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四本場7

 南三局、ドラ白。親は中野。

「ポン」

 ニ巡目にして、中野が夕貴から9を鳴いた。捨てた牌は8である。

(いきなり9ポン?8を切ったという事は混一色は考えにくい……対々和か役牌……ドラの白は切れない)

 七海は仕方ないといった様子で①を切った。

 早々に9を仕掛けた中野であったが、その後は動きもなく淡々と局が進んで行った。ドラの白は最後まで出ることなく、海底牌の北を七海がツモ切って流局となった。

「テンパイ」

「ノーテン……」

「ノーテン」

「ノーテン」

 唯一テンパイを宣言した中野の手牌は以下の形。


ニ三四⑨⑨⑨456白(999)


(役無し……ドラを無理矢理押さえ込んで流局狙い……あの鳴き、本当に和了る気があったようには思えない)

 彩葉は流局した局の状況を分析した。チャンタでも対々和でもないあの9鳴きはどう考えても他家の手を縛るために鳴いたとしか思えなかった。

 ちなみにインターハイルールは和了り連荘である。テンパイ連荘だと勝負が長引いてしまうため、それを潤滑にするための措置である。もちろん麻雀部でもそれを採用している。

(このノーテン罰符で中野くんが僅差の二着……それは好いとして、先ほどから感じている違和感はやはり気のせいではない。これを狙ってやっている?まさか……。麻雀はそういう風に出来ていないんです)

 南二局辺りから、彩葉は気付いた事があった。偶然に過ぎないと言われればそれまでなのだが、オーラスも同じ状況が現れればそう信じざるを得ない。彩葉はそれを、認めたくない心証であった。

 南四局オーラス、ドラ三。親は沙夜。

 各人の点数状況は以下の通り。


七海 ニ八○○○点

夕貴 ニ四六○○点

中野 三ニ○○○点

沙夜 三五四○○点


 暫定的トップは沙夜であるが、ラスの夕貴でも満貫をツモれば逆転出来る僅差である。

「中ポン」

 三巡目、中野は夕貴が捨てた中を鳴いた。中野はニ○○○点のツモでも沙夜と同点になり、沙夜の上家になるため点数は同じでも一着のウマがもらえる。中ドラ一の安手で充分である。

 中野が鳴いた後北を捨て、沙夜はツモった。


四五六七⑥⑦⑧⑧5688發 ⑤


 手牌は絶好であるが、沙夜はここで手を止めた。単純に考えて切るなら發である。

(名古さんが手を止めた……普通に考えるなら發を切って目一杯に受けてポンテンチーテン狙いでしょうが……)

 發は場に初牌で、中野の捨て牌の字牌の出の遅さから發は抱えられている気配があった。

(私なら、發は一旦押さえて、⑧を切りますね。ドラツモ狙いで萬子を伸ばして、發はギリギリまで抱えるでしょう)

 しかし、沙夜の選択は彩葉と異なり、初牌の發であった。

「あっ、發ポン」

 鳴いたのは中野ではなく夕貴であった。夕貴は白を切った。

(やはり發は鳴かれましたか。でも名古さんは一向聴だし、後は早さの勝負ですね。しかし……やはりこの違和感は偶然とは思えない)

 彩葉はその成り行きを見守るため先ほどより身を乗り出した。

 迎えた七巡目、沙夜は⑧をツモった。


四五六七⑤⑥⑦⑧⑧5688 ⑧


 沙夜は四を切り、タンヤオと、高め三色の黙テンに取った。

(中野くんが平坂さんの中を鳴き、平坂さんが名古さんの發を鳴いているのだから、名古さんがツモっているのは元々及川さんのツモ……ということは)

「……!」

 沙夜はツモった牌を見て驚いた。ツモったのはドラの三であった。萬子を伸ばしていれば手の内で活かせた牌であった。

 しかし止まらない。沙夜は何者かに操られるかのように、そのドラを河に捨てた。

「ロン!」

 気持ち好く発声したのは、沙夜の下家の七海であった。


一ニ三四五七八九①②③西西


「安めですが逆転なので和了らせてもらいます。ピンフドラドラ、三九○○は四ニ○○です」

(ふう、名古さんは、門前での打ち方の勉強が必要ですね)

 彩葉は椅子の背もたれを軋ませながら、黒タイツを履いた脚を組み替えた。

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