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五本場15

 その直後、七海が一旦止めた發を中野が切り出して来た。七海は一瞬サラリーマンに視線を飛ばしたが、サラリーマンに動きはない。

(好かった、發が切れる)

 サラリーマンはツモ切り、オタ風を鳴いておいて二鳴きもするまい。一巡し、七海は發を切った。

 九巡目、七海テンパイ。


四五六七七④⑥⑦12345 ()


(絶好……!)

 リーチして高めなら跳満、安めでも満貫確定である。高めの一発ツモか、裏ドラを載せる事が出来れば倍満である。七海は躊躇なく曲げた。

「リーチ!」

(しまった、先にテンパイされた……一旦回った気配があったのに上家の發切りの一手で攻守を入れ換えられた)

 サラリーマンの手はテンバラであり、それらしい捨て牌を演出していただけである。中野が西をツモ切りした後、サラリーマンは仕方なく手出しで七海の現物を切った。

(一発目に手出しの現物?もしかして……)

 サラリーマンはほとんどノータイムで現物を手出しした為、七海は訝しんだ。

(見せ掛けで鳴いていただけ……)

 七海は了解した。サラリーマンは警戒させるようなポーズを見せていたが、中野が發を切った、たった一手のお陰で、ターンオーバーしたのだ。

 となれば、ツモれないはずはない。

「……ツモ、一発です」


四五六七七④()⑥12345 6


「裏はありません。四○○○・八○○○の二枚オールです」

 東二局、ドラ3。親は七海。

(いきなり倍満?女はツモで打ってるだけだが……上家が絶妙に邪魔して来やがる)

 上家に座る中野は要所要所で厄介掛けて来る。ほとんど和了っていないものの、それだけに手の内を読み辛い。

 サラリーマンは七巡目で以下の形。


四四五六六②⑧⑧東東⑨⑨白 白


 七対子テンパイ、五か②切りでテンパイである。

「う~ん……ちょっと失礼」

 サラリーマンは悩む仕草を見せた。五秒ほど考えた後、サラリーマンは五を切った。そして、ツモった牌を他家から見て右から二番目に差し込んだ。

(長考して五切り?右から三番目から五が出て来たとなると恐らくあの右端二枚も萬子。その間に牌をいれたのなら、恐らく一三五の両嵌に二をツモった。悩んだのは萬子の上があるから、五を残すかどうか。五六六なら普通六切りだろうし、恐らく五七七からの五切り。テンパイしてるとしたら七と何かのシャボ?)

 サラリーマンが長考した為、七海はついサラリーマンの手元を観察してしまっていた。そんな七海に、中野は怪訝な視線を向けていた。

「おっ、好いところをツモりました。リーチ」

 次巡、サラリーマンは②を切ってリーチを掛けて来た。ツモった牌は、その②が出て来た位置の左隣に収められた。

(②切りリーチなら恐らく七七②②に③をツモって両面変化のリーチ)

 七海も同巡にテンパイした。


①①④④⑥⑥⑦⑦南南西發3 西


 絶好のツモ、しかし門混テンパイするにはドラを切らなければならない。しかし恐らくサラリーマンは①-④待ち、仮に打ち込んでも倍満の貯金があるのだから恐れる事はない。

「リーチです!」

「おや、一発です」

 サラリーマンは理牌してから手を倒した。


四四六六⑧⑧東東⑨⑨白白3


「裏はナシの跳満と一枚です」

「ち、七対子?」

「面子手で行くか七対子で行くか悩みましたけど、正解でしたねぇ」

 それならば普通は②単騎でリーチのはずだ。わざわざ手の内をこねくり回して見せて、こちらの自爆待ちとはいかにも悪漢無頼である。

 七海が悔しげに点棒を差し出していると、不意に中野が声を上げた。

「倍満跳満が連発したんじゃ脇はたまらないな。そう思いますよね関さん?」

 中野は対面に座る板前風にそんな事を話し掛けていた。

「そうだな、親っ被りしてる私はたまらんよ」

 そんな二人の会話を聞きながら、七海にふと思考が貫入して来た。

(なぜ私はせっかく和了ってるのにわざわざ危険を追い掛けているんですか……大会でも一歩抜き出せばそれを守り切って勝てるのに……)

 七海はその乱心の理由が分からなかった。いや、知っているのだが意識出来ていないのである。

「及川らしくもないな一発でドラ切るなんて。勝負手だったのか?」

「……好い手だったので。次に行きましょう」

 七海は手牌を伏せ、壁牌と共に流した。

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