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五本場6

 こと麻雀の技巧に関しては人後に落ちないと自負しているが、中野は純粋な麻雀の技術は元より、対人戦である事に重きを置いた打法を用いている。こればっかりは確率でも効率でも弾き出せない、七海にとっては別次元の領域であった。

 インタージュニアの覇者として、決して自分が磨いて来た技術が劣っている訳ではないと、それを思い知らせたいという思いは常にある。

 しかし中野は経験から得たのだろうと思われる卓識から、こちらが押せば暖簾に腕押し、のらりくらりと躱してしまう。中野は口数が多い方では無いが話すと面白い。それは自分も認めるところである。

 要するに社交的であるとか、人当たりが好いといった言い方で表現すると分かり易い。

 ギスギスと麻雀の事を押し付けようとする自分が何となく一人相撲をしているような感覚で、それが空しく思える時もある。

 麻雀が巧くて、人当たりも好くて、それでいて謙虚な人柄は誰でも惹かれるだろう。

 となると、自分は中野に嫉妬しているのだろうか。

 被害妄想も好いところだが、麻雀という自分のアイデンティティを中野に否定されている気がしてならない。

 不意に目の前を女子高生数人が大きな声でしゃべりながら通り過ぎ、その声で七海は我に還った。ぼんやりと考え込んでしまっていたらしい。

 何とはなしに辺りを見渡すと、以前中野が雀荘に入って行くところを目撃した場所の近くである事に気付いた。七海はどういう心境なのか自分も好く分からないがその店へと足を向けた。

 相変わらず場末の雰囲気が漂っているビルの前に立ち、建物の脇にある階段を昇った。二階までたどり着くと、『麻雀 竜王』と銘打たれた見覚えのあるドアが七海を出迎えてくれた。

 初めて訪れた時はひどく緊張した覚えがあるが今ではさほど感じない。二回目ともなると、七海は特に物怖じもせず、そのドアを開いた。

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