四本場16
東三局、ドラ一。親は中野。
沙夜はここ数局静観を決め込んでいたが、ようやく手が付いたようで、好配牌を手にした。
一一二四七八③③⑥34東東
ドラ対子と役牌対子を手にした。これは沙夜の御家芸である速攻を狙える配牌である。
いつもなら東を刻子にしてドラドラで和了るところだが、三巡目に木村が出した東を沙夜はスルーした。沙夜はツモり、以下の手格好となった。
一一二四七八③③④34東東 三
三色狙いにしろ一通狙いにしろ面子オーバーであるためどこかの塔子を落とさねばならない。妥当なのは③であるが、沙夜は七を切った。
続いて八を切り、沙夜は七巡目に④切りでリーチを掛けてきた。
「沙夜ちゃんは両面切ってリーチか……」
沙夜の手が尋常な手では無い事に気付いた木村はひとまず現物を切った。葉山も気付いているらしく、九を切った。
中野はというと、僅かに考えた後、2を切り出してきた。
「……ロン一発」
沙夜は手を倒した。
一一一二三四③③③34東東
「ドラ暗刻か……これはキツいな」
「裏ドラは……ナシ。満貫の一枚」
「④切りって事は三色にならない方だったって事か。三色まで入ってたらキツかったな」
中野は言いながら手牌を倒した。
五六六七①②③④④⑥444 ⑧
「4の壁でつい2を切ったよ。センパイのリーチに打ち込むのは初めてかもな」
中野は点棒と一発の御祝儀を差し出しながらそう言った。確かに沙夜も千点棒を供託するのは二百半荘振りくらいかも知れないと思っていた。
いつもならさっさと鳴いて和了りを拾う手であったが、今回は門前で手を進めてみた。あまりに好形過ぎる手は牌効率などで悩んだり失敗したりする事が多いが、こういう風に必要牌不必要牌がはっきり分かる手ならば自分にも扱える。
やはり門前の手は攻守のバランスに優れている。今更だがその事を再認識した。
東四局オーラス、ドラ白。親は沙夜。現在の点棒状況は以下の通り。
木村 二四七○○
葉山 二三三○○
中野 二○二○○
沙夜 三一八○○
全体的に小場であったため、満貫を和了った沙夜が暫定トップである。このままサクサクと和了って和了り止めしたいところである。ラスの中野とは一万点以上離れてはいるが、満貫を親カブリすると逆転を喫してしまう。で、なくとも、跳満を作られても逆転される。直撃なら五二○○までは大丈夫であるが、六四○○はマズい。
そう、余計な巡目を喰うとそれだけ手作りの余地を与えてしまうのだ。今こそ自分の真価が問われるのである。




