side:スエナ「しばしの別れ」
お待たせしました!相変わらず―――の繋がらない迷子の村人、修行篇ラストです!
これからどうなるんでしょうかね!あんまり考えてないですけどどうにかなるでしょう!!
と言うわけでどうぞ!お召し上がりください!!
あ、コメントもありがとうございます〜!
◇
「神の食卓に、土足で踏み入れるなんて笑止千万。死刑に値すると思うんだが?どう思う!?グレイス!」
「はっ…全く以てその通りかと」
「ハハッ!だよなぁ?じゃあ、殺すか」
刹那、何かが地面に衝突し、遅れて轟音が聞こえたかと思えばそこには巨大なクレーターが出来ていた。
その中央に仰向けで倒れているのは、レイだった。
「レイ!!!!」
「―――おっと、動くな小娘よ。今貴様に動かれては少々面倒だ」
速過ぎて何も見えなかったが、魔王の核から生まれた青年にやられたであろうレイへ駆け寄ろうとするも、傍に突然現れたグレイスに剣を突き付けられて足を止めてしまう。
「退いてよ……今はアナタの相手をしていられないよ…!」
「退かぬ。このまま貴様には彼奴の行く末を見届けてもらわねばならんのでな」
「二度は言わないよ」
空間を叩き割り、そこから異界の剣«焔舞»を抜き取る。
次に瞬きした瞬間には焔舞でグレイスへと攻撃を図る。
だが、グレイスは尋常ならざる反応速度と怪力で焔舞の剣撃を弾いてみせた。
「我も二度は言わん。退かぬ!」
言った。
「早く…!早く行かないとレイが」
急いて私は前へ、前へ進む。
グレイスは私の放つ剣撃全てを防いでいるが、それでも私の歩みを止められないで徐々に後退を強いられる。
しかし、その歩みはいきなり辺り一帯を激しく揺らす地震によってまたもや止められてしまった。
「な、何!?この揺れは!?」
「むぅ…!これはやり過ぎであろう…!?」
これにはグレイスも予想外であったのか、私と同じ様に体幹を崩されバランスを保てずにいた。
「このままでは危ういな」
「危ない…?」
呆けていると、突然グレイスに担がれてそのまま連れ去られる。
目まぐるしく変わる景色の中で、空で大きな翼を持った青年とレイが何かしら話をしている姿を見る。
手を伸ばすが、距離は遠くなるばかり。
「離して!レイのところへ戻らなきゃ!!」
「言っている場合か!戻ってみろ、地形崩壊に巻き込まれてしまうぞ!!」
「え?」
そう言われて、初めて気付いた。
今まで居た場所が見る間に崩れていく光景に。
この地震だと思っていた揺れが、この崩壊の予兆だったのだと。
でも敵な筈なのに、どうしてグレイスは私を助けてくれるんだろう。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
「きゃ!?」
急に降ろされて受け身も取れずにうつ伏せに落ちる。
なんて優しさのない降ろし方。
「いたた…な、何するの!?」
「助けてやったのだ。それくらい我慢しろ」
「ぐぬぬ…!」
牙を向いて威嚇する犬の如くグレイスを睨んでいるとグレイスは深く溜め息を吐き、座っている私と同じ高さまで屈んだ。
「…スエナと言ったな。貴様、超越者だな?」
「な、なんでそれを…?」
「特徴が一致する。どうせレイが村を出て行ってからそうなったのであろう?」
「そうだけど…」
「ならば忘れるな。それは決して呪いなどではない。その身に流れる初代超越者の遺伝子が貴様をそうさせているだけだ。衝動に打ち負けるな、抗うのだ。超越者の力を己の力にしろ」
先程までと違って妙に棘のなくなった態度に違和感を覚える。
「…もしかして、正気に戻った…?」
「馬鹿を言うな。元より正気だ」
グレイスはやや乱れて垂れてしまっている前髪を掻き上げ、尻目に未だ空に居る青年を一瞥すると改めて私と目を合わせた。
「良いか、聞け。このまま山を降りているリリネシア達と合流し、勇者セスタの元へ行け。場所はリリネシアに伝えてあるから分かる筈だ」
「でもレイは?レイはどうなるの!?」
「彼奴の事は我に任せろ。どうにかしてみせよう。…それと、もうあまり時間が無いから最後に一つだけ言っておく――――魔王エレキは既に魔王の域を超えて神となった。最早、彼奴を倒せるとすればそれは―――――」
『何をやってるんだ、グレイス?もう帰るぞ』
「…!!いえ、少々小娘で遊んでおりました」
『おいおい、俺を差し置いてかよ?案外隅に置けねえなお前も!ハハハッ!!』
念話と言うやつだろうか。
使い方がヘタクソなのか、私の方にまで暫定エレキの声が聴こえてくる。
そうして少し会話した後、グレイスは私にアイコンタクトを取ってきた。
それが話を合わせろと言っているのだと察した私はすぐに食い付いた。
「返して!!レイを返してよ!!お願い!私は、どうなってもいいから…!!」
「ふん、続きはまたの機会に取っておこう。中々楽しかったぞ、小娘…今度は会う時までにもっと力を付けておけ。例えば…大勢仲間を連れて来る、とかな。人間とはつくづく孤独では生きていけぬ生き物よ」
「…!!」
グレイスが最後に言おうとしていた事。
私には伝わった。と言うか、不器用過ぎではないだろうか、この男。
つまるところ、もっと仲間を集めて仲間と共に戦えと。
そう言う事だろう。
「まあ、群れたところで我には敵わんがな」
私が理解出来た事を察すると、グレイスは微笑み、そう言い残すと銀の翼を生やして背を向ける。
それはドラゴン形態の名残だろう。テンペストドラゴンの銀の鱗を彷彿とさせる翼は、夕陽に照らされながらも強く羽ばたき、グレイスの体を空へ運んだ。
その姿を目に焼き付けつつ、踵を返してグレイスに言われた通りに山を降りていると言うリリネシアと合流すべく駆ける。
(信じてるよ、レイ。きっと大丈夫だって…それに、グレイスも任せろって言ってくれたから)
強く、強く無事である事を祈りながら、私はまともに顔も見た事の無いリリネシアと言う人物の顔を想像したり躓いたり転けたりしながら。
「ぃ、いたい……」
若干、折れそうになりながら。
悪い事した時の対処法を紹介します。
まず言い訳として拳を握って下さい。
そして相手の顔色を伺い、自分の顔色の方が強かったら殴っても良いでしょう。
以上です。ありがとうございました。




