四本場14
東四局オーラス、ドラ二。親は木村。
オーラス前の各スコアは以下の通り。
葉山 二三○○○
中野 一九四○○
沙夜 七八○○
木村 四九八○○
倍満と満貫を和了った木村の断トツである。葉山が跳満直撃でもひっくり返らない点差である。
こうなると沙夜は何も出来ない。余程の事が無い限り鳴いて逆転手を作る事は不可能だろうし、三着の中野をまくるにも満貫ツモでも足りない。
何の事はなく、二着狙いの葉山が五巡でピンフのみを中野から和了り、オーラスは終了した。
ウマを含めたスコアは以下の通り。
葉山 +4
中野 △22
沙夜 △42
木村 +60
収支に換算すると以下の通り。
葉山 +200円
中野 △1100円
沙夜 △2100円
木村 +3000円
更に御祝儀が中野△200円、沙夜△200円、木村+400円である。
「いやぁ、久々に勝てたよ」
「倍満満貫と来れば鉄板だな。木村さん、今日は勝てるぜ」
沙夜と中野はそれぞれの負け分を卓上に差し出した。
木村と葉山は友人らしく勝った負けたで盛り上がっている。中野はそれを尻目に、卓上に出された点棒を確認しボックスに仕舞い込んでいる。
一方沙夜は、素人同然の相手に負けてしまった事がひどく腹立たしかった。自分の鳴き麻雀の早さには自信があったが、牌効率なんざ無視しまくった打ち筋に好いようにやられてしまったのだ。
正しい打ち方をしても勝てないのが麻雀であるが、あまりにも何も出来ていない感覚があった。
「今日は調子が好いみたいだし、次行こうか」
沙夜や中野に勝てたのが嬉しいのか、嬉々とした表情で木村も点棒を拾い、牌を流した。
場替えはせずにそのまま二回戦続行である。出親は木村となった。
東一局、ドラ6。親は木村。
「リーチ」
相変わらず木村は好調の様子で、五巡目にリーチを掛けて来た。
北⑦48一
二か三が枕で、6‐9辺りが待ちであろうか。
「ちょっと待ってくれ葉山さん、一ポンだ」
葉山がツモろうとしたのを制止し、中野が木村のリーチ牌である一をポンした。
(一発消し……?)
沙夜は中野のその鳴きをそう考えた。中野は木村のリーチに対して強めの⑨を切った。
「ツモ、七○○・一三○○だ」
⑤⑥⑦7899中中中(一一一) 6
中ドラ一の安い和了りであるが、わざわざ一を鳴かずとも充分闘えるようにも見える。しかしリーチの本命である6‐9を喰い取っているため、もし木村のリーチが6‐9ならタイムリーな和了りである。
「木村さん何待ちだったんだ?」
「6‐9だったよ、ほら」
二二①②③34578白白白
「って事は中野くんが喰わなきゃ一発ツモだったって事か」
「ギリギリでしたね、ツイてましたよ」
沙夜は点棒を卓上に差し出しながら、ふと思い出した事があった。部活中の中野はほとんど和了らないのである。先制リーチで他家を抑え込み、ツモ和了るといった打ち方はほとんど見ない。それよりも今回の和了りのように誰かのリーチを止めるために器用な和了りを見せる事が多い。
要するに躱し手が得意なようで、自分が和了るためではなく誰かを和了らせないために鳴いているような印象である。
もちろん門前で和了る事もあるし、その辺りを鑑みれば、中野は状況に応じて打っているらしい。




