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一本場4

 何とも気持ちの悪い一文である。つまりは現役JKである自分は立ち入り禁止ということであり、その禁を破ろうものなら法的制裁が下らないとも限らないのだ。

 しかしながら七海はこの店に入ることの出来る確信があった。それは先ほどクレープ屋の前で目撃したことと関係がある。

 七海がドアノブを握ろうとしたその時、不意にドアノブが音を立てた。 

「おっ、いらっしゃい……ずいぶん若いお客さんだな。それとも、上の階と間違えたかな?」

 ドアノブが回り、ドアを開いて出てきたのはスキンヘッドのやたらとガタイの好い中年の男性であった。小柄な七海から見るとまるで熊のような大きさだ。

「お嬢ちゃん、お客さん?」

 言動からしてこのスキンヘッドの男性はこの店の店員のようである。たまたま何かの用で外に出てきたらしい。

「いえ、人を捜してて……ここに学生服の人が来ませんでしたか?」

 七海は努めて冷静に言った。

「中野くんのことかい?今中で打ってるよ」

 七海は開かれたドアから、店内を見た。しかし玄関が見えるだけで中の様子は分からない。しかしお目当ての人物はやはりここにいるのだ。七海は意を決した。

「私も打たせて下さい」

「お嬢ちゃんが?……まあ、お客さんなら無下に断れないよねぇ」

 スキンヘッドは訝しげな顔を見せたが、七海を中に案内した。

「今満卓だからちょっと待っててもらわないといけないね。まあ、飲み物はサービスするからゆっくりして行くと好いさ」

 その見た目に相反してスキンヘッドは好い人柄らしい。七海は安心して、スキンヘッドに案内され店内へと足を踏み入れた。


 店内に入ると、まずタバコの臭いが鼻を突いた。身近に喫煙者のいない七海にとっては多少の苦になった。しかしそれを堪え、玄関から更に中へと入ると、リビングらしき部屋に自動卓が三台置かれていた。その内二つの卓に人が着いている。

 七海が捜していたその人物は、案の定その内の一つに座っていた。

「中野くん、お友達だってさ」

 スキンヘッドが話し掛けると、ワイシャツ姿のその人物が七海の方を肩越しに振り向いた。

「友達?」

 振り向いたその人物とは、七海と同じクラスの、中野雄一なかのゆういちであった。

「あー……同じクラスの……確か、及川だっけ。マスター、その子麻雀部だから相当打てるよ、店の損になるぜ」

 ジョークのつもりか、雄一はそんなことを言って一人笑った。そしてまた卓の方を向き直ると再び打ち出した。

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