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四本場5

 そんな事をしていた時、部室のドアの開く音がし、七海と中野が姿を現した。どうやら教室から一緒に到着したらしい。

「おっと、お邪魔だったかな」

「やあやあ後輩諸君、気にしないで入ってくれたまえ」

「遅れてすみません、さあ打ちましょう」

 部活を始めるため沙夜は夕貴から離れた。彩葉は風牌四種と白を一枚ずつかき回し、卓上に並べた。

「ではどうぞ」

 五人いるため、その五枚の牌をそれぞれに引いて白を引いた人間が抜ける事になっている。次の回で、前回二着になった人間と交代するのである。

 結果彩葉が抜け番となった。そのまま場所決めを行い、結果起家が七海、あとは順に夕貴、中野、沙夜となった。

「よろしくお願いしまーす」

 彩葉はいつも座るアームチェアに腰掛け、中野と沙夜の手牌が見える位置に陣取った。彩葉はどちらかというと観戦している方が好きなようで、そうやって他人の癖や短所を把握しているらしい。

 東一局、ドラ①。親は七海。

 彩葉から見える沙夜の配牌は以下の形。


二二四六①③④⑥245南發


 三色、タンピンの見える好配牌である。第一ツモは發で、沙夜は南を切り出した。

 三巡目に夕貴が發を切った。沙夜は悩むことなくそれを鳴いた。

「ポン……」


二二四六①③④⑥245(發發發)


 この手牌から何を切るかである。受け入れ重視なら二を切って両嵌残し、三色を追うなら六か⑥、または5切りであろう。

 しかし沙夜は2を切った。

(三色追わず……悪い形の残る5切りは確かにこの段階では考えにくいですけど、それにしても⑥辺りを切るのが妥当……相変わらず、名古さんは速攻ですね)

 逃げ切りの体勢になれば沙夜の速攻も効果的なのだが、へこんでいる状態からの追撃が不得手になる事がある。

 親番が残っていれば闘えるのだが、大差をつけられたオーラスで散家であれば成す術なく負けてしまう。

 門前役の魅力を知ればオールラウンダーになれるだろう。

 一方中野は、三巡目で以下の手牌である。


三四五六八③③⑤22東東白


 沙夜が捨てた2を鳴く事が可能である。2を鳴いておいて白切り、ツモ次第でタンヤオへ伸ばすか東の後付けかを選ぶ事が出来る。

 中野は鳴かず、⑦をツモり、白を切った。

(中野くんはタンピン狙い……東は二鳴きするか安牌に使うのでしょう)

 中野の打ち筋はとりあえず基本に忠実であるが、たまに理解しがたい打牌を見せる事がある。突飛もない和了りを見せたり、結局他人に和了られたりと結果は様々であるが、とりあえずは何らかの意図があってその様な打ち方をしているらしい。

 そう、中野の打ち筋は彩葉から見ても違和感の塊なのである。

 九巡目、沙夜がツモった。


二二四六①②③345(發發發)五


「五○○・一○○○……」

「うーん、メンホン一向聴だったのになぁ」

 夕貴は染めていたらしく、悔しげな表情で手牌を伏せた。相手が高い手を狙っていると分かれば安い手で和了るのも当然であるが、終始これでは麻雀としての面白味に欠けるのではないか。

 和了ってなんぼの麻雀ではあるが、単なる絵合わせでないのもまた麻雀なのである。

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