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迷子の村人は方向音痴を駆使して家に帰りたい!  作者: 風来坊ムラサマ
帰り道を求めて
10/50

優勝賞金5000万円らしいつえー奴大会に出る

急展開ですよろしくお願いします。


「うえぇ!?イェンが使えない!?」



イェン。


それはこの世界の通貨のことだ。


丁度近くにマレボス名物だと言うオオユキドリの焼き鳥が売っていたから買おうとしたらイェンが使えないと言われて今に至る。



「兄ちゃん、イェンが通貨の時代は終わったぜ?5年も前にな」


「5年!また5年か!!」



どうせ魔王の仕業だろう。


生きてたら殴り込みに行ったんだけどな。生きてないならしょうがないよな、うん、しょうがない!今回は許してやるぜ!



「じゃあ今は何が使われてるんだ?」


(えん)だ」


「イェンと何が違うんだよ!!」



心からの叫び。見本として店主が出した円はよく見れば若干模様が違うだけで1イェン、10イェン、100イェン、1000イェン、10000イェン…と見た目自体はほぼ同じだ。



「ま、そう言うわけでだ。どんな田舎から来たのかは知らねえがイェンはもう使えない!諦めるんだな!」


「くそぅ」



飯にもありつけない現実に目眩すら覚える。


もう完全に野生に生きるしかないのか。


そんな時だ。俺に一筋の光が差したのは。



「そう言えば金で思い出したんだが明日、闘技場を使って優勝賞金5000万円のつえー奴大会があるんだっけか」


「賞金5000万!?」


「おう!毎年恒例の腕に自信のある奴らが集まって力を競い合うトーナメント形式の大会だ。剣提げてるっつーことは戦えんだろ?この際出てみたらどうだ?」



つえー奴大会の名称についてはさておき、勇者賞金5000万円はさっきとは別の意味で目が眩む。


5000万円もあれば村に帰ってもしばらくは遊んでいられる。これは出るしかない。


明日の為、未来の為!



「当然、出るっきゃないだろ!どこに行けば出られる!?」


「あそこに城とは別のでっかい建物が見えるだろ?」


「あれか。サンキュー、焼き鳥のおっちゃん!」



焼き鳥屋のおっちゃんと別れを告げ、闘技場へ走った俺は颯爽と受付でつえー奴大会のエントリーを済ませ、ひもじながらも耐えつつ明日を路地裏で震えて待った。


そして翌日。



「寒くない寒くない寒くない寒くない……ハッ!」



寝てたのか起きてたのかは知らないけどひたすら小声で寒さに耐える呪文を唱え続けていた俺は不意に我に返り、朝日を拝んだ。



「やっと朝か…」



軋む体を起こして黒桜を杖代わりに立ち上がると寝惚け眼を擦り、路地裏を出る。


すると昨日とは一変したお祭りムードの街が視界に飛び込んだ。


賑わう人々、飾り付けられた街。目に映るもの全てが活気を見せつけてくる。



「すっげー…って、今何時だ?」



確か大会出場者の点呼する時刻って11時だって聞いたけど。


これどけ賑わってるってことはそろそろいい時間なんじゃないだろうか。


確認しようにも俺は時計を持っていない為、丁度近くを通り掛かった人に声を掛ける。



「あのー、今何時…?」


「今は…11時3分だよ」



既に始まってたーーー!!



「ありがとう!!」



礼だけ告げて闘技場へ。完全に遅刻だった。


闘技場の受付で名乗り、中へ通してもらって点呼が行われる待機室に駆け足で向かう。


部屋の前まで行くと俺の名前を呼ぶ声が丁度漏れて聞こえてきた。一々ノックもしてられないからそのまま駆け込む。



「聖月レイ――聖月レイ!!」


「はい!!!!」



扉はお亡くなりになられたが点呼にはギリギリ間に合った。他の出場者の視線が一気に俺に集まる。


照れるからやめてくれ。



「……もう少し早く集まるように」


「はい…」



周囲の出場者らしき人達から笑いが巻き起こる。


く〜、馬鹿にしやがって!



「これで全員だな。この大会がトーナメント形式で行われるのは知っているな。誰に当たっても恨みっこなしだ。お互い当たったら正々堂々全力で闘え!勿論、殺しはなしだ。殺した時点でその者は失格となる。一応客に向けてのルール説明でもう1度言うが、しっかり覚えておくように!」



それから間もなくして点呼とルール説明を終えた男の人は待機室を去った。


話によれば出場者は基本この待機室で待機して中央に4つ設置されたモニターなるハイテクな物を通して闘技場の様子を確認するらしい。


5年前にはモニターなんてなかったからこれも多分魔王の呪いの影響だろう。


知らないことが多過ぎて目眩がする。


取り敢えず俺はモニターから離れたベンチに座って一呼吸する。


そしたら2人組であろう影が俺を覆ってしまった。



「ん?」


「また会ったな」



ビキニアーマーの人と同じくビキニアーマーの人となったクンリがドヤ顔でそこにはいた。


幻かと思い、何度も目を擦って見直してみるが目の前の2人は一向に消えない。


ついに諦めた俺は深ーい溜め息を吐いた。



「なんでお前らがここに?」


「私がここに来た目的はそもそもこれだ。優勝賞金5000万円を手にして5年間回避し続けていた教会への慰謝料を払うんだ」


「教会への慰謝料?」


「私は元々教会から遣わされた聖女。訳があったとは言え、聖女を放棄して放浪の旅に出掛けた私を教会の者達は許さないと、そう訴えかけて来ている。流石に行く先々を教会に付き纏わられるのは目障りだからこうしてこのつえー奴大会の噂を聞きつけ5000万円を見事手にして教会に諦めてもらおうとな」



自業自得とは言わないでおこう。



「そっか。クンリはまた何で?」


「ノリで」


「聞いた俺が馬鹿だったよ」



どうせ大した理由はないと思っていたけど想像以上に適当だった。


会話に一段落つく。同時に、モニターやらスピーカーから音が流れ始めた。



『これより!早速だが第1回戦の対戦相手を発表させていただくぅ!!』



どっと歓声が沸く。



『今回の出場人数は16人!どいつも強者揃いだぞーー!!』



だんだん観客席が盛り上がっていく。どんだけ血の気盛んだよ。



『まずはAブロックから!!今回で7回目の出場となる筋骨隆々4本腕男!ブラザーーーーーッ!!ジョニーーーーーッ!!』



モニターに映し出される出場者の名前とエントリーする時に撮られた顔写真。


ブラザージョニーと呼ばれた男の人相は一言で言えば極悪人だ。


ってか今4本腕って言わなかった?


何気なく待機室を見渡せば、それに該当する人物が早々に見つかった。


部屋の隅のちょっとしたスペースで4本の腕を使って腕立て伏せをしている。


もう化け物にしか見えない。



『そして!!今大会が初となるパッとしないザ・村人!!聖月レイーーーーッ!!これは相手が悪いかーーー!?』



誰がパッとしないって!?


モニターに映し出された俺は何故か両手で顔を隠していた。


そう言えば初めてカメラとか言う風景を記録することが出来るらしい物で写真を撮られてその撮った時の光が眩しかったんだっけ。


観客はその顔写真を見て大爆笑。


いいぞいいぞーーっと盛り上がっている。



『両出場者はスタッフの案内の下、ステージへどうぞ!!』



待機室に入ってきた2人のスタッフが俺とブラザージョニーそれぞれに声を掛けてきて、そのまま連れ出された。


もしかして今から?もう俺の番なの?



「トイレ行っていい?」


「駄目だ」


「ですよねー…」



素っ気ないスタッフの後を続いて行けば、やがてステージに繋がるであろう門の前に辿り着く。


ここからでも聞こえる観客のコール。急に緊張してきた。



『さあ!!両者入場ーーーーーッ!!』



取り敢えず、気を引き締めていこう。

次回、つえー奴大会!!

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