三本場9
東三局、ドラ⑥。親は村上。
「①ポンです」
ニ巡目に、親の村上が①をポンした。捨て牌から見るとバカホンのように見える。
更に四巡目、村上は夕貴の捨てた②を③④でチーし、二枚目の發を切り出して来た。テンパイか、一向聴はあると見るべきであろう。
夕貴は七巡目にテンパイした。
九⑤⑤⑥⑥⑦⑦⑧99西西西 九
あわよくば染めようかとも思っていたが、⑥がドラなのでそこまで欲張らずとも好い手である。
(七対子か一盃口……ドラが⑥だから七対子ドラニも一盃口ドラニも点数は同じだっけ……)
西を切るか⑧を切るかであるが、下家の親が筒子屋さんであるため、普通ならばドラ側よりは安牌の可能性が高い西を切って⑧待ちにするだろう。
しかし逆に言うと筒子は持たれている可能性もある。親が見え見えの混一色をしているのならば他家からの出も期待出来ない。
(うーん……ちょっとくらい勝負しなきゃね)
夕貴は⑧を手に取った。
「リーチ!」
夕貴のそんな様子を中野は何も言わずに眺めている。
「強いわねその牌……高い手、かしら?」
高橋が眉をひそめるが親は反応しない。どうやら通ったようである。
そして一周し、夕貴のツモ。
「ん……来たっ!」
夕貴は声高らかにツモ牌の9を手牌の横に置いた。
「裏はないけど、リーチ一発ツモ、一盃口ドラドラで三○○○・六○○○!」
「う、親カブリですか……これはキツイ」
筒子で染めていた村上の手はこうであった。
⑥⑦⑦⑧⑧白白(②③④)(①①①)
⑧は二枚使い、夕貴が大事をとって七対子に受けていれば和了れる可能性は低かったであろう。
「バッタの一発ツモか。イケメンだなセンパイ」
「アハハハ、好く分かんない誉め言葉だけどありがとう」
「あら、やっぱり男の子?」
「私は女ですって!」
上家の高橋が素朴な疑問を、中野が後ろから賛辞を送って来る。高橋の疑問はともかく確かに初和了りを取れて夕貴もようやく安心出来た。あと残すは東四局、守備にイマイチ自信のない自分であるが、何とかこの点数を守り切りたいところである。
夕貴は点棒とチップを受け取り、牌を流した。




