やーだー」


 そうだった。朝昼夜先輩が寝てるのはいつものことだったわ。



「双眼鏡もちの鷹尾(たかび)先輩にー、聴診器持ちの久安(くあん)先輩にー、この二人は視ると聞くの違いはありますが、似たような魔法ですね。ご存じです?」

「うん。知ってる。一応、全員がどんな魔法かは聞いてるよ?名前と一致するかは別として」

「駄目じゃないですか。なら、簡単な説明も継続しますね。毒物完全無効かつそれが何かを知れるマスクを持ってる(あかつき)先輩。サングラスのせいで余計に人相が終わってる鮫将(さまなみ)先輩」


 それ、ただの悪口では。半分くらい事実だけども。



「交渉に使えそうな情報が得られるらしいですが…、活かすの難しそうですし」

「それはそうだけどなんとかならなか……ならないか」

「多分。料理にすんごい便利なフライパン持ちの陽上(ようじょう)先輩に掃除と書いて塵を消し飛ばすと読む箒持ちの赤鉾(せきむ)先輩ですね」


 あんま絡みのない先輩男子sオールスターか。



「あのー」

「「なんです(なに)?」」


 わお、小鳥がタメ……って、友達なのかな? じゃあ、ちょっとだけ下がろか。



「僕は気にしなくていいよ」

「らしいよ。どしたの?」

「ありがとです。えっとね、今、大会の受付をしてるんやけど、前タームの優勝者の赤鉾先輩が、「他に強い人?森野兄妹か、座馬井兄妹じゃね?」と言ってたから、参加してくれん?」

「わたしはいいけど……」

「いいよ?参加しなよ」


 ちらっと目線をくれた小鳥の背中を言葉で押してあげよう。別に急いでいきたいところもないし。



「マジ?助かるわー。なまじ赤鉾先輩がつよーてな。うちらのクラスのうま勢が(うま)勢になってしもうたんや」

「ちょっと何言ってるかわかんないし、部外者のわたしだと変わらない気がするけど?」

「気にしたら負けやで。ほら、行って行って!」


 背中を物理的に押されて人込みをかき分けさせられていく小鳥。さーて、応援しよっと。







 っと、思ったけど、応援、いる? ってくらい圧勝した。多分、座馬井兄妹と同じ回だった時と最後の赤鉾先輩との1 on 1だけ危うかったんだろうけど……、傍から見てると軽くひねりつぶしたようにしか見えなかった。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字その他もろもろ、もし何かございましたらお知らせいただけますと嬉しいです。

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