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迷子の村人は方向音痴を駆使して家に帰りたい!  作者: 風来坊ムラサマ
帰る為に猛特訓
16/50

第2の試練・絶海の槍騎士

ごめん、待った?


待ってない?そっかぁ…



ごめんなさい、お待たせ致しました。

続きが描きたいのに愚かな文字達が並ぶところを見たくないと言う矛盾を抱えながら頑張って描きました。これがあと5回、もしくは6回続くだと………( ´゜Д゜)・;’.、ゴハァッ


結局のところ何処まで行っても空とは相容れない俺は叩かれ損ねて飛行が安定しない羽虫の様に飛び、無事に不時着。


公大な湖に頭だけを突っ込んだ。


ここまでの時間、体感だけで言うと1時間はあったと思う。



「―――――――死ねるっ!!普通にっ!!」



流石に力を得たと言えども水中呼吸はオプションに入っていない。危うくこのまま溺死するところだった。


いつの間にか換装も解けてるし髪はビショビショだし最悪だ。


犬みたいに頭を振るって水気を飛ばしているとふと水面に映る自分に目が向かう。



「……あれ?俺の髪、こんなだっけ?」



自慢の黒髪にチラホラと見え隠れする赤色が気になって触れてみるとそれは間違いなく俺の髪。


引っ張ると痛いから間違いない。



「―――それは勇者として着実に力をつけている証拠だよ」


「それにしても広い湖だなー。結構深そうだし落ちたらやばいだろうなー。そう考えると俺結構ギリギリだったなー」


「あれ?聞こえてなかったのかな?おーい?」


「兎にも角にもここが第2の試練が行われる試験会場で間違いないみたいだな」


「無視だよね?それ無視してるよね?何で?私何か悪い事したかな??」


「今度はどんな奴が待ち受けてんだろうな、ワクワクもドキドキもしねえぜ」


「せめてワクワクかドキドキして!お姉さん落ち込んじゃうよ?」


「しかし遅いな…一体何処で油売ってんだか。来たらマシンガン文句言ってやる!」


「もう来てるってば!そろそろこっち向いてよ!」


「仕方ない…」



可哀想になってきたから振り返るとそこには青い髪の美少女が頬を膨らませ佇んでいた。



「あ、やっと見てくれた!」


「知らない人と話すなって母さんに言われたから…」


「それだと友達とか作れなくなっちゃうから程々にね…」


なんかしんみりとした空気になったところでそろそろ本題に入ってもらうとしよう。


全部俺のせいだけど。



「――えっと、話を戻すけど勇者と言うかヴェクトリッヒに生まれた人間には不思議な特性があってね?村人全員が黒髪なのはそこに秘密があるんだ」


「言われてみれば確かに今まで訪れた街の人とかって黒い髪の人全然いなかったな。何でなんだ?」


「簡単に言えば何色にも染まりやすい様に黒…なのかな?」


「何色にも染まりやすい様にって、黒色は逆に染まらないんじゃね?普通は白色だろ、JK」



常識的に考えて。



「何その言葉…って危ないまた脱線しちゃうとこだった!そこは私にも詳しく分かんないの。初代勇者のセスタ様に訊いてもそう言う種族だの一点張りで教えてもらえなかったから…」



脳裏に過ぎる胸を張ってわははと仰け反り笑うセスタの姿。


多分セスタ本人にも分からない謎の現象なんだろうなこれ。


取り敢えず哀れみの目と苦笑をプレゼントしておく。



「ただ分かってる事が1つだけあるの。これまでセスタ様が育てた歴代勇者は皆、成長に伴って髪色が変化して髪が全て染まる頃には絶大な力を手にしてる…流石にセスタ様を超える力を手にした勇者はいないけどね」


「なるほどな。ところでやっぱり歴代勇者は皆違う色なのか?」


「そうだね。青とか黄色とか紫とか、色々いたよ」



でも、と青髪の少女は続ける。



「―――赤は君が初めてかな」


「マジ?それって滅茶苦茶強い?」


「現役だった頃のセスタ様が赤だった様な気がするよ。だったらやっぱり強いのかな?」



曖昧な返答にまたもや苦笑い。


俺が見たセスタは黒髪だったけど染め直したんだろうか。



「自慢の髪色が変わっちゃうのは嫌だろうけどセスタ様の話によると勇者は役目が終わると同時にちゃんと黒色に戻るらしいから安心していいよ」



俺の疑問を聞かずとも答えてもらい大変満足になったところでそろそろ閑話休題としよう。



「ふぅーん、色々勇者について分かってきた様な気がするぜ。つってもまだ分からない事ばかりだけど、それは追い追い知っていくとして…」


「そうだね、そろそろ始めよっか」



第2の試練。ユリウスが指し示してくれたこの湖がその試練の場なのだとすれば、相手はこの青髪の女の子。


彼女は先程とは別人の顔つきで歩みを進め、俺の肩を力強く突き飛ばしてきた。


湖にドボン。言ってる場合じゃねえ。



「私の名前は«アリアナ・マルクバルド»、七英雄が1人。当時の異名は―――絶海の槍騎士である」



その言葉を耳にしたと同時に俺は湖に為す術なく落ちる。


思えば水泳なんざ生まれてこの方経験がないもんでそんな奴が突然深い湖にダイビングとか洒落になっていない。



「って、あれ?息が出来る…?」



溺死コースまっしぐらかと思いきや不思議と呼吸が出来て素直に驚く。


実は前世は魚か何かだったのかな?


そう言えばさっきの溶岩湖でも最初は暑くて熱くてたまらなかった筈なのに気付けば平然としていられた。


もしかすると俺と言うか勇者には1度体験すれば耐性が付くようになっているのかもしれない。


勇者って凄い。



「これなら幾分か戦えそうだ…!」



何となく泳ぎ方も分かってきた。さっき空飛んだ時と大体同じ感覚で動ける。


これは泳ぐと言うより浮遊に近い気がするが。


俺が泳ぎ?浮遊?のコツをマスターしてきたところでアリアナと名乗った女の子も水中に飛び込んで来る。



「もう水中行動を可能としたか。流石は勇者、と言いたいところだが―――未だに私の影を見ている点はまだまだ素人だな」


「っ!?」



背後から声が聞こえ、咄嗟に距離を取る。


―――――速い。水の中だと言うのに目で捉えきれなかった。



「その程度の距離でいいのか?私の得物が槍だと言うのは既に察しているだろうに」



死の気配。


脳内に響き渡る危険を知らせるアラートに耳を塞ぎたくなるが、それよりも真っ先に体を思い切り仰け反ってみせる。


刹那、今の今まで俺の頭があった場所に鋭利的な物体が突き出された。


槍だった。俺とアリアナの間合いはざっと6メートル前後。


その間を、一瞬にして詰めてきたそれは間違いなく俺の命を獲りにきていた。



「っぶねえ…!!」


「なんと、今のを躱すか。流石はユリウスを倒しただけはあるな」


「お褒めに預かり光栄!こいつは一筋縄じゃいかねえな!」


「ここからが本番だ。簡単に終わってくれるな?」


「どっちが!俺も最初から本気で行かせてもらうからな!換装・剣獅子!!」



正直炎のイメージの剣獅子モードが水中で通じるかどうか不安だがやるしかない。


まだこいつで試したのは飛行だけ。もっと凄い力を秘めている筈だ。



「その姿…なるほどな。ユリウスの力か」


「それだけじゃないぞ、これに俺の力も上乗せだ!!」


「ならば見せてみろ、お前の実力を!」


「上等!!」



先手必勝。アリアナに問答無用で斬り掛かる。


黒桜も換装に伴って両刃の大剣になっているが軽さは長剣だった時と大差変わりない。


一撃の下に粉砕しようとするもアリアナは蝶のように舞い蜂のように刺してくる。


鋭い一閃。


体を捻ってそれを躱し、負けじと剣を振るう。



「良い動きだ。しかし、私には届かない」



俺の攻撃は確かにアリアナを真っ二つに斬り裂いた。


しかし、それは幻の類にあったらしい。霧散する様に消えてしまう。



「また幻影か…!」


「フフ…どれが私か分かるかな?」



声のする方を向くとあら不思議。いつの間にかアリアナが複数人に増えて俺を取り囲んでいた。


一瞬ギョッとしたがすぐに頭を切り替えて得物を構える。



(いや、あれは幻影…!真に実体を持つ者は1体だけ―――!!)


「そこだ!!」



誰よりも早く動こうとした幻影(アリアナ)にトップスピードで近付き、勢いを乗せた一撃を加える。



(手応えはあった。これで―――――)


「勝ちだと思ったか?」



勝利を確信したのも束の間。斬ったアリアナは水に溶ける様に消え去り、その隣に佇んでいた本体であるアリアナが不敵に微笑みながら攻撃態勢に入っていた。



「―――《サウザントスピア》!」


「がっ…はぁ……!?」



一突きで俺を襲う無数の刺突攻撃。


ほぼほぼ同時に放たれたその突きを俺は何一つ防ぐ事が出来ずにその身に受けた。


理解が追いつかずにパニックになる。


どうして、なんで、何があったのか、そんな事がグルグルと頭の中を回っている。



「君はまだ知らないようだな、名前を付与した攻撃―――«ワザ»について」



技?技がどうした?そんなもの俺も持っている。


名前?攻撃に名前なんて必要ないだろう。


ほら、こんなにも知っている。今更知らないなんて事はない。



「産まれた赤子に名前を付ければ初めて個人となる様に、力を持つ者が一連の攻撃に名前を与えれば強力なワザとなる」


「な、に…?」


「理解出来ていないと言う顔をしているな?それも当然だろう。ワザが使われていたのは私が、私達がまだ外界にいた時代の話だ。2代目勇者辺りの時代からワザ名を叫ぶのが恥ずかしい等と腑抜けた理由で使わなくなっていったそうだが…」



その話を聞いて昔の事を思い出す。


そう言えば俺も村にいた頃は特訓して編み出した技に名前を付けていた。


しかし技を披露した村の皆には微妙な顔をされた挙句、恥ずかしいだのダサい等散々馬鹿にされた覚えがある。


そのせいだろうか。技に名前を付けるのが異様に恥ずかしく感じる様になったのは。


そして、技に名前を付けていた記憶を今の今まで忘れてしまっていたのは。



「ああ、ちなみにだがユリウスの奴はワザを1つも持っていなくてな。それは恥ずかしかったから等ではなく、ただ純粋にデタラメな力を持ち、馬鹿みたいに強かったせいでワザを使う必要がなかった(・・・・・・・・・)からだ。そんなユリウスを1番に倒せた事を誇りに思う事だな」


「今はアンタが1番厄介だけどな…!」



そんなこんな話しているうちに大分ワザを受けたダメージからも復帰する事が出来た。


ユリウスの力のおかげか治癒能力が今までとは比べ物にならないくらい上がっている。


普通に全身串刺しにされたと思ったんだけどな。


でもここまで回復したなら俺にも出来るかもしれない。



「……使ってみるか、あのワザを…!」


「ほう?持っているか、ワザを!」


「アンタに通用するかどうかは分かんねえけどな!」



黒桜を一度鞘に納め、腰を深く落とす。


柄を握る手に力を込め、そこから剣全体へと力を流し込むイメージを行う。


―――――後は、勇気を振り絞って叫ぶだけ。



「聖月流抜剣術・其ノ壱《龍王爆砕撃(りゅうおうばくさいげき)》!」



少年期―――子供ならではの発想力を生かしたワザ。


このワザを受けた者は地に伏す、らしい。


ガキの俺曰く。


実際には鞘に納めた剣を切り上げる様にして振るうと言った単純な技なんだが、一体どんな結果になるのか。


鋭い一閃。周囲の水が震えるのが肌で感じられる。


瞬間、爆発と共に刀身に纒わり付く様に具現していた赤いオーラの様なものが龍の形を取り、アリアナを喰らわんと猛進を始めた。


そして、まさかのその余波に吹き飛ばされてしまう。油断していたとは言え、とてつもないパワーだ。



「なん…っ!?」



アリアナが何かを言いかけた様に見えたが今では龍が彼女を掻っ攫ってしまい聞き取れなくなってしまった。



「ど、どうだ!これが、俺のワザだ!!」


「み、見事……だっ…!」



またもや背後から声が聞こえ、慌てて振り返るとそこには満身創痍のアリアナが息も絶え絶えになり立っていた。


破れた衣服の隙間から見える肌からは出血が見られ、俺の龍王爆砕撃の威力の高さを物語っていた。


近接でありながら遠距離を熟すワザ。ジャンルに分類すれば遠距離斬撃系、と言ったところか。


意味分からんけど。



「やけにボロボロじゃないか?もしかして今の初級ワザでギブアップってんじゃあないだろうな?」


「ふ、ふふ…まだ上があるとはな…。だが、これまでだ」


「お、白旗か?」


「やはりお前はまだまだ甘い―――」


「へ?」



視界から消えない様にずっと見ていた筈のアリアナの姿が掻き消える。


またもや幻覚――――否。アリアナは今、俺の視界から消える様にして移動したのだ。


俺の真下。


気配を感じたので見てみると不敵に笑ったアリアナが槍を突き上げて俺を見上げていた。



(―――――まずい。逃げないと)



そう思った時には遅かった。


高らかにアリアナが叫ぶ。



「《デッドエンド・スパイラル》!!」



槍の先端にエネルギーが収束したかと思えば、途端に放たれる螺旋を描く水の奔流。


そこからは何が何だか分からなくなる程に強烈な衝撃に襲われ、抵抗するのも馬鹿らしくなる水の奔流に全身を持っていかれた。


意識が朦朧とし、今自分がどんな状況にあるのか必死に思考するも全身を襲う痛みにすぐ掻き消されてしまう。


何故、今、俺は回っているんだ??


何故、今、こんなにも俺は苦しんでいるんだ??


何故、俺は、何故、何故、何故―――――!!


浮いては消えを繰り返す走馬灯の末に視えたのは、このまま溺死してしまう悲惨な未来。


大好きな故郷へ帰る事もままならず、挙句にスエナとも和解出来ていないこの現状。


許せない。



(この水か…?)


「この水が、邪魔なのか…!?」



許せない。こんな事で敗北する不甲斐ない自分が。


許せない。俺の帰路に立ち塞がる障害が。


許せない。いい加減息苦しいこの水全てが。


今こそ解き放て。全身全霊を以て解き放て。


この胸に積もる怒りと言う怒り全てを。


怒りこそが力となるのだ。



(嗚呼…俺はこんなにも……)



こんなにも短気だったのか。



「――――――――――――――――――――――――ァッ!!!!」



声にならない叫びを上げる。


それは、憤怒の遠吠え。


爆発した怒りが俺の内に眠る力を解放する。


剣獅子の赤衣から灯る筈のない炎が灯り、轟々と燃え盛る。


水ですら消せない怒りの炎が俺の周囲で渦を巻き、徐々に範囲を広げて水を侵食していく。



「吹っ飛べぇぇぇぇぇっ!!!!」



刹那、視界を埋め尽くす程の光と湖全域を巻き込んだ大爆発が俺を中心に巻き起こった。


―――気が付くと、俺は巨大なクレーター…恐らく湖だった場所の中央で独り佇んでいた。


少しすると俺の目の高さ辺りまで青い光が降りてきて。



『…もう、加減しないんだから。あんな大ワザするならするって先に言って欲しかったよ!』


「…ハハ、悪かったよ。俺も無我夢中でな。―――その、気になってたんだけどアンタ達のそれは、死んだ…のか?」


『ううん…セスタランドでは誰も死なないんだ。誰も何も失う事がない平和な楽園だからね。負けちゃった私達は君が使命を果たすその時まで、君の心に宿ってまたここに戻ってくる』


「そうか、それを聞いて少し安心した。こんな不甲斐ない俺だけど、良ければ力になってくれ」


『勿論そのつもり!…でも悔しいな、今までセスタ様以外に負けた事なかったのになー。悔しいから、いつかまた手合わせしようね!』


「えー…その日が来ない事を切に願う!」


『あー!酷い!そんな事言うんだ……っと、そろそろ時間かぁ。えっと、次の試練の場所はもう分かってるよね、結構手強いと思うから、全力で頑張ってね―――――』



それだけ俺に伝えるとアリアナの光は俺の胸の中に沈む様にして消えていった。


そして、ユリウスの時と同様に記憶と力が流れ込んでくる。



遠い昔。


私はアトラテスと言う海のど真ん中にひっそりと浮かぶ辺境の島に父、母、兄、妹と共に住んでいた。


周辺の海はとても荒れていて外から人が来ない為、自給自足の生活が基本だった。


と言っても過酷な生活なんて送った事は1度もなかったけれど。


魚は沢山取れるし、農作物はあまり余るくらい育つし飲み水もあったから食生活には一切困らなかった。


中でも私は水中行動が得意でアトラテスでも1番と言っても過言ではなかったからよく海にモリを持って魚の確保を任されたりもしていた。


だからか、槍の扱いにも優れていた。


辺境の島だからと言って魔物がいないわけではない。どう言う仕組みか山からは魔物が降りてくるし、海からも魔物がよくちょっかいをかけに来ていたので、それを撃退する為に私は女でありながらも槍を振るった。


正直、負け知らずで調子に乗っていたと思う。


来る日も来る日も懲りずに姿を見せる魔物達を片っ端からこれでもかと言う程に痛め付け、自分の強さに酔いしれていた。


そしてある日、アトラテスは魔物の軍団によって滅ぼされる事になる。


私が魔物達にした仕打ちが彼らの本拠地に知れ渡り、親玉とも呼べる魔人エレク・トロルの耳に入ってしまい、報復とでも言わんばかりにアトラテスへ魔物の軍団を引き連れて攻め入って来たのだ。


結果、島の皆で力を合わせ太刀打ちするも魔物の数の暴力と魔人エレク・トロルの圧倒的な力の前では歯も立たず、たった1日にしてアトラテスは滅亡を迎え、地図上から完全に消され、忘却の彼方に追いやられてしまった。


目の前で兄と妹を惨殺され、挙句には両親に庇われながら島から逃がされた私は両親の殺される姿を最後に荒れ狂う海に飲まれ、流されて見ず知らずの外国の地へと流れ着いた。


私の慢心と愚行、そして無力さ。


自分の不甲斐なさが招いたこの終焉に正直消えてしまいたいと思う程後悔し、絶望した。


行く宛てもなく、帰る場所さえも失くした私は罪と後悔を背負いながら世界各地を彷徨い、ただただ憎き魔物達を殺す日々を送るうちにいつしか七英雄の1人、絶海の槍騎士と呼ばれるまでに至った。


私はただ、アトラテスで死んでしまった皆への罪滅ぼしがしたかっただけであり、魔物の脅威から皆を守っていた訳ではない。


だけど、結果的に助かった皆からありがとうや助かったと言う言葉を聞くと、不思議と心地良かった。


自分の罪から少しだけ、解放される様な気がして。


さらにある日、魔人エレク・トロル…この時には既に魔王エレク・トロルと名乗る様になっていた魔族を率いる者を打倒しようとする他の七英雄達と出会い、行動を共にする事になった。


目標は打倒魔王軍。私の罪はもう消せないが、後の者達に私の二の舞にはなって欲しくない…そう願ってついに私達は魔王と対峙した。


結果は既にご存知の通り、敗北に終わった。


いや、敗北で終わればまだぬるかった。魔王は外道だ。決してそれだけでは終わらせない。


次に気が付けば私達七英雄は魔王の配下として理由は違えど私達が守ろうとした世界を荒し回る極悪人となっていた。


悔しかった。意識はあるのに体は思う様に動かせずただただ人々の悲鳴や逃げ惑う姿を見ている事しか出来なかった。


何が七英雄か。何が絶海の槍騎士か。何が、罪滅ぼしか。


結局、私は人に迷惑を掛ける事しか出来ないのか。


そう、絶望していた時だった。


1人の若者が私達の前に颯爽と現れて魔王を光の力で消し飛ばしてしまったのは。


彼の名は………勇者、セスタ。


初代勇者であり、最強の守護者。私達七英雄の、真の英雄。


それから私達は平和になった世界に再び邪悪が目覚めない様に監視するべく勇者セスタ様が創った楽園、セスタランドへと身を移し、今に至るのだった。



ユリウスに次いでまたもや過酷な人生を送ってきたアリアナの記憶を見て、気が遠くなりそうだ。


多分、本来のアリアナは明るく元気な女の子なんだろう。


だけどこんな事もあって彼女の人格は分裂と言うか戦闘用の厳格な人格なるものが生まれた、と考えるべきか。


記憶を辿る限りアリアナが戦ってる時の様な性格になっているのはアトラテスが滅んだ後からだ。


しかし、魔王エレク・トロルとはどれ程に強大な存在だったんだろう。


それを瞬殺してるセスタもとんでもないも思うが。


あとエレクって偽勇者のエレキと名前が若干似てるがこれはただのこじつけだろうか?


…うん、そうだろうな、これは流石にこじつけだな。



「…次、行くか!」



ユリウスの時と同様、力が漲るのを感じる。


まるで体の内側から外側に向けて水の奔流が流れるような、そんな溢れる力を。


早速だが、使わせてもらうとしよう。



「換装・槍騎士(アリアナ)!」



何処からともなく湧き出る水が俺の全身を優しく包み込み、やがて弾けて散る。


気が付けば剣獅子の時の赤の衣装とは一変し、青をベースにした衣装に早着替えしていた。


剣獅子の時はマフラーだったが槍騎士では羽衣の様なものを羽織っている。


俺は身体に何の異常もない事を確認すると、水中行動により並行して上達した空中行動術を使い、空高く舞い上がった。


目指すは――――東の方角に見える高く聳える山。


黒雲が纏わりつく様に存在しているしバリバリ落雷してる気もするがそこに迎えと心の中のアリアナが言っている。


少し気が重くなるが、今のこの力強さなら正直負ける気がしない。


俺は少し不敵に笑ってみせると最高速度で山へと飛翔した。

めちゃくちゃ面白いこと言います。


最初はぐー。じゃんけん……ホーン(角)!!

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