陰謀に巻き込まれ
「お兄ちゃんお願い、一緒にやろうよ」
夏真っ盛りの午後俺はもう耳にたこができるほど聞かされたその言葉に耳を塞いだ
まず人様の耳元で大声を出さないでもらいたい
おかげでまた耳がキーンとおかしな音を鳴らしている
「またそれかよ、おれはもうゲームはいいんです、どれだけ陰口叩かれたと思ってるんだよ」
「あんなのお兄ちゃんのすごさに嫉妬した人の行動じゃん、それにお兄ちゃんはチートも裏技もなしの正攻法で戦ったんだから叩いた方がおかしいんだよ」
「叩かれたことは事実なんだから俺が気力わかなくなるのも当然だろ。それに俺がいなくてもそのゲーム楽しめるだろ」
「うぅ、お兄ちゃんのばかぁー」
そう叫んで階段を上がっていくのは三つ年下の妹、春華である
中学生というのもあってきれいよりも可愛らしいが似合う彼女は身内贔屓を抜きにしてもトップを争えるレベルだと母親が力説していたのを覚えている
ちなみに、さっき彼女に誘われていたのは明日正式サービスの始まる『FWS』(フリーダムワールドストーリー)という新作VRゲームである
βテスターの彼女いわくすべてのゲームを過去にするほどのすごさだとかなんとか
それの先行販売で兄弟分買いそろえてきたらしく全員でやるんだと意気込んでおりその被害にあっているのだ
「夏輝もそろそろあのことは忘れなさいよ、あのこと覚えてる人もほとんどいないわよ?」
「そういうけど楓姉、ログインの度にグチグチ言われるあの光景は忘れられないぞ」
「でも、もう3年よ?夏輝だって好きなゲームずっと我慢してるのはつらいでしょ?」
「…お、そろそろ夕飯の準備しなきゃ」
そういって逃げるようにキッチンに逃げ込んだ
さっきの人が二つ上の姉、楓だ
妹とは違い大学生の姉は母に姉に美しさで勝負できるのは日本では両手で数えるくらいだとかいわせる美人さん
指折り数えるときに妹と俺を指差したのは見間違えだと思いたい、とくに俺を指したことは
たしかに昔は美人三姉妹とか言われていたらしいが俺は男だ
いい年した男に綺麗だとかかわいいだとか言うものじゃないっと話がそれたな
姉の言うこともわかるがあそこまで徹底的に叩かれると逆に未練もなく止められるというものだ
「今日はなにを作ろうかね」
それにゲームという遊びを捨てたためにできた時間で炊事洗濯掃除に裁縫と一人暮らししても問題ない程の技術を得ることができたのだから悪いことばかりでもない
「お姉ちゃん、お兄ちゃん落とせそうにないよ」
「だてに今までゲームに手を出さなかっただけはあるわね、これはなにか弱みに付け込まなきゃだめかしら」
「でもお兄ちゃんに悪い噂とかないし、ケータイだって電話くらいにしか使わないんだよ?」
「そうよね、あの年で年齢規制に引っ掛かるようなものがないってのもすごいわよね」
「難攻不落だなんて、さすがお兄ちゃん」
「これは泣き落としとか精神攻撃しかないわね」
「でもそれうまくいくのといかないのがあるよ?」
「大丈夫、私にいい案があるから」
夜にそんな二人の作戦会議があったことは寝ていた俺には分からなかった
「さぁお兄ちゃん今日こそ観念するのだ」
ただいまようやっと太陽が出始めるそんな時間、寝起き早々に叫ばれました
「今回はずいぶんだな、そんなにそのゲームをやらせたいか」
「当然、あの件が消えてきたんだから今度は弟も入れて4人でトップを目指すのじゃ」
「おいおい、雪のやつゲームしたことほとんどなかっただろ、大丈夫なのか」
片腕を頭上に上げ何やらポージングしている春華は無視して扉に手をかけたとき思わぬ人の名前を聞き振り返ってしまう
春華と双子の雪はどうしたのか妹とは正反対の成長を遂げている
おとなしく内気な彼は母曰くはクールガイでそこに引かれるとか何とか、、、母よ弟に手は出すなよ
またそれてしまったが兄弟の中で唯一男として認識されてきた弟である…羨ましい
だが彼はゲーム等ほとんどしていなかった記憶があるのだが記憶違いであろうか
「お兄ちゃんがやってくれるならそれくらい付き合ってやるって許可はもらったから問題はない」
「おい、そこは胸を張る所じゃないぞ、ってか勝手に弟も巻き込むんじゃない」
「ふふふ、いいのかな、雪が何も知らない中あっちで有名になってしまっても、きっと雪なら這い上がってしまうぞ」
猛進中の妹に頭を痛めているとついでのことに雪がゲーム内でどうなるか想像してしまいさらに頭痛が激しくなった気がする
というのも雪はゲームを普段しないがした場合がおかしいのである。
格ゲー等では姉妹に圧勝し、すごろくゲームなどではほかの追随を許さぬ運が働くリアルチートの持ち主なのだ
加えて持ち前の運動神経も合い増さりきっと手が出せなくなる、いや手が出せない
「今からでも遅くないから雪だけはやらせちゃいけない、たぶんいや絶対やらかすから」
「久しぶりにやるき出してくれたからもう遅いのだよ、止められるのはお兄ちゃんだけなのだよ」
うちの兄弟には俺をかばってくれる人はいないのだろうか
周りが敵しかいないというのは少し悲しい
「で、でもおれはゲームは…」
「お兄ちゃんは弟にもあの経験をさせるのかな、私たち兄弟皆でトップなら悪意が分散するとは思わない」
「くっいつからそんな悪知恵が働くようになったんだ、そこかぁ」
いつになく悪知恵を披露してきた妹に一瞬たじろいだが背後の扉から何かを感じた俺はすかさず開け放つ
そこには意地悪そうに笑う姉の姿があった
「楓姉、前は無理強いしないって言ってたけど、説明してもらっていいかな」
「いやー、最近兄弟揃うことないからゲームの中で位一緒になりたかったんですよ」
「そうだよ、遊べないで寂しかったんだからゲームくらい付き合ってくれてもいいじゃん」
こういう泣き脅しには今まで屈しないようにしてきたのだが、確かに雪が別の中学に通い始めてから4人揃うことは少なくなった、社会人が出ればそれはもっと少なくなるのは容易に想像もできる
だがゲームは「そういうことだから、えい」
思考を遮るように姉がずっと小脇に抱えていた何かを頭に置かれたと思うとどんどん視界が暗転し始める
暗転しきる前に姉妹の笑顔が見えた
『そういえば最近そういう笑顔見てなかったかもな』
そうしておれはよく判らぬうちに床に伏すのであった
他の作品執筆中の作者ですが創作意欲から一つ生まれてしまいました。
亀更新ですが気に入ったなら付き合ってもらえれば幸いです