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転生したら王になれって言われました  作者: 澪姉
第二章 冒険篇
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47話 探索を中断することになったんだ

「うーん、27階までしか下れなかったねー。また準備整えて、再挑戦だねっ」


 そんな風に努めて明るく言うレムネアに、俺は肩を竦めてみせて、そのままエレベーターホールの方へ歩を進めた。


「結局、階層の解放フラグが解らなかったな……」


「単に虫を退治するだけじゃなくて、どれかが当たり、っていうパターンなんだろうけどねー」


 俺の後に続いてレムネアがそんな風に話しかけてくると同時に、この階層の少し肌寒い気温のせいか、ぶるるっ、なんて身震いしたもんで、そっと肩抱いてやる。


 人形の身体だけど、一応体温は人間並みだからやらないよりゃマシだろ。


「――しかし、財宝は二カ所で発見しましたし、それなりに成果は得たもの、と思いますよ」


 多少寝不足っぽいハダトさんがそんな風に言うのを聞いて、俺は納得してないながら、軽く頷く。


「まあ、最初のダンジョンと比較したらそんなに多くはないんだけど……、10階と20階で見つけた宝物庫の質や量とか考えるに、たぶん階層増えるごとに豪華になってくんだろうな」


「ボクもそう思うー。10階で見つけた白金貨が、20階だと倍くらいあったもんね」


 宝物庫に用事がないのはハダトさん以下、兵隊さんたちだけで、レムネアは動くのに邪魔にならない程度には魔法の物品や白金貨を持ち帰ってるんだよな。


 兵隊さんたちは勝手に持ち帰ったり隠し持ってるの見つかると厳罰が待ってるっつーんで、驚きはしてたけど食指が動いてる様子はなかったんだが。


 ……さすがド新人、って思ったのがインダルトで、ハダトさんや他の隊員たちに、どうにか規則躱して持ち帰る方法がないか尋ねまくりだったのが笑っちまったんだけどな。


「しかしまあ、ちょっと時間掛けすぎたよな。対処法が多くて危険が少なかったのはめっけもんだったが」


「さすがに一週間も虫ばっか食べてたら飽きてきたー。おうちでケーキとか焼肉とか食べたいー」


「オマエはほんっと食い気ばっかだよな……。つか、ちょっと太ったんじゃないのか? 気のせいか顔が丸みを帯びてるような」


「えっ!? うそ、やだっ?!?!」


 慌ててレムネアが顔や腹を触って確かめる様子に、俺たちは全員で爆笑しちまった。


「……あれ? ここでいつもならツッコミが入りそうな」


「――そういえば、人数が足りないような気がしますな? 全員、班人数確認!」


 ハダトさんもそういえば、なんて怪訝顔になって、隊員の人たちにそんな風に号令かけたけど、全員が同じように怪訝そうに首を振るばっかで。


「はて? 最後の水没部屋を出るときに点呼したはずなのですが……?」


 俺は人形だから無関係なんだけど、全員、食事してんだから出すもん出したり、あとは風呂や睡眠なんて生理的欲求に従う必要があるんで。


 それで、初日から班ごとに別れてローテーションでそれしてたから、誰かが単独行動しようとしたら班員が必ず気づくはずで……、マジでおかしいな?


「あっ! コテツ姉、インダルトくんが居ない!」


「っ、そーだよ! あのクソうるせえあいつが居ねえんだよ!」


 俺とレムネアが同時に気づいて、って。


「……あれ? ちょっと待てよ?? アイツ、『いつから居ない』んだ?」


 現在地は27階層で、食料になる虫が一階と六階、っていう二カ所にしか居なかったもんで、手持ちの食料が尽きそうになるたびに往復してて。


 流石に一週間も内部に潜ってると対処法も直接戦うんじゃなくて、水を流し込んだり火で攻めたり、って絡め手が増えて、班ごとにかなり内部でバラけて別作業やってたからな?


 つっても、それなりに危険もあるんだから一時的にバラけても基本は集団行動で、それに、一週間も寝食共にした新兵隊員のみんながどこに居て何してるかくらい、ずっと把握してたはずなんだが……。


「って、あれれ? コテツ姉、エレベーターが動いてるんじゃ?」


「んあ? ……そうだな、上からエレベーターが降りて来てるっぽいな。――つか、あれが見えたのかよ?! 俺の夜間視力でぎりぎりだぞ!?」


 レムネアの言葉に頷きかけて、よくよくその意味を考えて、驚愕しちまった。


 各階層の内部が、上が見えないくらいに高くて闇に包まれてるもんで、俺は第一階層からずっとあちこちに<光球(カラド・コロン)>出したりして周囲を照らしてんだが……。


 コイツ使うときの欠点として、近くで強い光放ってるもんで、光が届かない遠くの光モンが見えづらくなるんだよな。眩惑効果、って奴だっけ?


「あ、うん。っていうか、シルフィンとシフォンに教わってる精霊魔法の応用でね? 物が動くと空気も一緒に動くんで、風の精霊にあらかじめ頼んでおいたら教えてくれるの」


「……アァ、そうか。精霊弓でも使ってたもんな。――アイツら、もしかしてすげえ教え方巧いのか?」


「うん、すーっごく巧いよ? 実践ばっかで全然理論とか教えてくれないタケミカヅチと違って、解らないとこあったらすぐに細かく教えてくれるの!」


「アイツは致命的な教え下手だからな……、あんまし突っ込んでやるなよ、本人もかなり気にしてたっぽいし」


 そういや、ヒトツメに弟子入りしたムギリも同じ理由で苦戦してるとか言ってたよな。


 シンディも肝心なとこを説明省く癖あるし……、もしかして神族って全員教え下手なんじゃねーのか?




 そんな風に考えながらとりあえず、ここで捜索でバラけてインダルトを探すのも二次遭難したら本末転倒だし、何よりエレベーターが動いてるってことは、俺たち以外の誰かが新しく内部にやって来た、ってことだから。


 エレベーターがエレベーターホールになってる空間に降りるのを遠目で確認して、俺らは全員でそっちへ移動してみることにしたんだ。



――――☆――――☆――――☆――――☆――――☆――――



「――なるほどな、『そっち側』の人間だったわけだ」


「別に、その、お前らを騙すつもりはなかったんだが……、まあ、結果的にゃ騙してんだよな。悪ぃ」


 そんな風に、いつもの態度に申し訳無さを五割増ししたくらいの感じで、勢い良く頭を下げたインダルトを横目に……、俺は、その横に立ってる人間に声を掛ける。


「で、『隊員に密偵を混ぜた理由』ってのはなんだ、ハイン?」


「ちょっとした実利を兼ねた実験のようなものだ、気を悪くしたのならば謝る」


「……悪くならねえわけねえだろ」


 俺とレムネアの刺すような視線もどこ吹く風で、いつものにやにや笑いを崩さねえハインの態度に、心底ムカついちまう。


 隣で恐縮しまくってる上に、隊員の何人かに掴み掛かられて弁明してるインダルトを見ると、余計にな。


「――っつーことは、インダルトは最初から新兵隊の隊員じゃなくて、盗賊ギルドの密偵だったわけだ?」


「でも、盗賊ギルドの烙印なかったよ? 同じギルド員ならすぐ分かるのに」


「この子は正式な盗賊ギルド員ではないからな」


 レムネアが不思議そうにポツリと呟いたのがハインの耳に届いたのか、そんな風に話し始めて。


「言っただろう、実験だと。盗賊ギルド員でない一般人で、警戒心を煽らない性格を持つ少年が密偵に使えるかどうかの実験だった。――と言っても、この子が逐次密告していたわけではないんだ」


 相変わらず隊員のみんなに追求を受けてるインダルトの背後に近づいて、ハインはインダルトが着用してる胸甲を留めてる、肩のハーネスを解いて見せた。


「なっ……、なんだ、そりゃ!?」


「魔道士シンディどのの術式のひとつで……、『神核』というらしい」


 初日にレムネアに上着を貸してくれて以来、ずっと上半身裸で鎧を直接身に付ける感じになってたインダルトの素肌の、胸の中央部に……、拳大の真っ赤な宝石みたいなもんが埋め込まれてることに気づいて、俺たちは一様に驚きのどよめきを上げちまった。


「これを通して、神核に使用者登録されたオレに内部情報が空間を超えて筒抜けになる、という魔法実験でな? 結果は上々、だったんだが」


「最後まで隠しておけば、後々使いやすかったのではありませんかな? ……肉体に直接宝石を埋め込むとなれば、簡単に使い捨て出来るような術式ではなさそうですが」


 さすがにいつもは温厚なハダトさんも騙されたことに静かに怒ってるのか、声がかなり低くて、不満そうな態度が付き合いの浅い俺らにだってはっきり分かる口調になってる。


「のんびりと魔法実験をしているわけには行かなくなったのでな、エレベーターを上に動かして貰うために、インダルトに独自行動させた」


「ンだよ、なんか緊急事態とかかよ?」


 俺もせっかく見つけた、俺たちを色眼鏡で見ない普通の少年だと思ってたとこを騙されてた、って部分に嫌悪感を抱かずに居られないもんで。


 それを実行させたらしい盗賊ギルドの長なハインに、すんげえ不機嫌な声と表情で応じちまったけど。


「オレにとってはそうでもないのだが、君にとってはきっと緊急事態だろう、と思ってな? 伝言でも良かったのだが、実験の説明も兼ねて盗賊王のオレが直々にこちらに出向いた」


「御託はいいから早く言えよ? 言っとくが、俺はそんなに気長な方でもねえんだぜ? 『神刀(コイツ)の威力』は知ってるはずだよな??」


 相変わらずなかなか本題に入らないハインの態度に焦れて、背中に斜めに背負ってる神刀の柄に片手を掛けて見せたら、ハインは大仰に両手を前に翳しながらも、にやにや笑いを崩さないままで。


「――では、結論から言おう。……コテツ、君の家族である、アドン、サーティエ、エルガーの三人に軍から捕縛命令が発令された」


「ほっ……、捕縛、って、何っ……、だよ、そりゃ!?」


 あんまりにも驚いたんで、言葉もマトモに出て来なくって、俺の後ろでハインから隠れてるレムネアなんか、完全に絶句しちまってて。


 それも、その更に後に続いたハインの言葉で、俺も一緒になって絶句しちまうしかなくなっちまって。




「三人の罪状は今のところ、『脱走容疑』となっている」


 訳が分からなさすぎて、俺はハインのにやにや顔をじっと凝視するしかなかった。



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