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歪む

俺の家の近くは何故か無駄に広い自然公園がある。

まあ俺自体木とか草とか好きだから全然構わない。

その自然公園の中を通れば大幅なショートカットになるので公園内をのんびり歩いていたわけだが…


「おっ、()だ」

蛾を見つけた。しかしただの蛾じゃない。

蛾の形をした陰妖である。

恐らく全長は二、三メートル位。

蛾の陰妖は鱗粉を振り撒き、その鱗粉を吸った人は魔が刺すといったものだが、個々の被害は小さいレベルのものだ。

だが、結構多くの人に影響を及ぼすので放っておくと結構大きめの被害が出る。

なので見つけたら早急に倒す必要がある。


一回息を吐いてから腕を構える。

そして式句を唱える。


「サンコウセイチョウブデンシンコ、コンセンギガンシキデンシンチョウより継がれしは、フフシュウキツフフシュウライ、トクセンカコウかな!」


全ての式句を言い終えると手に重みが伝わる。

陰妖を祓う時の愛刀だ。

刀を鞘から抜き、狙いを定めると同時に右手を下ろして斬り上げの姿勢をとる。

蛾は未だ飛び続けている。それを確認して一気に力を溜める。

(ちな)みに陰祓師は陽氣を練ることで身体能力を強化することができる。

強化中なら多分十メートル位から落ちても軽く足を痛める位で済むと思う。

「せーのっ」

一気に溜めていた力を開放して跳ぶ。


蛾はようやくこちらに気付いたらしい。体をこちらに向け、臨戦態勢をとる。

しかし、遅い。

右下から斬り上げた刀は蛾を斜めに切り裂いてゆく。

完全に斬り裂くと同時に俺は蛾の横を勢いそのままに通っていく。

蛾はそのまま落ちて行き、俺も落下を開始する。

「あ、やべ」

着地の事を考えずに跳んだおかげで今いるところ(空中)は結構な高さがある。

多分十二メートル近くある。

ハハハ、やっちまったゼ。

刀は鞘に仕舞っておく。

取り敢えず後頭部は守っとこう。

そして俺はヒュ~ッと音がしそうな勢いで落下していく。


ズシン、と体に衝撃が走る。

足が物凄くジンジンするが折れてはなさそうだ。良かった良かった。

「~~~~っっ!」

十二メートル位の高さだったので結構落下時間は短かった。

「っととと…」

空中での浮遊感の慣れと落ちた衝撃での足の痺れが相まってふらふらする。

「ぃでっ」

そのまま思わず尻餅を()いてしまった。


さて、活動を記録しなければ。

起き上がって落下した蛾の方へ行く。

陰祓師には陰妖を倒した場合、活動記録書というものを提出する事が義務付けられている。

ここだけ何故かローテクだ。謎である。

パシャッ

証拠も必要になるので写真を撮っておく。

「ほい、完了」

写真は撮ったし記録書は家で書けばいいのでまあ帰る事にする。


元々帰る途中の近道だったので家にはすぐに着いた。

「ただいま~」

と言っても返事は無い。

なぜならそれは俺は父親との二人暮らしで、いま父は仕事の最中だからだ。

何故二人暮らしかと言うと、まあ答えは簡単。

両親が離婚しているからである。

離婚しているとは言っても、お母さんとは予定を組んでもらえれば全然会えるので寂しかったりだとかは全く無い。


(ねみ)……」

学校でちゃんと寝た(はず)なんだけどな…。

今日は入学式だったので課題は無い。

まあ明日も始業式なのできっと無いだろう。


面倒臭いが記録書を書くことにする。

記録書はどこに提出するかと言うと陰祓師連盟とかいうなんか胡散臭(うさんくさ)い名前の本部に提出する。

提出はポストに自分で投函する以外は無い。本当に一部だけローテクだ。

ただ、提出された記録書は再現スキャンとかいうやつでスキャンして陽氣が一致するかという謎にハイテクな方法で確認されるので誤魔化しは効かない。

討伐が確認されたら軽い報酬が振り込まれる。

が、弱い陰妖は本当に軽い金額なので陰祓師一本で食べている人は滅多にいない。


軽く当時の状況は書いたのでお昼にする。

お父さんが作り置きしておいてくれた味噌汁、肉じゃががある筈なので冷蔵庫を見に行く。

午後一時。

ふと見た時計はその時間を指していた。

あった。

肉じゃがは容器のままでいいだろう。

そして電子レンジに入れて温める。

味噌汁は弱火で温めてからお椀によそる。

肉じゃがの温めはその間に終わっているので取り出す。

そしたらご飯を盛りつけ電子レンジに入れる。

肉じゃが、味噌汁を持って机に並べる。箸も持っていく。

少し待つとご飯の温めも終わるので、取り出して机へ。

それでは、

「いただきます」

しっかりと食前、食後の挨拶と合掌はする。

美味しい。

「ふう、ご馳走様でした」

しっかり食べきる。

食器は水に浸けておいて、記録書の続きを書くこととする。

しかし、本当に眠い。

午後四時。

ふと見た時計はその時間を指していた。

「…は?!」

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