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転生したら王になれって言われました  作者: 澪姉
第四章 商会篇
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78話 メイティス公にべた褒めされた

幕間含めて通算100話目だったよ、今気づいたびっくりだねっ。

愛読してくれてる読者さんたちに感謝、感謝っ!

《ていうかー、コテ姉って「接触麻痺」のスキルあるんだから、それでいいんじゃないの?》


『いや、ありゃ身体を麻痺させるだけで、生命活動は停止しねえからな? ド素人でも、呼吸してるのには気づいちまうだろ。だから、やっぱエルフに頼らねえと』


 シィの疑問に答えといて、今日はモントラルくんの父親、領主のメイティス公爵家開催の夜会にお邪魔してる。


「おお、これはこれは、クレティシュバンツ商会のマキシ嬢ではありませんか! 楽しんでおられますかな?」


 なんつって、メイティス公爵が脂ぎった手で俺の右手を掴んで来るけど、アンタからの招待状で来たんだっつの。白々しいぜ。


「ええ、もちろんです。アントスの街の新参、平民で身障者、という立場のわたくしを快くお招き頂き、メイティス公爵様に感謝を申し上げますわ?」


 軽く俺が頭を下げると、周囲を守ってくれてるアウレリアたちも揃って頭を下げた。


 ――メイティス公爵の取り巻きたちがあからさまに侮蔑の目線向けて来てるけど、こんな指一本で殺せそうな奴らのやることなんざ、いちいち気にしてらんねえし。


「何をおっしゃいますやら。マキシ嬢が街に定住されてからの数ヶ月で、街の税収は三割増し、しかし街の住民が重税に喘ぐこともなく!」


 上機嫌に大声で商会の業績を喧伝してくれるのは有り難いんだが……。


「正直に申し上げれば、領主の私などとは比較にならぬ手腕! 民衆に富をもたらすその頭脳、それに、――隠されておられますが、隠しきれぬその美貌も合わせ、マキシ嬢の魅力でしょうな!」


 ……取り巻きの視線が「ぎろり!」とか音を立てた気がした。


 べた褒めなのは有り難いんだけど、今この瞬間、めっちゃ政敵作ったよな、俺。


「過剰な賛辞でございます。メイティス公爵様と同じく、家臣が優秀なのですわ。わたくし自身の能力など、地に落ちた果実を拾うことすら出来かねますので」


「ご謙遜も巧い! 末永く、お付き合いを願いたいですな! それと、あちらでただいま別の女性とダンスをしておるのが、私の息子、モントラル子爵でして」


 言われて、公爵が開いた手のひらで指し示す方向に、なんかすげえ曖昧な苦笑浮かべて踊ってる男……、モントラルくんが見えた。


「出来ましたら、アレとの面通しも、よろしくお願致しますぞ?」


「勿体無いお言葉。身に余る光栄ですが、この通り踊れません身の上ですので、後ほどとさせて頂いても?」


「これは失礼! マキシ嬢の美貌に酔ってしまい、気づきませんで! 失礼をお許し下され!」


 ――いま、俺の奥歯は上空一万メートルを超えて更に急上昇中だ。歯が、浮くっつの。


 つか、メイティス公爵ってなんか。印象が。


《裏表ないっていうか、正直すぎる感じ?》


『アァ、そんな感じだ。俺が美女だとかいう目の悪さは置いといても、悪い奴には思えねえな。まあ、初対面印象でしかねえけど』


 善人でも上の役職についてるだけで無能な暴君になる、って歴史は地球でもよくあったらしいし、それだけで判断するにゃ早すぎるんだろうが。


『とりあえず、商会としてはあからさまに敵に回したくはねえ、敵に回して利点はねえ、って感じはするな』


《だよねえ。リンタンさんやモントラルさんには悪いけど、契約破棄も視野に入れちゃう?》


『そりゃ最初からだ。どっちに転んでもいいようには動いてる』


 シィの言葉に相槌打っといて、そろそろ一曲終わりそうでフィナーレの動きに入ってる、踊ってるモントラルくんに視線を。


 メイティス公爵は俺を見下ろしながら、なんかすげえ持ち上げまくってくれてるけど、ぶっちゃけ話半分で適当に『妖艶な微笑み』で相槌してる。


「……ふん。下賤な平民風情が」


 と、ぼそり、とつぶやくような非難が耳に入って……。


 声が聞こえた方向にちらり、と目線向けたら。


 どうやら、メイティス公爵と腕組んでる長身のモデル体型な、ひらひらふわふわな飾りついた扇子で口元隠した女性から発せられたみたいで。


『えーっと。もしかして、クスナディ公爵后?』


《そうだよー。モントラルさんのお母さんだね。……確か四十超えてるはずだけど、とても子供一人産んだ身体に見えないなあ、すごいっ》


 シィがなんか違う部分に感心してんぞ。


 つか。


「お館様? 本日はモントラルの(きさき)選びの場だった筈でしょう? 平民相手に時間を潰している場合ではありませんよ、夜は短いのですから」


「む? そうであったな、しかし、街に富をもたらし民衆から支持を得る、未来ある若き才媛と話すのも街にとっては有意義なのだぞ、クスナディよ?」


「民衆など、貴族に飼育される家畜と同じです。何度言ったら分かるのでしょう」


「そう、侮蔑するものでない。民衆は衆愚ではあるが、良い方向に導き豊かな生活を与えるのが貴族の使命。后は、もう少し帝王学を学ぶ必要があるな」


「それは遠慮しますわ。ほら、伯爵家の方がお待ちですわよ、お早く?」


「分かった分かった、少々待っておれ」


 取巻き連中を引き連れて、先に離れていったクスナディ公爵后は、最後まで俺を見下してたみたいだったが。


「やれやれ、取り付く島もない……。マキシ嬢? 息子から『商談』をお聞き及びのはずだが、よろしく頼みますぞ?」


「――進めても、よろしいのですね?」


「非公式ですが。私は私に火の粉が迫れば、貴方を切り捨てる。その辺は、先に理解しておいて下され?」


『……前言撤回。これ、食えないおっさんタイプだ』


《失敗したら商会だけ責任負え、でも応援はしてるよ、って感じー? 性格悪ーい》


 ぱちり、とウィンクして嫁さん追って遠ざかってくメイティス公爵は相変わらず、嫁に頭が上がらないような『演技』を繰り返してるけど。




「腹は決まりましたか? あれ、事が露呈しそうになったらまずお前らを犯人に断定するぞ、っていう脅しですわよ」


「解ってんよ。ついでに、ありゃしっかり皇都とかに根が繋がってると見たぜ。勇者じゃなく……、皇帝の方か?」


 珍しく私語を挟んで来る、右隣に立ってるアウレリアに答えて、先を促すように俺を横目で見下ろして来るアウレリアに、話を続ける。


「街を富ませて相対的に税収を上げてくれて感謝してる、ってな本音だろう。規制する理由がねえからな、俺らも民衆も貴族も三方良しなんだから」


「他には?」


「俺とモントラルくんがくっついて欲しいとか、メイティス公爵家と仲良くして欲しい、ってのも本音。そこんとこ、隠す理由もねえし」


 更に先を促すアウレリアに答えて、俺は片手で頬杖ついて。


「商会の開発力や販売力、資金源に探り入れてェんじゃねえのか? そこら辺は貴族としてなのか、情報をどっか上に上げてえのか解らねえけど……」


「…………情報については、メイティス公爵はアントス領主で、カスパーン様の配下。そちらから別に情報が降りて来ている筈だ」


「イファンカがほんとに喋るようになってくれて嬉しいぜ。――そこが判断の分かれ目だ」


 真後ろにいるイファンカの目をみようと、くりっ、と頭を上に上げて見たら、なんか赤面してそっぽ向かれたんだけど。


 いま、なんか恥ずかしいこと言ったか、俺?


「んー、つまり、メイティス公は、あたしらの『商業以外の能力』を試してる、って?」


「そんなとこじゃねえかな。カスパーンの味方ならカスパーンから情報が送られてるだろう。けど、そうじゃねえのに裏を読んでるなら、メイティス公は独自の探索網を持ってる筈」


「んー? リンタンさんが繋がってるとかじゃ?」


 そういや、ウィルペディはリンタンさんが俺に内緒のお願いしたとき、隠れて同席してたっけ。


「リンタンさんはあんだけの実直さだと、芝居出来ないタイプだろ。だから、計画知らせてねえし」


 マジで直情すぎて、そっこーボロ出しそうだからな。


 むしろ、モントラルくんの家の皆が真剣に、モントラルくんと村娘の心中……、死亡を信じてくれた方が有り難い。


「……だから、モントラルくんのお願いを通して、公爵が盗賊ギルド側か勇者側か、ってのを俺らに判断させてえんだ、と見たぜ? つっても、俺はこの筋書き書いたのが誰だか、だいたい見当ついたけど」


《あたしも解ったー。っていうか、最近あからさま過ぎると思うー》


『だよなあ。こりゃ、なんかもっと大きな企みあるんじゃねえのか、って勘繰っちまうんだけど』


 こう立て続けにバレバレの工作が続くと、なあ?


 バレやすい工作を隠れ蓑に、バレたら困る工作を進めてんじゃねえのか、って思うのは、必然だろ?


 ――それが何だかはさっぱり解らねえのが、悔しいとこだが。




「「「で? ご主人様のご命令は?」」」


 あっ。いつものメイド衆に戻っちまった。くそう。


「そりゃ、まあ。非公式ながら一応、親のお墨付きは貰ったんだし。――進行させるとすっか。……あ、でも」


「…………村娘の方の身元調査だろう? 盗賊ギルドに頼んであるし、カッシュたちも別途で進めている」


「イファンカ、感謝。――盗賊ギルドだけに任せても良かったんだが、あいつら、情報握ってるもんで、こっちに無断で内容を変更することあるからな」


《情報には価値がある、ってハインさんが良く言ってるもんね》


『あいつら全面的に味方じゃねえってハッキリ態度にしてくれるのも、……優しさなのかもな?』


《たぶんそうだよ? 仕事上の付き合い、金額分だけの働きで、馴れ合わない、って意思表示だと思うんだ。――だから、商会独自の探索網を持っててもいいと思うの》


『だな。でも、そこんとこはそのうち、ハダトさんたちとも相談しねえと』


 シィに言い置いて、ちょっと考え事。


 カスパーン爺さんの厚意に乗っかって、ハダトさんたち迷宮探索隊をあちこちで使い回してるけど……、厳密に言うと国家反逆罪になっちまうからな。


 ――だって俺、犯罪者扱いってわけじゃねえけど、重要参考人で帝国全土指名手配なんだから。




 流れでずっと配下の扱いしてたけど、あれから一年経過してんだし……。


 そろそろ、商会に残るかシスの街に戻るか、選択して貰った方がいいのかも。



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