二本場7
東三局、ドラ五。親は彩葉。
「リーチしましょう」
四巡目に紳士風が①を切ってリーチを掛けてきた。老頭牌ばかりで、待ちを読むのは厳しい。
まだ字牌の処理が終わっていなかった彩葉はこれ幸いと字牌を切り出した。字牌がなくなる前に安牌が増えてくれればラッキーである。
「おっと、ツモですな」
一一一①②②③③④5699 7
「リーヅモ……裏ナシですな」
(①切りリーチ……?④を切れば一盃口なのに)
彩葉はその和了りに違和感を感じた。確かに普通なら④を切って一盃口をつけるはずである。
紳士風は慣れた手付きでアリスをめくった。
「おっと、まず④……次が6、三枚目は……ナシですな。千円オールです」
和了り点は五○○・一○○○だがアリスの収入の方が大きい。なるほどなるべく多くの種類の牌を持っておいた方がアリスを乗せる上では有利になる。だからこそ一盃口を捨てて①でリーチをしたということである。
(ピンのワンツーならトップをとっても五千円……確かにアリスを狙った方が遥かに効率が好い。手作りだけでは勝てないということですね)
紳士風の妙な打ち方も納得が行く。親カブリを喰ったが点数ではまだ余裕がある。
(アリスの比重が大きいとはいえまずは和了らなくては話にならないのも事実。それに中野くんとのサシウマは点数での勝負ですから、あくまでアリスは二次的なもの、自分のペースを乱してはいけない……)
彩葉は高そうな財布からアリス分の千円を、紳士風に差し出した。彩葉の親流れで、オーラスとなった。
東四局オーラス、ドラは發。
現在四人の点棒状況は以下の通り。
老人 一九五○○
紳士風 二三○○○
彩葉 三七○○○
中野 二一五○○
二着の紳士風を一四〇〇〇点離してのトップである。満貫直撃されても二着である。ここはスピード勝負、一〇〇〇点の手で好い。
彩葉の配牌は以下の形。
七七①③④⑦2334發發中
ドラの対子はともかく、軽い手である。發を鳴ければラッキーだが、それで警戒されるよりは両面の多さを活かしてツモ狙いが理想的だ。
(それにしても中野くんは音沙汰ナシですね……また不調なのでしょうか)
それならばこちらは好都合である。このまま押し切ってしまえば好い。
彩葉は1をツモり、①を切った。
そして九巡目、彩葉テンパイ。
七七八③④⑤⑦⑧234發發 七
八切りで⑥‐⑨待ちである。リーチを掛けなければ出和了り不能であるが、ドラがまだ場に出ておらず、全体的に三元牌の出が遅い。となると發はまだ山にいる可能性が高い。リーチを掛けてその後發をツモり、七対子などに打ち込むのは避けたいところである。ここはダマテンであろう。彩葉は八を切った。
その彩葉が切った八を、中野はじっと見詰めていた。見詰めていたといっても時間にしてみれば二秒程であるが、鳴けない手牌であればそんなに長くは見詰めないはずである。
結局中野は鳴かずツモった。
そして中野は初牌の發を切り出した。彩葉は一瞬悩んだが、發を鳴けば役アリテンパイになる。彩葉は發を鳴いた。
「ポンです」
發を鳴き、七を切った。待ちは変わらない。
「ツモ、二○○○・四○○○で終了です」
その直後に⑥を引き、彩葉は見事にトップを飾った。




