そして今日も一日が過ぎる
俺の名前は服部 一貴 (はっとり いっき)。小泉高校一年生だ。黒髪中肉中背で学力も運動能力も平均、普通の高校生だと言っていいだろう。顔は上の下である (俺調べ)。
今日も今日とて退屈な学校で退屈な授業を受ける。休み時間は気が休まるかと思えばそうでもない。ぼっちに居場所などないのだ。春に入学してからはや一ヵ月半が経つが依然として友達ができない。あれぇ、どこで間違えたかな。中学の友達はみんなバラバラに違う高校へ行ってしまったけど何もしなくても仲良いやつはできると思っていた。が、一週間もせずにグループが完成しぼっちの完成だ。
一年一組の窓際の一番後ろという最強ポジションでぼーっとして休み時間を過ごす。その時のクラスメイトの
「うわ~。またこいつ一人でいるじゃん」って視線が無自覚に俺の精神をえぐっていく。はげそう。
その暇ともいえる時間、最近は人間観察をするようになった。というか、その気がなくともやることがないから周りを見てしまうのだ。
観察していくなかでクラスのカーストも分かってくるがその中でもトップともいえるのがテンプレ幼馴染グループである (俺命名)。テンプレ幼馴染グループと呼んでいる彼らは幼稚園以前からの付き合いであるという男女各二名で構成されており、全員が美男美女。高身長、文武両道でクールな完璧少年の戸羽 健介 (とば けんすけ)。グループのなかで唯一の茶髪、ちゃらちゃらして机の上で大きな声で騒いでいるのが渡辺 陽司 (わたなべ ようじ)。綺麗な黒髪を腰まで伸ばし、いつもどこかほわほわとしている不思議ちゃん系美少女が相塚 美帆乃 (あいづか みほの)。そしてチャラ男の話を冷めた目で聞いているなボブカット美少女が江ヶ崎 佳奈美 (えがさき かなみ)といったメンツである。
これはひどい。なんというテンプレ感だろうか。初めて見た時に、チャラ男とクールちゃんが先くっついて紆余曲折あった後にクール君と不思議ちゃんがくっつくやつやんとか思っちゃったよ。案の定、戸羽さんと美帆乃さんが
「あー。もう、美帆乃可愛すぎ。誰にも見せたくねえ。」
「え、何?けーくんどうしたの?」
とかすれ違ったときに言ってて、惑星を破壊したい衝動に駆られた。まじでテンプレだった。ほんと爆発しろ。
このグループが目につくのは単に目立つという事ともう一つ理由がある。俺は江ヶ崎 佳奈美さんに恋してしまったのだ。今の所、佳奈美さんは誰とも付き合ってないらしいからまだチャンスはある。あのチャラ男には絶対渡さねえ。そう決意したはいいが彼女と出会ってからこれといって会話してすらいない。もう詰んでる感じがするが頑張るしかない。
あの幼馴染達に甘酸っぱい野いちごのような恋はさせん。俺は佳奈美さんと電撃的な恋をするべく立ち上がるのだ!!!
よし。とりあえずトイレに行くか。