銃がないから創るんだって
「『リディシア』へようこそいらっしゃいました、私はあなた様の始まりをサポートさせていただきますアテネと申します」
暗転していた世界が色を取り戻すとそこは快晴の青空の下だった
どこまでも続く草原の緑と空の青、二つの色で埋められたこの空間に驚いていると先の言葉が聞こえた
見れば誰もいなかったそこに女の人が姿勢正しく立っている
「このゲームのOSもう少し安全面考慮してくれよな、被ったら作用するとか危なすぎだよ」
あの二人にはあとで説教はすることは決定事項だが、付き合ってやろうと思う、
いや、語弊があるか、このグラフィックのすごさに少し興味が出てしまったが大きい
「まずはじめにあなた様の分身をお造りください、ベースとしましてあなた様の姿をスキャンしましたのでここからご自由に変更してください」
銀の肩まである髪に人形のように整理された顔、スラリとした体と起伏の少ない体だが一種の完成されたかのようなその人を見てさらに驚いた
人の一部一部まで現実と大差のないほどまで作りこまれたこのゲームに心が躍る
そんな俺の目の前に突然様々な半透明上の操作パネルが現れる
顔や体の形から始まり目や鼻、髪色など細かなところまで弄れるように表示されたそれらはぶっちゃけて邪魔以外の何物でもない
一息にここまで出なくてもいいだろうと溜息を吐きながら目と髪以外を適当に消去
そして目じりを少し下げ、朱色にし髪を首くらいまで(なぜか限界の短さだった)短くし白銀に髪色を変更しクリエイトを終了する
この時パネルの一つ一つをしっかりと確認すれば後に叫ばなくて済んだのだが後の祭りだ
「これでクリエイトを終了してよろしいですか」
確認のために自分のアバターを再度見つめる
弄りすぎておかしな顔になるのを避けるためとはいえ女顔のままになってしまうのは仕方ないがせめてときつめの目尻を下げすこし柔らかくなったのを確認して了承する
「それではキャラクターに名前をつけ命を吹き込んでください」
少し考え前使っていた名前を捨てナツと記入する
少しの間がありアテネが再度確認してきたのにそのまま返す
「それではナツ様、この世界では技能がなくては魔物の闊歩する世界では何もできずに消滅してしまいます。そこで我々神々の祝福としましてスキルを贈呈いたします。どうぞこの中から10個お選びください」
その一言に呼応して一つのパネルが現れる
小さくない文字で画面いっぱいにびっしりと表記されたその語群に少し頭が痛みを告げた気がしたが構わずそれを流し読む
剣や槍、弓などの武器に始まり鍛冶や筋力アップなどと細かなスキルまでをあるのを一通り確認して叫びたい
「なんで銃がないんじゃ」
あ、さけんでた、でも叫んじゃうでしょこれは
なんで俺の好きな銃火器系のスキルがないんだよ、贔屓だろ
「申し訳ありません、銃が何か分かりませんがそのようなものは加護に含まれておりません」
見落としたかと再度確認しようとしたが前の女性に綺麗に切り捨てられてしまった
思わず両手をついて項垂れる俺をみてなにか感じたのか彼女はさらに口を開き
「で、ですがスキルレベルが一定レベルになりますとスキルポイントが手に入りますし、ナツ様の行動次第ではそのようなスキルが現れるかもしれません」
ほう、つまり俺はこの世界で銃を一からいや、0から創り出せばいいということなのか
そうなると鍛冶や採掘などのスキルが必要になりそうだが彼女の言い分では後からでも取得できそうだ
ならば速攻で奥の方の希少鉱石で素材を揃えて最高の一品を作る時間を作るしかないだろう
となれば戦闘は二の次で回避特化、ついでに速さを上げて移動時間を限りなく減らせるようにして…敵に触れるのは危なそうだし魔法に思うものがあるし一つ取っておくか…
「えっと、これで本当に、ほんっとっうによろしいでしょうか」
なんだかすごい確認の言葉が強かったがこれでいいのでもちろん了承
なんだか少し悲しい目をされた気もするが関係ない早く俺は銃を作りたいのだ
「それではちゅーと「スキップで」…わかりました、貴方様に神の御加護がありますように」
もう彼女が何かを諦めたように手を組み祈りの恰好をすると視界が再び暗転する
次に目を開いたとき、そこは中世のヨーロッパばりの街並みが広がっていた
どうやらここは噴水広場になっているようだが確認もそこそこに人ごみの中を遠くに見える門に向かって走り出した
当分はこの体に慣れてから一つ二つ先の町で鉱山を探そうと思う。ついでに火薬になりそうなものも探さなければならないからやることはたくさんありそうだ
思わず口角が上がるのを抑えられなずにうすら笑いを浮かべながら門を潜り抜け人のいなそうな林に突き進んだ
プレイヤー:ナツ
スキル:
『気配1』『回避1』『素早さアップ1』「隠密1」『察知1』
『魔法:火1』『忍び足1』『目1』『足1』『魔力回復1』