三本場10
東四局オーラス、ドラ3。親は宮田。
点数状況は以下の通り。
高橋 二五二○○
夕貴 三三四○○
村上 二一七○○
宮田 一九七○○
夕貴は暫定トップてあるが、二着目とは七八○○点差、ラスの宮田でも親満をツモれば逆転してしまう。つまりはスピード勝負、他家が手を作る前に何でも好いから和了ることである。
「センパイ、このまま行けば勝ちだな」
「うん、いつも七海ちゃんに負けてるけど、今日は勝つよ」
夕貴は八重歯を見せながら微笑み、右手で小さくガッツポーズをした。
そんな夕貴の配牌は以下の形。
一二二五六八九②③③⑨南發
あまり好い配牌とは言えないがツモが好ければ何とかなりそうだ。夕貴は⑨をツモり、南を切った。
そして八巡目、一向聴になった。
一二二五六七八九②③③⑨⑨ 四
一通の一向聴である。問題はこの一向聴で何を切るかである。二を切ると、三①③④⑨の受け入れである。③を切ると二三①④⑨である。牌の数は共に同じ五種十六枚である。
(テンパイ重視なら③切りだろうけど……そんなの私らしくないよなぁ)
夕貴は少しだけ考えていたが、やがて二を切った。
(ここは確定一通でしょ!)
直後、夕貴の意志を後押しするかのように③が手に入り、すかさずリーチを掛けた。
「リーチ!」
「む、トップ目がリーチか……親としては踏ん張りたいところじゃがな」
宮田は渋い表情を浮かべ、仕方ないといった様子で右端から東を切り出した。恐らく対子持ちの東を切ったのだろう。
東を切った後の宮田の手牌は以下の形。
三三三四五六六⑤⑦⑧3東 ⑥
普通なら六を切って東ポンテンか、筒子、またはドラのくっつきテンパイの構えに取るだろう。しかし五枚使いの三‐六はいかにも切りにくいし、片筋でも赤⑤や遠い親戚の⑧も切れまい。東を落として何とかタンヤオに変化させたいところである。
灰皿を交換しているレナがその対局の様子を見ていた。
(三は通らないけど六は通った。お嬢さんの当たり牌は三枚親が持ってるけど、好形の親が回ったってことは……)
直後、宮田は再び東をツモってしまった。
(ぬう、押していればこの東でテンパイしておったわい!)
後悔先に立たず、宮田は空切りで東を切った。
「やった、ツモ!」
夕貴はラス牌の三を見事に引き当てた。
「裏ドラが……一枚!三○○○・六○○○の二枚オール!」
怒涛の二連続ハネ満、夕貴の圧勝であった。




