七本場26
「さあ皆さん、早速打ちましょう!」
夕貴が何ちゅうか町中華を堪能した翌日の放課後、麻雀部にて集合した面々の中にあって彩葉はやる気に満ちているようであった。地区予選を近日に控えているのだから当然と言えば当然であるが。
やけに高い彩葉のテンションの理由を何となく理解している夕貴に取って、麻雀以外の誘いを口にする事はどうにもはばかられた。
ミスター助け船こと中野の方をちらりと一瞥した夕貴であったが、中野も彩葉のテンションを察してか、夕貴の視線に対して肩をすくめただけであった。
いつものように白抜きで抜け番を決め、彩葉が抜け番となり、夕貴が起家、沙夜、中野、七海の順となった。
東一局、ドラ3。親は夕貴。
彩葉は実際に打つよりも後ろ見をしている方が好きだと以前から口にしていた。麻雀もある程度のレベルに到達すると、他人の打ち筋を見てその思考を推量する事が出来るが、彩葉はこれが好きなのだと言う。
今回彩葉が陣取ったのは、夕貴と七海の手が覗ける位置であった。
(及川さんはともかく……平坂さんの実力は今一歩ですからね。しかし地力は好い物を持っている……彼女がもう少し腕前を上げてくれればチーム全体のレベルの底上げになります)
自身がどこからか調達して来たアームチェアに腰掛け、彩葉は二人の手を覗き込んだ。




