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迷子の村人は方向音痴を駆使して家に帰りたい!  作者: 風来坊ムラサマ
帰り道を求めて
7/50

もう空は飛ばないと思ってた

なんか後半になるにつれて適当になってる感が凄いです。すまそん…。


――「そう言えばこの辺って魔物見ないけどどうなってんだ?」



空守の里に向かってる時もそうだったが、この辺りには魔物の姿が1匹も見当たらない。


俺の住んでた村付近は特別魔物が出現しないらしく見ないのが普通になってたけどやっぱりこの辺りもそうなんだろうか?


空魔は出てきたけど。



「空魔に怯えて皆山に潜んでるらしいですよ」


「同じ魔物じゃないのか?」


「空を飛べない魔物にとって空を自在に飛べる空魔は脅威なんですよ。空魔自体も魔物を見下してるみたいなとこありますし」


「ほぇー、魔物も人間みたいなことやってんだ」――



不意にまだ山を登る前のやり取りを思い出す。


道中魔物が全然出てこないからそれが気になって聞いたやつだ。



「だ〜っ!!多いわ!いくら皆山に篭ってるからって流石に多過ぎるわ!!」



斬っても斬ってもうじゃうじゃと湧き出てくる魔物の相手をしながら悪態をつく。



「ほら、増援が来ましたよ」


「ほら、じゃなくてお前は何してんだよ!記憶なくても一応勇者の仲間だったんだろ!一緒に戦えよ!?」


「えぇ…」



露骨に嫌な顔をされた。


どう言う立場にいたらそんな顔が出来るのか小一時間問い詰めたいところだが今はそれどころではない。


光に触れてからチートな力を手に入れたと言えども肉体自体は普通の人間だ。


体力も無尽蔵ではなく、いずれ尽きる。


疲れのせいで魔物への対処も遅れてきていて絶賛危機的状況に陥っている。


既に鍛え上げた剣術はただの力任せの振りになっていて魔物を一撃で倒せなくなった。


この山に入ってから結構な時間戦い続けているのだから当たり前だ。


飛び掛かって来る魔物に何とか一撃を加え、呼吸を整える。


そんな完全に隙が出来た俺へと背後の魔物が牙を向いた。


反応が遅れ、なんとか振るう剣も恐らくは届かない。


万事休すか、そう思ったのも束の間。


突然、幾何学模様の円形の壁が俺と魔物の間に現れた。



「なっ…!?」


「全く、見てられませんね」



開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。


俺を助けてくれたのはまさかのクンリだった。



「その様子じゃまだ空魔の時に使っていた光を使いこなせてないみたいですね」


「…その通り。何せ使えるようになったのはほんの少し前だからな」


「なるほど、分かりました。戦闘は全てアナタに任せようと思っていたんですが、予定変更です」



クンリが翳した手を動かすと同時に円形の壁?も動き始めた。


徐々に回転していき、やがては高速回転する回転ノコギリのようになってしまう。


俺とクンリを中心に飛び、周囲の魔物達をスパッと両断した円形の壁改め回転ノコギリは目に見える魔物どころか、木々すらも切り倒す。


あれに当たってたらと思うと冷や汗が止まんないね。


割と本気で。



「アナタが光を使いこなせるようになるまでは、私も手を貸してあげましょう」



それ以降は手を貸さないってことか。


その心配は必要ない。理由は俺が光を使いこなせるようになる前に村に帰ってクンリともお別れするからだ。


そもそも光って何なんですかね!明らか悪役みたいな光出してるんですけど!



「こいつは?」


操陣術(そうじんじゅつ)です。生まれた時から使えたんですが使い方が分からないのでこうして適当に振り回したりしているんです」


「ってことは名前も…」


「はい。私が勝手に名付けました」



陣、と言うのは今の幾何学模様の円のことを指しているんだろう。


陣を操る術で操陣術。単純でいいと思う。


それが本当の使い方なら、だが。



「っと、こんなとこで話してたらまた囲まれちまうな!先を急ごうぜ!」


「そうですね」



もう少しすれば山頂だ。登りはキツイが降りはきっと楽なはず。


俺はそう信じて走る速度を上げていく。


そして後に気付くのだ。


降りる方がキツかったりすることに。



「…今更ですけど」


「何だよ、結構体力使うから手短に頼むぜ」


「実は陣の上に乗って移動したり出来るんですよ」


「最初に言えよ!!頑張り損じゃねえか!?」


「えへへ」


「えへへ、じゃねえよ!!可愛くねえんだよ!!」


「ガーン!?」



駄目だ。余計に体力を使った。


もう走る気力もなくなったし丁度ここで陣とやらを利用させてもらおう。



「あーくそ!もう疲れた!陣で移動するぞ!」


「そんな頼み方でいいんですか?乗せませんよ?」


「じゃあいい。1人で地道に行く」


「なっ!?し、仕方ありませんね…ほら、乗ってください」



この手の返しよう。



「あ、言い忘れてましたけど乗る際に陣の縁に手を触れないようにしてくださいね。下手すると手を切りますから」


「先に言ってくれ…」



既に縁に手を触れて切ってしまった。


何故毎度遅れて言うんだろうか。


気を取り直し、もう1度。今度は縁より奥に手を置いて陣に乗り上る。


俺が陣に手を置き、力を入れると同時にまさかの事態が!



「よいしょ」



爆発した。嘘でも過剰な表現でもなく。


文字通り、爆発した。


俺が触れて、しかも赤色の陣が光を宿した途端だ。



「何でこうなるんだよーーー!!」


「最っっ悪です」



2人して遥か上空まで飛ばされていく。


このまま山越えなるか!?


そう思っていた俺とクンリは突然飛来してきたデカイ生き物に弾き飛ばされ、地面目掛け落下した。


これは死ねる。と言うか死んだね。


人生、今までありがとう。



「最後にスエナの顔が見たかったよーー!!」



地面はもう、目と鼻の先だ。

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