四本場11
東二局、ドラ九。親は中野。
沙夜は東風戦を打つのは初めてであった。部活での対局中、最終下校時刻が迫ってしまい仕方なく途中で切り上げた事はあったが、試合形式としての東風戦は未経験である。
とはいっても短期決戦の東風戦では打点よりスピードが重視される。よほど配牌とツモに恵まれ、捨て牌の一段目にテンパイしたタンピン三色や混一色に打ち込まない限りは普段の自分の雀風で充分対応型出来る。そう、普段の雀風で打てるのならば、だ。
「チー」
六巡目、親の中野が八を七九でチーした。チャンタ、混一色、あるいは三色だろうか。
中野が北を捨てた後、沙夜は⑦をツモった。
四五五③④⑤⑥345556 ⑦
(三色一向聴……)
沙夜は三四五の三色を狙って五を切った。その時、沙夜の頭の中に既視感が浮かんで来た。
(あ、これ……先に6を切らなきゃいけない手……)
そう、筒子の三面張は好いとして、索子を雀頭ととして固定してしまうと2・5のツモに対応出来ないのである。この間彩葉から教えてもらった、基効率打法の基本的な例である。
次巡、沙夜は2を引いてしまった。これではテンパイにならない。沙夜は仕方なく、三色狙い継続でその2をツモ切った。
「名古センパイ、それはロンだ」
不意に中野が手を倒した。
⑤⑥⑦⑨⑨中中中34(八七九)
「二九○○」
「あっ……」
中野が鳴いていた事をすっかり忘れてしまっていた。しかし、2は巧く打ててさえいれば手の中で活かせていたわけで、それがそのまま当たり牌になってしまった。しかし中野も鳴かなければ2をツモれていたわけである。これは部活の時に見た、他人のツモを押し付けるあの打ち筋と同じである。
「みんな早いなぁ、追い付けないよ」
木村は手牌を開いてみせた。
一一二三三67889發發白
木村はどうやらチャンタ二盃口を狙っていたらしい。しかし捨て牌に④⑤と並んでいるため、普通なら偏張外しのピンフ形に向かうところである。
沙夜は気になって、木村の次のツモをめくってみた。その牌は7であった。入り目としては絶好である。そのまま放っておけば6が9に振り替わってチャンタ二盃口も有り得たかも知れない。さすがにその次のツモをめくる気は起こらず、中野が牌を流し始めたので沙夜も手牌を崩した。
東二局一本場、ドラ⑥。親は連荘で中野。
(中野くんが鳴く度に手が入って和了れなくなってる……こうなったら)
二四七八⑦⑦⑧579白白發
「チー」
四巡目、沙夜はこの手牌からいきなり6を鳴いた。この時点で三色を放棄、となると役牌の後付けしか無くなるだろう。しかも筒子をアタマとするとドラの受けも無くなってしまう。沙夜は9を切った。
「おっ、沙夜ちゃんナイスチーだね」
そんな事を言いながら木村はドラの⑥を切った。よほど好い牌を流してしまったらしい。




