どんな力でも使える力
お待たせ!しました!2分割!!
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と言うことでこれから本格的にレイが力を身に付けていきます!!ぜひその成長を見守ってあげてください!!
◇
「だが……やはり、貴様には彼奴をどうにか出来る力が備わっているようだな」
「やはり…?」
グレイスが俺から離れ、意味深な事を言うので思わず聞き返す。
どうにか出来る力と言うのが曖昧過ぎてピンと来ないが、まだ俺には隠された力があるのだろうか。
「エレキと対等に渡り合えるかもしれぬ力だ。恐らく、奴はその力の末端に触れ、貴様に利用価値を見出したのだろうな」
「まだ理解が追い付いてないんだが…そもそもアンタ、敵じゃなかったのか」
「話せば長くなるが…掻い摘んで言ってしまえば貴様の真の力を引き出す為だ」
そう言えば神黎山でも俺の複数の力を一つのモノにするとグレイスが言っていたのを思い出す。
あれはあながち嘘では無かったと言う事か。
「俺の真の力って何だ?換装…は七英雄が居たからこそ出来たし、勇気…とか?」
「それは勇者としての力だ。我が言っているのは貴様自身の力の事だ」
光は黒桜があったからこそ使えた力だし、俺自身の力ではない。
そう考えると、俺には力も何も無かった。
換装も勇気も光も使えない、ただの空の器だった。
なるほど、だからこんなにも無力なのか。
借り物の力が無ければ、何も出来ない。ちっぽけな存在だ。
ようやく把握出来たところで、グレイスは深く溜め息を吐く。
あーあ、もったいない。幸せが逃げていく。
「分からないか?勇者とは言え、ただの人間である筈の貴様が、当たり前のように複数の力を使える、この異常さが」
「……あっ」
「ようやく気付いたか」
「いや、分からん」
「ズコーーーッ!!」
ツッコミに命掛けてんのかな、グレイスって。
盛大にずっこけたグレイスに冷ややかな目を向けつつ、思考を続ける。
複数の力を扱える事に何かヒントがあるのか。頭を傾げて悩むが、何も浮いてこない。
そうこうしている間にグレイスがやや恥ずかしそうに起き上がり、咳払いで場の空気を誤魔化す。
「…もしもだ。もしも、貴様がどんな力でも使える力を持っているとすればどうだ?」
「どんな力でも使える力…ややこしいな」
「真面目に答えよ」
怒られた。
いやだって、ややこしいだろ。どんな力でも使える力。
仕方無いので顎に手を当て考える。
「でも実感が湧かないよな。どんな力でもって言われても今まで使えたのは借り物の力だけだし」
「それだけしか知らなかったと仮定すれば?」
「……なるほど」
言いたい事が分かってきた。
つまり、俺はどんな力でも使える力を持っているけど、今まで換装や勇気、光しか使えなかったのは俺がそれしか知らなかったから。
グレイスはそう言いたいのだろう。
「どんな力でも使える力…試してみるのはアリかもしれない」
「物は試しと言う。本当に貴様にそんな力があるのかは不明であるが、やってみろ」
「やってやるぜ!」
色々迷って、クンリの操陣術を脳内に浮かべた俺はそれを再現しようと目を閉じて集中する。
初めての試しで時間が掛かったが、目を開けば俺の両手に纏わりついた濃い魔力が幾何学模様の魔法陣を構築していた。
所謂、可視化された魔法の待機状態だ。
このまま魔法にする事も出来るが、今回施行するのは操陣術。
俺は不安定な魔力を無理矢理操り、魔法陣を強制稼動させる。
「あ、アイツ…こんな無茶苦茶な事してたのかよ…!」
少しでも気を抜けば魔力が暴発してとんでもない事になるのが目に見えて分かる。
それだけ危険な事をクンリは涼しい顔でやっていたのだから底が見えない。
今更だがもっと簡単なモノを試せば良かったと後悔し始めている。
「―――動いた!!」
魔法陣が本家には劣るものの、ゆっくりと回転を始め、徐々に加速してその回転速度を上げていく。
そして、俺の手を離れて部屋中の物をぶった切ってどこかへ飛んで行ってしまった。
「ひ、ひええ…」
「…何故こんなものを試そうと思った?」
「使えたら強いだろうなって…」
「一歩間違えたら皆死んでおったぞ、今…」
「ああ…そうだろうな……」
俺とグレイスは、暴れ回った魔法陣に滅茶苦茶にされてしまった部屋を見て、ただただ遠い目をするのだった。
◆
「ぎぃやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
留まる事を知らない魔法陣はレイ達の目に付かぬ場所で敵を屠る。
真っ二つに切り裂かれ、何も果たさぬまま命尽きる彼の名は魔王軍八裂衆・支の刃、«バフコフ・バンブレッテル»。
その断末魔は、誰に届く事もなく虚空へと消え去るのだ。
7本のきゅうりがここにある。
2本のだいこんがここにある。
残りの1本は何でしょうか。




