四本場29
「うーん、ちょっと怖いけどリーチかな」
七巡目、木村が少し悩んでからリーチを掛けて来た。中野の仕掛けが恐いのだろうが、トップとの点差は僅かであるため勝負に出たのだろう。
ダマで逆転手があるのならリーチは掛けないだろうから、恐らくはリーチのみ、ツモって裏ドラ期待……といったところだろう。ツモって裏ドラ一枚あれば逆転である。
その時の沙夜の手は以下の形。
四四五五七七③③223東中 3
辛うじて七対子のテンパイである。中を切ればドラの東単騎、リーヅモなら跳満二着、もし裏が乗れば倍満となり、木村のリーチ棒を足して逆転トップになれる。
しかしこの中が中野に通るのかが唯一の問題である。中野は役牌の後付け見え見えだし、沙夜が打てば中野は三着浮上、沙夜がラスとなる。
リーチして裏ドラ乗れば大逆転、などという手を見るのはいつ以来だろうか……と沙夜は自分の手牌を見つめていた。
鳴き麻雀が自分のスタイルとはいえ、やはり手役を作っての華麗な逆転トップは嬉しいものだ。そう、競技麻雀にはない巷ルール特有の逆転劇がある。自分は今、その舞台に立っているのだ。
「リーチ」
ツモって数秒後、沙夜は中切りでリーチを掛けた。中野に動きはない。
「あいたたた追っ掛けリーチか。先にツモって……!おっ、好かった」
木村は拝みツモの牌を凝視した。ツモ切ったのは沙夜の現物八であった。
一周して沙夜のツモになったがさすがに一発ツモは無かった。中野も早めに仕掛けた割にはその後の動きもなく、淡々と場が進んで行った。
間もなく流局を迎えようとした十六巡目、沙夜は盲牌した牌を手牌の右側に置いた。
「……ツモ、今のところ跳満」
四四五五七七③③2233東 東
「七対子ドラ単騎か~、こっちは役無しだったけど三面張だったのに」
木村は悔しそうな表情で手を伏せた。
沙夜は裏ドラに手を伸ばし、勝敗の行方を握る裏ドラ表示牌を見て、沙夜は軽く息を吸い込んだ。
「……裏裏、倍満で逆転」
裏ドラ表示牌は鳥さんであった。
「七対子はドラが乗ったら破壊力抜群だな……」
中野はそんな事を言いながら手を伏せた。
一一二③⑤東中(⑤⑥⑦)(999)




