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三本場5

 FAKIESを後にした二人は、駅前商店街の目抜き通りにある飲食店の多い一角を訪れていた。ファストフード店、ラーメン屋蕎麦屋がある中から二人が選んだ店はとんかつ屋『かつまさ』であった。

「あの人普段は仕事熱心なんだけど、寝てるところを起こされたら不機嫌なんだよ。腕前は確かだし、ボードは直ってくるよ」

「それは構わないんだけどさ……う~ん」

 中野はヒレカツ定食を、夕貴はロースカツ定食をそれぞれ頼み、ゴマを刻んだ濃厚なタレに浸してその食感を楽しんでいた。ランチタイムに定食を頼んだ客はキャベツとご飯が食べ放題である。好く見れば周りはサラリーマンばかりである。

「お金返すの、ホントに遅くなるかもだよ」

「気にしないで好いよ、ゆっくり待つさ」

 中野は付け合わせのトマトを口に放り込みながらそう言った。高校生のクセにやたらと金回りが好いが、いつか七海が話していた通り、恐らくは雀荘通いで儲けているに違いない。

「でもあんなところにボードを直してくれる店があるなんて知らなかったな」

「まあこの辺りは庭みたいなモンだよ。横丁の店なら大概分かる」

「ふうん、やっぱり雀荘なんかも好く行くの?」

「及川だな」

「あんなに打つのが巧かったらそうだろうなって思うよ」

 夕貴は店員が持ってきた何杯目か分からないご飯に箸を付けた。本当に空腹だったらしい。

「センパイも麻雀部だろ?」

「ダメダメ、あたしは部長と同じ中学でさ、誘われて始めたけどまだ二、三ヶ月だもん。いっつも七海ちゃんに負けてるよ」

「センパイ、どう見ても体育会系だもんな」

「それ沙夜にも言われたー」

「昔は何やってたんだ?」

 夕貴は赤だしの味噌汁をちょっとすすった。

「中学までバスケやってたんだけどさ、まあちょっとケガしちゃって。高一の時部活してなかったら部長から声掛けられた」

「そんな感じだな、背も高いし」

「あ~あ、もう少し麻雀も打てるようになりたいな~」

 夕貴はようやく満足したのか、味噌汁を平らげて箸を置いた。

「打ちに行くか?」

「え?」

「この辺りは雀荘多いからな」

「でもあたし、知ってるだろうけどお金ない」

「だろうな、センパイが負けたらとりあえず立て替えとく。一万六千円にそれを足しとく、ってのでどうだ?勝てばボードの修理代はその分引かれる……」

 そんなことを言っているが、中野はもしかして自分をカモにするつもりではないのだろうか?

「ま、俺は打たずに見とくから、後はセンパイの頑張り次第だな」

 中野が打たないのなら確かにその心配はない。勝てば借金を減らせるのだから決して悪い話ではない。あまりに大負けすれば悲惨な事になるが、分割で返せるのなら一万六千円も二万円も大して変わらない。

「……分かった、それなら打とうかな」

「そう来なくちゃな。早速行こう」

 二人はかつ勝を後にした。ちなみに中野のおごりである。

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