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三本場11

一回戦が終了して、ウマを加算した成績は以下の通り。


高橋 +2

夕貴 +62

村上 △21

宮田 △43


 レートは点ピンなので、夕貴は+六千二百円の収支である。更にチップが+七枚、一枚五百円であるため、更に+三千五百円上乗せされる。正味九千七百円の勝ちである。

(うわわ、スゴい!たった東風戦一回だけなのにこんなに……)

 卓上に差し出された勝ち分を見て、夕貴はいささか不安にさいなまれた。

(何だか、今更だけど不安になってきたなぁ……)

 それでなくとも十八歳未満立ち入り禁止の場所にいるのだから後ろめたさは当然ある。麻雀部として雀荘に興味が無いわけではないが、はっきり言って中野が貸してくれたボードのパーツ代を何とか捻出しようとする物欲が勝っていた感があったのは否めない。中野が場馴れしていることが唯一の救いである。

「好かったなセンパイ、大勝ちだな」

「ま、まあ何とかね……」

 あくまで平静さを装う夕貴であるが、心臓が298BPM程の速さで脈打っているのは内緒である。

 夕貴が大きく深呼吸し、一息ついたところで、夕貴の下家に座る村上の携帯が突然鳴り出した。

「はい……えっ、本当ですか?はい、はい……分かりました、すぐに戻りますので」

 村上は会話を終わらせると、携帯を背広の内ポケットにしまいながら頭を下げた。

「すいません、急遽会社に行かなくてはならなくなりまして……これで抜けさせてもらいます」

 村上はバタバタしながらカバンを手に取り、飲物代らしき現金をレナに支払い、店を後にしてしまった。

「あらあら、ワン欠けね。中野くん入る?」

 村上を見送ったレナが中野に入るよう促してくる。中野は頭の端を指先で掻くと、仕方ないと言った様子で立ち上がった。

「まあ打てる人間が四人いて打たないのも間抜けだしな。入るよ」

 村上の抜けた席に、見学していた中野が代わりに腰を下ろした。位置的には夕貴の下家にあたる。

「付け馬が金を貸した相手と一緒に麻雀するなんざ聞いたことないのう」

 宮田はカラカラと笑いながらそう言った。確かに、付け馬が負ければ金を払うことになるのだから、下手すれば未収の大損である。中野は椅子を引いて卓に着いた。

「先輩は敬わないとバチが当たりますからね」


 二回戦目、前回トップだった夕貴がサイを振り、起家は宮田になった。夕貴は西家スタートである。

(後輩くんとは部活で打ってるけど……イマイチつかみどころがない打ち方なんだよね)

 夕貴自身もそれほど熟達した打ち手ではないが、部長の彩葉やインタージュニアチャンピオンの七海と中野を比べると中野はいまいちパッとしない印象である。

 ただやる気がないのかも知れないが、こうして雀荘で打っているところを見ると顔は広そうだし、麻雀を打ちたくない、というわけではないらしい。

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