表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/193

五本場9

 しかしこっちの勇み足なのだから文句は言えない。七海は黙って跳満分の点棒を差し出した。

(いきなり跳満放銃は痛い……何とかしなくちゃ)

 空モーションに引っ掛かってしまった事は悔しいが、このままでは点棒的にもまずい。ひとまず放銃してしまった点棒を取り戻さなくてはならない。

 東二局、ドラ白。親は七海。

 六巡目、土建屋が4を切った。

「ん……いや失礼。チーで」

 サラリーマンはツモろうとした手を一瞬止め、その4を23でチーした。そしてドラの白を切り出して来た。

(白は初牌……さすがにテンパイしてるはず。染め手ではないようですが……喰いタンと赤?あるいは三色……)

 その時の七海の手牌は以下の形。


五五六七①②③④⑧⑧34()


 ここに四をツモって来た。

(メンタンピン赤、満貫テンパイ……ツモって裏が乗れば跳満になる)

 対面は喰いタンであろうから、切りたい①は通るはずである。七海は①を掴んだ。

「リーチです」

「おっとロンです」

 七海はリー棒を出そうとしたが、対面の意外な和了り発声に思わず顔を上げた。

一二三②③123白白(234)

「三色ドラドラ、三九○○」

「なっ……」

 七海は思わず対面の手牌を凝視した。普通はこうは鳴かない。鳴いたとしても白を暗刻にしたまま一旦②か③の単騎待ちに受けて、手変わりを待つのが正着だ。

(ドラを切ってまで喰いタンを臭わせて①で和了り……)

 これはつまり、またしても嵌められた事を意味している。一度ならず二度までも、この対面、温和そうな態度であるがとんだ喰わせ者だ。

 取り返すどころか更に傷を拡げてしまった七海は、歯噛みする思いで点棒を差し出した。

 七海はその後、子で五二○○と、南場の親で二○○○オールを和了り、点棒をそこそこまでに回復させた。

 場は回って南三局、ドラ三。親は土建屋。

(何とか二○三○○点にまで戻した……トップは対面の三五○○○点……)

 満貫を直撃するか跳満をツモれば逆転出来るが、まだ対面のラス親が残っている。無理に今点差を縮めようとするよりは、とりあえず小さい点を和了っておいて、オーラスで親被りさせて逆転を狙う方が好いだろう。

「うーん……」

 サラリーマンは悩んでいる様子で、しばらく考えた後、向かって右から二番目の牌を捨てた。その牌は②であった。

 そこで七海はふと今日の部活での出来事を思い出した。あれは恐らく①②の偏張を落とそうとしているのではないだろうか。悩んでいたのは偏張で即リーするか、あるいは手を伸ばすかを考えていたのだろう。

 七海はそう考え、板前が切った後にツモった。

 その時不意に店のドアが開き、客が一人、店内に入って来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ