表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の娘と人の皇太子  作者: 丸
4/8

神の娘のお使い1

とてつもなく遅くなり本当に申し訳ありません。

ずっと、違う小説の方ばかり書いてました。

 昼餉を食べ終わると朱理は、布刀玉命の寝殿に向かった。

 なぜなら、鳴鳴が持って来てくれた布刀玉命からの文に『昼餉後に私の寝殿に来るように』と書いていたからだ。

 そして、到着すると朱理は寝殿の戸を三回ノックするとすぐに入室の許可が出たので入室すると、布刀玉命の前の畳に正座して口を開いた。

「お父様、何のご用でしょう。」

 そう尋ねると布刀玉命は苦虫をかみつぶしたような顔をすると重々しく口を開いた。

「朱理、実は頼みたいことがあるのだ。」

 布刀玉命が苦虫をかみつぶしたような顔で頼み事をしてくるということは基本的に仕事の一つだと朱理は学んでいたので朱理は背筋を伸ばし布刀玉命が口を開くのを待った。

「これから、これを忌部邸に行って忌部氏当主に渡して来るのだ。頼んだぞ」

「はい。分かりました。お父様。」

 と朱理が頷くと布刀玉命は文を差し出した。

 それを朱理は、両手で受け取ると布刀玉命に一礼して、人間界の忌部邸の楼閣に降り立った。

 それを見送った布刀玉命は溜息をついた。

 朱理にはまだ言えていないが、刻一刻と別れが近付いていた。

 今日は帰って来る。

 だが、朱理がもう帰って来なくなると今、愛娘で癒されている自分にとって愛娘以外で癒されるものはあるんだろうか?

 妻の汐は確かに愛しているが、朱理ほど癒されるものではない。

 と思いながら、布刀玉命は愛娘を超える、心の癒しを探しに寝所にこもった。



 一方、忌部邸の楼閣に降り立った朱理は、干し柿を食べながら忌部氏当主である青年と雑談していた。

「忌部氏当主様、実は相談があるのですが。」

「どうされました。朱理様。」

 どうやら相談にのって貰えそうだったので、朱理は今日見た夢の内容を全て話した。

 全てを話し終えると、忌部氏当主は重々しく「そうですか。」と言うと溜息をついた。

 それもそのはず、朱理が見た夢は牛の刻に一人の青年が術士に呪いをかけられる場面と、それから三日後に女性になってしまったという、ある意味残酷な夢を見たのだ。

 話は変わるが、何故ただの悪夢を相談するかというと実際に起こっているかもしれないからだ。

 朱理は神と強い霊力を持つ巫女との間に生を受けた半神半人である。

 神と神の血を引く者、人間では陰陽師には共通点がいくつかある。

 一つは、妖等の人以外の生き物が見える。

 そして、妖(人に害する生き物)や悪霊を祓い場を清めることができる。

 二つめは、時折実際に起こっていることを夢に見ることがある。

 つまりは、今日の夢は実際に起こっていたらかなりまずい話なので本当に起こってないかと調査をしなければいけないのだ。

「分かりました。私も調べてみます。」

 そう言われたので朱理は頭を下げて

「よろしくお願いします。」

 ここで朱理の用件が終わったので帰ろうと腰を浮かせたのを忌部氏当主は見逃さなかった。

「朱理様、実は私も折り入ってご相談がございます。」

 その表情は真剣そのものだった。

 朱理は少し怯えながらも相談に乗ることにした。

「な、なんですか?そのご相談とは?」

 忌部氏当主のご相談は人間界の皇太子のことだった。

 人間界の皇太子というのは、朱理の尊敬する天照大御神の血を引く人で、皇太子と帝には後宮というものがあるらしいのだ。

 通常なら、沢山いる美妃にくらりといった帝と皇太子が子供を作る場所・・・らしいのだが、今回は違ったらしく、大問題が起こってしまったのだ。

 それは、皇太子の正妃がいないこと、寵愛している人も一人もいないということらしい。

「皇太子様は確か20歳ですのに、まだお相手がいらっしゃらないのですね。帝は皇太子様お相手を見つける気はないのでしょうか?」

 と尋ねてみると忌部氏当主はため息をついて、爆弾発言を落とした。

「実は帝は神の姫を探しているのです。」

 その言葉を聞いた朱理は思わず真っ青になって言葉に詰まった。

「・・・ナ、ナンデデスカ・・・?」

 と聞いてみると忌部氏当主は

「それは、この国をもっと良い国にするために、皇太子の正妃は神の姫にする。と言っていましたが・・・。ですが、安心して下さい。朱理様、貴女様は必ず私がお守り致しますので。」

 と言われ朱理は、忌部氏当主に御礼を言うと少し考えてから口を開いた。

「・・・忌部氏当主様、そういえば貴方もご存知の筈です。人と神の姫とでは寿命が違うということを。それに、もし私みたいに神の姫を見つけ出せたとしても神がお許しになる訳がないんです。そのことを帝にお伝えすれば考え直してくれるのでは?」

 と言うと、忌部氏当主に

「そう言ってみたのですが、帝は"皇太子が私の後を継いで死んだら、神の姫は神に返す。"とおっしゃっていました。」

 そう言われて朱理は、「そうですか・・・。」と呟くため息をついた。

 すると、いきなり戸が開く音がした。

 朱理は慌てて戸がある方向を見ると、そこには一人の青年が立っている。

 朱理は忌部氏当主に尋ねた。

「どなたですか?」

 と聞くと、忌部氏当主は苦々しい顔で口を開いた。

「すみません。私めには、お教えすることができません。」

 と言われてしまったので朱理は、

「そうですか。」

 と呟くと青年を見た。

 普通の青年なら朱理は、人の楼閣に入る時は一声かけるのが礼儀だと注意していただろう。

 が、運が良いのか悪いのかその青年は女ならば必ず一度は見とれるほどの美しい青年だった。

 神々は基本、美しい方々なので美しい青年には見慣れている筈だったが、朱理が思わず見とれてしまったのは青年が神ではなく人だったからかもしれない 

 ━━━━━━━━━━━紫紺に染まる髪に白い面、形の良い切れ長の眼は、青色で豊かな髪は後ろで一つに結ばれていた。

 すらりとした体躯に月草の花の染めの袍を纏った青年は身分が上の人間なのだろうと朱理は思った。

「忌部殿、失礼致します。・・・そちらの方は?」

 と青年に聞かれた忌部氏当主は朱理をごまかそうとしたらしく、

「何のことでしょうか?」

 と意味の分からないことを口にした。

 それを見た朱理は溜息をついた。

(いくらなんでもそれはないですよ。)

 当然、青年も納得が行かない様子で、こちらを鋭く睨んで来た。

 その視線に忌部氏当主は"ヴッ"となったらしく朱理にすがる視線を送って来た。

(えっ、わ、私ですか?)

 一人パニックを起こしながらも朱理は青年の前まで移動すると口を開いた。

「初めてまして、私は朱理と申します。」

 朱理はぎこちなく微笑むと青年は、

「ああ。初めまして。朱理姫。」

 と返されたので忌部氏当主に手で丸を作って見せると忌部氏当主は口を開いた。

「本日は何の用ですか」

 忌部氏当主が尋ねると青年は朱理を見て、

「姫君には似合わない話なので姫君がいない場所で」

 とやたらと朱理を気にして話さないので忌部氏当主が

「大丈夫ですよ。この姫は我が一族の者ですから。それにこの姫は口が堅いので信用出来ますよ。」

 と忌部氏当主が微笑みながらそう告げると青年は首を傾げ、口を開いた。

「実は、牛の刻に術士が寝所に忍び込んで来て、どうやら呪いをかけられたみたいなんです。」

 とあまりにもあっさりと出された"呪い"という言葉に朱理は違和感を覚えた。

 呪いをかけられたら普通は慌てると思うんですが・・・・・・。

 だが、青年はとても落ち着いた様子で、まるで呪いをかけられたことが当たり前のように受け取っているような。

「忌部殿、俺はどうすれば良いですか?」

 と聞かれた忌部氏当主は

「私か朱理様が呪いを解いて差し上げます。私か朱理様、どちらがよろしいですか?」

 と聞くと青年は朱理を見て言った。

「朱理姫、貴女にこの呪いは解けますか?」 

「はい。可能だと思います。」

「本当ですか?」

 と、確認されたので朱理はむきになって言い返した。

「はい。本当です。」

「では、お願いします。」

 と、お願いされたので朱理は青年を奥に案内することにした。

「はい。では、こちらに来て下さい。」

 と言うと青年は「ああ。」と呟くと朱理について楼閣の奥に入っていった。

 


 


次はいつ、投稿できるかは分かりませんが、よろしければ待ってて下さい。

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ