起きたら捕まってたので脱獄する事にした
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◇
「赤髪の男と金髪の女は目覚めたか?」
「いいや、まだだ」
「全く…起きてくれないと監獄長の元へ連行出来ないじゃないか」
「そう言うな。今はまだ起きない方が幸せだよ。だって今見張りをしているのは―――――」
声が聞こえてくる。
まだ意識が朦朧としていてハッキリとは聞こえないが、どうやら誰かが目覚めるのを待ってるらしい。
そもそもここは何処なんだろう。確か俺達はホテルから飛び降りて…ああ、地面に衝突したんだった。
取り敢えず起きて現状を把握しなければ。
そう思って仰向けの状態から体を起こそうとした瞬間、突然背中に強い衝撃が走り、再び地に伏した。
「……んぐぁっ…!?な、んだ…!?」
「さぁ〜て?なんだろうねぇ?」
「ん…?」
理解した。
今俺は、誰かに踏みつけられているんだ。テンペストドラゴンを含めればこれで誰かに踏まれるのは2回目になる。
だが、テンペストドラゴンの時とは違い、これには明確に悪意を感じられる。
背中越しでは誰が俺を踏んでいるのか分からない。隣に顔を向ければ、同じ様に倒れ伏しているクンリがいた。
まだ気を失っているみたいだ。
と言うかどうしてお前まで着地失敗してるんだよ、と言いたいが今はそれどころではない。
「アンタ、誰だ?」
「あぁーん?誰でもいいだろうがよ。それにぃ〜、それを聞きたいのは俺の方なんだよなぁ?」
「タダで教えるとでも?ハハハハハッ!!頭沸いてんじゃねえか?」
「くくくくちくくちくちくちっ!!……口の聞き方が分かんねぇならよぉ〜〜!!そう言ってくれよなぁぁぁ!!」
「うぐっ!?」
敢えて挑発した甲斐があった。代わりに横腹に強烈な蹴りをぶち込まれはしたが、牢の中をゴロゴロと転がって壁際まで距離を取る事が出来た。
咄嗟に顔を上げると、今まで俺が寝ていた場所には3メートルはある巨漢が青筋を浮かべてこちらを睨み付けていた。
焦点が時折合わなかったりするその目は、完全に殺意を移している。
戦闘は容易には免れないだろう。
幸い手足は拘束されていなかったから抵抗こそ出来るが、手元に黒桜がない為、まともに戦えるか分からない。
そもそも聞いた限りではここは監獄らしいが、こいつは一体何者なのか。
人である限り斬る事は出来ないし、牢の中に居るから逃げる事も出来ない。
「へ、へへ…やっとその顔が拝めたぜ…!予想通り、頭悪そうだな?」
「こ、ここここの、«セヌゥーラ»様をこここけ、こけけコケにしてくれれながっでぇぇえ〜〜!!死んどけや…ガキきィィい!!」
まるで岩の様な拳を振り被り、巨漢のセヌゥーラは俺目掛けて突撃して来る。
物は試しだ。これを利用して、背後の壁をぶち破ってもらおう。
「ほぅーら!こっちだ!こっちに来な!!」
「うぐぉおお、オ、オゥゥゥゥウラアアアアアッ!!」
監獄全体が振動する程の衝撃が砂塵を巻き上げる。
しかし、その砂塵が晴れた先にはひしゃげた腕を抱えるセヌゥーラと傷一つ無い壁があった。
「お、おいおい…マジかよ…?」
「何の騒ぎですか?」
「おう、起きたか!それがよ……ってなんで外にいんだ!?」
声がした方を向くと檻の向こう側にクンリが居るもんだから俺もうビックリ。
よく見ると牢の鍵がぶった切られた跡があり、恐らく操陣術を使ったんだろう。便利な技だ。
「アナタがあのデカブツを引き寄せている間に―――――」
「ウォオオオオオオオオンッ!!オオオオオオオッヒッ!!オヒッ!!オヒヒヒッ!!オヒョヒョヒョオオオオオオオオオオオオオンッッ!!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」
「ちょっと煩いですねあのダルマ!」
「お、落ち着け!?操陣術なんか使ったら死んじまうって!」
なんて短気な女なんだ。躊躇なく陣を投げようとしやがった。
「むむっ…分かりました。ここはひとまず逃げましょう」
「ああ、アイツは色々とやばい」
絵面も言動も普通ではない。ひしゃげた腕を壁に擦り付けながら何度も何度も頭を壁に叩き付けては訳の分からない奇声を上げている。
牢は既にセヌゥーラの血で大惨事だ。
ああなったキッカケは俺のせいでもあるから死なれては困るけど、あまり近付くのもよろしくないものと思われた為、俺は泣く泣くこの場を離れた。
「つーかここは何処なんだ!?」
「分かりません。ですが監獄である事は間違いないでしょう。それにこの強度…恐らく、普通の監獄ではありません」
「普通の監獄じゃない…?」
「はい。普通の監獄ならここまでの強度は必要ない筈です。極めつきに―――見て下さい」
長い廊下を走る最中、クンリが牢屋を指差す。
釣られる様にして見てみると、過ぎ去る牢の中にはどれもやばい目をして狂った様に暴れ回る囚人ばかりが存在していた。
「これではまるで精神病棟です。しかも看守にあんなゴリラを用意して、まるでここに入ったら二度と日の目は見られないぞとでも言わんばかりの…」
「ちょ、クンリ!前っ!前!!」
「へ?」
「逃がさないドン!」
「ぽよよーん…」
ぽよよーんと言って跳ね返されるクンリを受け止める。
突如現れ、クンリを大きな体で跳ね返したのは何を食べたらそこまで大きくなるのか、世界一丸いであろう男だった。
この監獄の看守はこんなのしかいないのか?
「こ、こんなクッションが欲しいです!」
「何言ってんだお前」
「あぅっ!」
アホな事を言い始めたクンリに取り敢えずチョップ。
真面目な時とふざける時の境目があまりにも不可解過ぎる。
「よくぞセヌゥーラを退けここまで来たドン!だがもうここから先へは行けないドン!なんたって僕、«ドン・ドカオン»が居るからドン!」
「ドンドンドンドン喧しい野郎だ」
「ここは任せて下さい」
黒桜は無いが一丁前に戦おうとした俺をクンリは片手で制止すると、美しい金の髪を靡かせながら前へ出た。
「私が相手です」
「こんな小娘がドン?止めとくドン!僕は強いドン!」
「そうですか―――――«アラウンドセイバー»」
クンリが翳した手から放たれた五つの光の剣がドンを囲い、地面に突き刺さる。
「ドドッ!?う、動けないドン!?」
「«インパルスセイバー»」
そして俺も覚えがある凶悪な魔法剣がドンを遅い、爆発した。
「ドドドドーン…!ま、まさかドンが…負けるなんて……ドン」
魔法の威力を弱めたのか、部位の欠損もなく、真っ黒焦げになっただけで済んだドンは口からプフーッと煙を吐いた後に、ゆっくりと仰向けに倒れて気絶した。
「流石だな、頼りになるぜ」
「これくらい朝飯前ですよ」
ぐぅーっとお腹の音が鳴る。俺のではなくクンリのだ。
「…そう言えば最近、何も食べてないですね」
「…言うな、俺も我慢してるんだ」
ぐぅ〜。
勝ったのに、何故か暗い気持ちになる俺達なのであった。
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