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「マーヤ嬢、団長閣下とお食事に行ったって聞いたわ」

「団長閣下と言えば、過去何度も我が国を勝利に導いた戦士!マーヤ嬢の強さも、もう十分ってくらい分かってるし…ある意味、お似合いの二人よねぇ…」

「あら!白銀の騎士様のこと忘れないでよ!」

「意外なところでルヴァス様かもよ?」

「え、ルヴァス様って聖女様のことが…」

「しっ!…それは公然の秘密なんだからね?」

「あっ、ご、ごめんなさい…」




「それでね、団長のご両親も満足していただいたって!」

「そっか、よかったねマーヤ」

「うん!……どうしたの?」

「いや、今町の女の子たちの話題は君なんだなと思うと、なんだか不思議で」

「え、私が…話題…?どうして?」


マーヤは不思議そうに首をかしげた。…鈍すぎるけれど、まぁそれも、彼女のいいところだと思う。


「そう言えば、そろそろ騎士団遠征の時期じゃなかった?」

「あ、誤魔化したわね!……はぁ。そうよ、もうすぐ遠征だから、しばらく帰って来られないわ」


神殿騎士には年に一度、北にある大神殿までの遠征任務が義務付けられている。全部で四つの隊に分かれて、季節が変わるごとに一つの隊ずつ大神殿に向かう。マーヤは秋季の隊に組み込まれていた。


「君の隊には誰がいるんだっけ?」

「ええと、ジーン、アルス、ユーラン、ネファ、ノコンと…」


マーヤが指を折りながら人名を挙げる。…残念ながらほとんど知らなかった。城下まで響いてくる名前は主に白銀の騎士ことマーヤと、とルヴァスと団長の三人のことくらいだ。


「あと、ルヴァスが一緒ね」

「へぇ、彼も秋季隊だったんだ」

「毎年くじ引きで決めてるから、今年は秋季隊ってだけよ。冬季隊じゃなくてよかったと思うわ。冬季隊は遠征が終わった直後にくじ引きだし、もしそこで春季隊になったらまた遠征よ。遠征続きなんて、ちょっと考えたくないわよね」

「今年の部隊長は?去年は確か、君ではなかったでしょう?」

「今年は白銀の騎士(わたし)が部隊長よ。…はぁ、私に務まるかな」

「ルヴァスもいるなら大丈夫じゃないか?彼も優秀なんだろうし」

「…協力してくれるかは微妙よね。何と言っても好敵手なんだから」

「その設定まだ続いてたの…」

「せ、設定じゃないわよっ。事実よ事実!」


…まぁ、どちらでもいいか。

なんにしても、マーヤが帰ってくるまで婚活は中断だ。遠征はおよそ一月。これを長いと見るか短いと見るかは別だけど。


「そう言えば、白銀の騎士としてはどう?今は団長の補佐をしてるんだろう?」

「あー…まぁ、月替わりでね。他にも次期団長候補はいるから。仕事は楽しいんだけど…なんか、団長が変なのよね」

「変?」

「そう。私の性別とか正体って、今の騎士団で知る人はいないのは知ってるでしょう?」


そう、白銀の騎士の正体を知るものは、今の騎士団には一人もいない。白銀の騎士(マーヤ)は前の団長の時に騎士になったからだ。


「あぁ。だから君が騎士になったばかりの頃は大変だったね。他の騎士どころか代替わりした団長の信頼も得られないって。そもそも自分と君の出会いもそこに起因するのだし」

「懐かしいわね…あの頃は毎日泣いて帰って…って、そうじゃなくって。…なんか、団長の白銀の騎士への態度が、なんというか…まるで女性に対する態度みたいな感じというか」

「……それ、ちょっとまずいんじゃない…?」



マーヤは仮にも男爵家の令嬢だ。その彼女が騎士になるにあたり、男爵家夫妻はマーヤにいくつかの条件を設けている。

そのうちの一つが、『騎士団員に女と気付かれないこと』という条件があるのだ。もし気付かれたら即刻家に連れ戻されるという。


「まだ確かじゃないけどね。…でも、もしかしたら気付いてるかもしれない」

「…遠征は、ある意味で好都合かもね。団長と離れられるから、君もそっちの方が落ち着くだろうし」

「問題を先延ばしにしてるだけなのは分かってるんだけど…もし気付かれてるなら、実家帰り…」

「…そうならないことを祈ってる。さてと、じゃあ遠征の準備でもしようか。どうせ君のことだ、まだ何も手についてないんでしょう?」


マーヤが肩を跳ねさせた。…一応君の親友だからね。そのくらいは分かるんだよ?


「それくらいお見通しだよ。ほら、遠征用のカバンを出して。必要なものをリスト化するから、それから詰めるよ」

「はーいっ!じゃあ少し待ってて!」


マーヤが家の奥に向かう。そっちは物置になっていたはずだ。




「…団長ともし結婚するなら、自分は祝福するけど……どうなることやら」


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