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四本場15

 東二局、ドラ南。親は葉山。

「うーん、リーチ」

 一発ツモ和了りを封殺された木村だったが、まだ流れはあるらしく七巡目にリーチを掛けて来た。

「中野くん、今度は鳴けんか」

「いやぁ、さっきのはたまたまですよ。そう何度も上手くは行きませんね」

 葉山は少し悩んだようだが現物切り、中野は場に三枚目の西、沙夜は鳴く事が出来ずツモ番を迎えた。


五五六八①③④⑥357發發 8


 はっきり言って微妙な手である。高くもなく早くもなく、オリるにしても中張牌の多いこの手格好ではそれもせいぜい二~三巡持てば好い方である。

 中野はオリ気味に打っているらしいし、多少攻めっ気のあるように見える葉山は下家であるため安牌の開拓は期待出来ない。こちらが無理して危険牌を通したとしても葉山を援護してしまうだけである。

(現物は八と3だけ……發は初牌……)

 とりあえず捨てても影響が少ない八を切る事にした。

「うーん、これしかないか……」

 中野はしばらく悩んでいたが、沙夜が首を長くして待っていた初牌の發を切り出して来た。

「木村さん、通る?」

「大丈夫」

 沙夜は一安心し、合わせ打ちで發を対子落としした。

 鳴き麻雀が上手く行かないためしばらく自重していた沙夜だったが、やはり門前の守備力は高いと再認識した。

 自分が和了れば防御の事を考える必要は無いため、リーチが掛かっただけで案外に焦燥してしまうものだと自認した。

 一発裏ドラの無い競技ルールではリーチの価値は相対的に低く、その事も相乗してか防御に対する認識が甘かったようである。

「お……ツモったよ」


四五六②②③③③56778 9


「リーチヅモの……裏はナシ」

五○○・一○○○(ゴットー)ですね」

 赤も裏も無く、大した点数では無い。沙夜はその和了りを見てふと気付いた。

(部活のルールは運の要素を出来るだけ排除してあるんだから、態勢が悪い時は無理に和了るより和了らせないように打った方が好い……一発も裏ドラも絶対に無いんだから、振り込みさえしなければツモられても点差は付きにくい……)

 普段部活以外のルールでは打たないため、ルールによって必要とされる打ち回しが浮き出てくる事が分かる。逆に言えば、競技ルールに於いて必要な打ち回しも見えてくるというわけである。

 自分は単純に和了るために喰い散らかしていたが、中野は和了る和了らないの天秤が精密で、その局に最適な打ち方を見出だす事に長けているのであろう。

 先程初牌の發を切ったのも、初牌だからこそ誰かが抱えている可能性があるわけで、リーチを掛けた者が持っていたとしても一発が無いのであればそうは高くなるまい。リーチを掛けていない者が持っていれば、オリに回るにしろ鳴いて手を進めるにしろ、門前では無くなる上リーチを蹴るために早和了りになる。

 もちろんリーチに手が入っていれば高くなることもあろうが、その辺りは捨て牌からある程度判断出来る。

 結論としては、中野の打ち回しは和了るためではなく、場を最も適切に回す事を重視しているのであろう。

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