真の力が垣間見えた気がしました
お待たせしましたー!!感想アリーヴェデルチ…しちゃダメだ!!
改めてご感想ありがとうございます!!
今回から再びレイ視点となりますのでどうか俺TUEEEE展開まで生暖かい目で見守ってください!!
◇
「むかっ腹が立つぅーーーーーっ!!」
ありえないくらい広いベッドの中央で大の字になっている白いワンピースに身を包んだ女。
はい、俺です。聖月レイでございます。
「クソ…こんな筈じゃなかったんだけどな…」
ゴロリと寝返りをうって目を瞑る。
瞼の裏に映るのはこのオリジンズエデンとか言う洒落た場所へ連れて来られた時の光景だ。
―――『離せよ!この、変態全裸野郎!!』
暴れに暴れてようやく解放された俺は、既にオリジンズエデンの中央に聳える巨大な城の中に連れられていた。
『人聞きの悪い奴だなぁ。俺は今生まれたばかりなんだぜ?裸なのは当たり前の事じゃないか??』
大袈裟に両手を広げた上で癖なのかそう言うキャラ付けなのか、髪を搔き上げるエレキを精一杯睨み付ける。
『生まれたぁ?七英雄の皆を食って変身しただけじゃねーか!つーか皆を返せよ』
『やっぱり人聞きが悪いなぁー。じゃあ生まれ変わったって事でどうだ?美味しい餌を食ってさ』
その言葉を聞いた瞬間、俺はエレキの胸ぐらに掴みかかった。
今や170あった俺の身長は縮んでいて、必然的に背の高いエレキに背伸びして掴みかかる事になってしまう。
『美味しい餌だと!?テメェ、命をなんだと思ってやがる!!』
『命なんて須らく餌だよ。そもそも七英雄は既に死んでるんだしいいだろ、別に』
『既に、死んでる…?』
『なんだ、知らなかったのかよ?アイツらは俺が異世界から殺して手に入れた駒だったんだよ。しかもアイツらの記憶には俺が殺されたって事が分かんねぇように改竄まで施してな!いやー、それを知らずに俺に従うアイツらときたら、思い出しただけでも笑えるぜ!ハハハハハッ!!』
『どこまで堕ちる気だよ、テメェは…!』
クレジアやライリアル、ルナ、クンリの事情は少し違うが、その他の七英雄は皆、エレキを絶望の底から救い上げてくれた恩人だと思っている。
その想いを踏み躙るような真似をしたエレキだけは許せない。
『おーおー、怖い怖い。そんなに睨むなよな!どんな態度を取ったって俺の前じゃ無意味ってこと、忘れんなよ!』
『そんなの、やってみなきゃ分かんねえだろ!!』
『ほう?じゃあやってみろよ』
胸ぐらを掴んだまま退治し合う俺とエレキ。
そして、そのまま俺は手を離し、力無く項垂れた。
(駄目だ…勝てる気がしねぇ…)
どんな行動を選択しても、軽くあしらわれる光景が目に浮かぶ。
それ程までに、今の俺の身体の無力感は凄まじかった。
『負けを確信したか?お利口さんだ。ご褒美をやるよ』
『―――――へ?』
気付いた時には俺はエレキと口付けを交わしていた。
頭がボーッとして理解するのに少し時間が掛かり、エレキが顔を離した時にようやく鮮明になった頭が現状を把握した。
『ななな、何してんだテメェ!?』
『赤くなってる!ハハッ!やっぱ可愛いじゃんお前!』
『このっ…!!』
拳を振りかぶり。
『変態全裸野郎が!!』
エレキの頬を殴り抜く。
『ぶほっ!?』
『……あれ?効いた…?』
意外にも、その拳は初めて生まれ変わったエレキにダメージを負わせる事に成功した。
俺もせめてもの仕返しにと効かないのは承知の上での攻撃だったんだが、まさか1発お見舞い出来るとは。
調子に乗った俺はその勢いでビシビシとエレキに高速パンチを放ってみるが、また効かなくなっていたのでガクリと頭を垂れる。
当のエレキは無言のまま、猫みたいに俺を掴むとそのまま移動を始め、城の一角にある豪華な部屋に投げ込んだ。
『…ますます気に入ったぜ。今日の戯れはここまでにしておいてやるよ。ゆっくり休むといい』
それだけ告げるとエレキは指を鳴らし、俺の衣服を全て魔法のように消すと、踵を返して部屋を出て行った。
変態全裸野郎は伝染するとでも言うのか。
残された俺は取り敢えず部屋を出れないか試したが無理だったので、唯一クローゼットに入っていた女性用の黒い下着と白のワンピースに着替え、馬鹿でかいベッドにダイプした。
…女性用の下着って面倒臭いな。早く男に戻りたいな。
「―――そして今に至る」
「…何を言っておるのだ」
「うほー!!?ビックリすんじゃねえか!!部屋入るならノックくらいしろよ!!」
「すまん。貴様は気にしない奴だと思っていた」
「ひでーなおまえ」
来訪者は、テンペストドラゴンことグレイスその人だった。
グレイスは勝手に椅子に座ると、足を組んで俺をジッと見ると。
「ふっ」
「なんで笑った!?」
「いや何。お似合いだなと思ったまでよ」
「はい殺す!!」
ベッドから飛び降りてグレイスに迫った俺は割と本気で拳を振りかぶった。
武器が無いからもう殴るしかないのだ。
「はぁ…全く」
グレイスはそんな俺を見て溜め息を吐くと、重たい腰を上げた。
そして、気付くと俺はグレイスに壁に押し付けられていた。
何も分からなかった。
グレイスが動いた事にも気付けなかったし、グレイスが動いてから何をされたのかすら分からなかった。
ただ理解出来たのは、目に見えない速さで壁に押し付けられたと言う結果のみ。
動揺のあまり目を泳がせていると、その目を覗き込むようにしてグレイスは口を開く。
「力が無いクセにそれを行使しようとするな。あの状況、エレキの気分次第で貴様は消されていたかもしれんのだぞ」
そう、無力を突き付けられて俺は、ただただその結末に身震いするしかなかった。
ナマケモノ。
別の単語が浮かんだと思えばこれだよ。引退しよ。




