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三本場1

 いつもの駅前商店街の目抜通りから脇に入った横丁の一角、さほど広くはないがきちんと整備の行き届いた公園があった。

 公園といっても遊具らしい遊具はほとんどなく、直径三メートル程の噴水が中央にあり、そのごく周辺を煉瓦敷にしてあり、後はコンクリートで整地され、所々にベンチと花の咲いていないプランターが置かれている。

 清潔感は非常に高く、ゴミや放置自転車の類いは一切無く、器物が破壊されているということも無く一見して悪い印象はない。

 しかし、やはり横丁の中というだけあって人影はほとんどなかった。時折、外回りらしいスーツ姿の営業マン、日向ぼっこしているらしいご老人、豪快にあくびをする野良猫がいるくらいで、基本的には閑散としていた。

 しかし、だからこそその公園を利用せんとする人物がいた。

「せーの……ほっ!」

 土曜日の真っ昼間、その公園に於いて軽快に動く人影があった。路面に何かをこすり付けているような音を発しながらその人影は縦横無尽に動き回っている。

「よし完璧っ!」

 その人影はひとしきり動き回った後、腕に板を抱えてベンチに腰を下ろした。

「うーん、大体出来てると思うんだけどなぁ……もうちょっとデッキのツキが好ければなぁ」

 独り言を口にしながら板の裏側を眺めているのは、麻雀部二年の平沢夕貴であった。ショートのウルフカット、少々野暮ったい印象を受けるカーキ色のカーゴパンツ、アメカジのTシャツ、腰に巻かれた前ファスナーのパーカー、スポーティーなリストバンド……一見して男性のような風貌だが、夕貴はピチピチのJKである。

 そんな夕貴が手に持っているものは、スケートボード、いわゆるスケボーであった。夕貴は普段人のいないこの公園でスケボーの練習に勤しんでいたという訳である。

 麻雀部女子部員の中では最長身であり、それなりに背の高い男子の中野とも比肩しうる身長である。加えて趣味がボーイッシュであるため、たまに男性に間違われることもあるほどだ。

 そんな恵まれた体格もあって夕貴は身体を動かすことにかけては自信があった。体育でも同年代ならば水準以上の成績を出せるし、バスケットでは唯一同学年女子でダンクを決めた経験がある。

 そんな夕貴の現在の趣味が、このスケボーであった。

 ひとけの無いこの公園ならば練習が出来る。もちろん小さい子供や老人がくれば練習は中断して立ち去るまで待つ。他人に迷惑を掛けないのは大前提であり、夕貴もそのことはきちんと肝に銘じている。

 今日はポカポカ陽気の快晴であり、こういう日は人出があるかと思われたが、いざ来てみれば普段と変わらない閑散とした様子であった。

 というわけで、これ幸いにと、夕貴は愛用のスケボーを転がしている次第である。

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