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四本場3

 沙夜が担当する閉店作業は、表に出してある電光看板を中に仕舞い、シャッターを下ろし、ショーケースの中にあるデリカバットを洗う作業である。

 沙夜は慣れた手付きでそれらを手早く終わらせ、店長に挨拶するためにロッカールームへと向かった。今日は特注が三件入っていたので店長も忙しかったであろう。店頭販売の方もほとんど売り切れたので売り上げとしては中々のものである。ちなみに特注とは、出来合いの商品ではなく、客からの注文で引き受ける特別注文のことである。

 誕生日のケーキにこのようなデコレーションをして欲しい、あるいは一風変わった形のケーキが欲しい、カットケーキの大量注文など、普段店頭に並べている商品にはないものを作るのである。手間は掛かるが、もちろんその分単価は上がる。

 ロッカールームの扉を開けようとした際、中から店長と女将さんの声が、小さいながらも聴こえてきた。

「やっぱりもう持たんそうだ。今日も息子さんが来てたけど、後二年くらいが限界らしい」

「そうですか……仕方ありませんね。そろそろあの事を話されてみては?」

「そうだな……」

 沙夜はドアノブを掴もうとした体勢のまま、聞く気はなかったもののつい聞き入ってしまった。

 立ち聞きは好くないが、聞こえてしまったものは仕方ない。沙夜はなるべく素知らぬ振りをしながらドアを開けた。

「お疲れ様……」

「やあ沙夜ちゃん、店の方は終わった?」

「うん……」

 沙夜が聞いていたとは露知らず、店長はいつものように人の好い笑顔を向けて労ってくれる。その笑顔に、沙夜は何となく罪悪感を抱いた。

「沙夜ちゃんは麻雀部なんだよね?」

「うん……そうだよ……?」

 店長が突飛な質問をしてくるので、沙夜は疑問符を浮かべながら返事をした。

「実は私も麻雀をやりたいと思ってるんだ。好ければ今度教えてくれないかな」

「そうなんだ……。うん……好いよ……」

「好かった。今度シフトの入ってる日曜日、ちょっと早めに店を閉めるからその後でどうかな」

「分かった……」

「すまないね、付き合ってくれた時間はちゃんと時給に換算してあげるから」

「好かったですねぇあなた」

 店長と女将さんは互いに微笑んだ。そんなに麻雀を教えてもらえる事が嬉しいのだろうか?教えるのは構わないのだが、情報インフレの現代、調べようと思えばいくらでも調べられるだろうに。

 しかし自分の特技とも言える麻雀を教えるのだから、普段は感情の起伏が少ない沙夜も、内心では沸き上がる自尊心を抑えるのに一苦労なのであった。

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