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三本場15

 二回戦を終えてのスコアは以下の通り。


宮田 二五九○○

高橋 一八七○○

夕貴 四六八○○

中野  八六○○


 チップは宮田が▲1枚、高橋が▲2枚、夕貴が+4枚、中野が▲1枚である。

 ワンスリーのウマを加算した最終的な収支は以下の通り。


宮田 + 100円

高橋 ▲3100円

夕貴 +8600円

中野 ▲5600円


 一回戦の夕貴は9700円勝ち、これから場代を支払っているため8700円勝ち、二回戦は8600円から場代を支払って7600円勝ちである。それらを合計すると16300円勝ちとなる。

「センパイ強いな」

「まあその、ツいてたんだよ」

 夕貴は照れながらも満更ではない様子である。経過はどうあれ勝ちは勝ちである。

「あらいけない、もうこんな時間……ごめんなさい、今日はもう帰るわね」

 高橋は手首に巻いた時計を見るや否や突然立ち上がった。どうやら急ぐ用があるらしい。待ち客もいないし、どうやらここでお開きとなりそうである。

「センパイ、俺たちも終わるか」

「うん……そうだね」

 結局夕貴も中野の提案には賛成のようで、それぞれに荷物を持って席を立った。


「……っあー!緊張したぁ!」

 外に出るなり、夕貴は背伸びしながら声をあげた。雀荘デビューを勝ちで飾ったらとはいえ、やはりその重圧は慣れない人間にとってはかなりの負担であったようだ。

「でも勝ったんだから好いじゃないか。部長とか及川がいたら、センパイ中々勝てないからな」

「いやー、後輩クン、助けてくれたんでしょ?」

 中野は夕貴のその言葉に多少面喰らったようで、驚いたような表情を一瞬夕貴に向けたが、すぐにいつもの仏頂面に戻った。

「勝ちは勝ちさ。センパイ、競技ルールよりもこっちの方が向いてるんじゃないか?」

「うん……いつも七海ちゃんに負けちゃうけど、このルールなら勝てるかも」

 結果的に言うと、夕貴の目一杯に受ける打ち筋もこのルールでは活きてくるのである。赤ドラや裏ドラを狙い、もちろん裏目を引くこともあるが、その分和了ったときの破壊力で相殺できる。

「っと、これ、ある内に返しとくね」

 夕貴は言いながら、先ほどボードの修理代に借りた金額を差し出した。

「といっても後輩クンのお金も入ってるけど」

「はい確かに」

 最終的に夕貴は、+300円の収入であった。

 何となく、二人は並んで歩き出した。

「麻雀ってさ、奥が深いなーって改めて思ったよ。まだ数ヵ月の自分が言うのも何だけどさ。全国優勝の七海ちゃんとか、インターハイ目指してる部長はスゴいよ。でもさ……」

 夕貴は空を仰いだ。

「後輩クンのは、二人とはまた違う感じの麻雀だよね。勝つだけが目的じゃない、って感じがする」

 夕貴がしゃべるのを黙って聞いている中野だが、夕貴がしゃべり終えた後、しばらくして口を開いた。

「麻雀って一言に言っても色々さ。勝っちゃいけない事もあるんだよ」

 夕貴は視線を中野に向けた。

「え、それって」

 どういう、と続けようとしたが、不意に中野が脚を止めたため、夕貴も脚を止めた。

「いや、何でもない。センパイはもっと強くなれるよ。周りも強い人間ばかりだし、何よりセンパイには情熱がある」

「そーかなー、まあそう言ってもらえると嬉しいよね」

 中野は再び歩き出した。

 中野は、駅方面に向かう夕貴とは別の方向に用があるらしく、岐路で二人は別れの挨拶を交わしていた。

「今日はありがとう、お陰でボードも修理できたし。楽しかった」

「ボードは時間があるときにでも取りに行けば好いさ。直ったら今度こそキックフリップのベンチ越え見せてくれよ」

「うん、今度こそ決めるからね」

 夕貴は手を振りながら、中野と別れ、駅へと向かった。今日は色んなことを経験した。何となく一皮剥けたような気がする。次の部活のときが楽しみである。

 両腕を左右に目一杯広げて背伸びをすると、夕貴は足取り軽く、人の多い商店街の中を駅へと向かうのであった。

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