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七本場22

 やがて厨房から油の跳ねる音が聴こえ、調味料の焼ける薫りと共に鉄杓が中華鍋を撞く軽快な音が店内に響き始めた。

「あーお腹空いたぁ……ホント、ライブすっごく楽しかった」

「先輩は元々バスケやってたんだし、今もストリートやってるんだから人前には強いんじゃ無いのか?」

「まあねー、人前だからって緊張する程じゃ無いね」

 夕貴は歯を見せながらイシシと笑って見せた。

「でもやっぱり音楽はねー。私譜面なんて丸っきり分かんないよ。譜面見たら曲が分かるなんて多分人間じゃ無いよ」

「まあ気持ちは分かるけどな……でも、俺だって完璧に譜面を読める訳じゃ無い」

「え?」

 夕貴は中野のカミングアウトに思わず顔を上げた。

「まあ読み方は一応知ってるけど、コピーバンドならともかく基本的にオリジナルで曲を作ってる所に参加する事が多いんだけど、そう言うバンドでも別に楽譜を興してる訳じゃ無い」

「じゃあどうやって?」

「んー、ちょっと言葉で伝えるのは難しいな……全員がそこそこ基本を押さえていれば後は阿吽の呼吸で曲が形になって来る。で、練習して行く内に煮詰まって来るんだな」

「へー、でもそっちの方が難しそう」

「まあ、音楽ってのは必ずしも譜面の向こう側にある訳じゃ無い」

 夕貴はショッキングであった。『我が家路』を歌う為にあれほど譜面とにらめっこしたのに、実は譜面を使わずに音楽を形作る輩がいたとは。

「だから必ずしも難しい音楽理論とか目の回るような楽譜は必要じゃ無いのさ」

「……私にも出来るかな?」

「出来るさ」

 CTOの中野がそう言うのであれば自分でも出来そうな気がして来るから不思議である。夕貴はテーブルの上にぴったりと揃えた両肘を突いて、てのひらで顎を支えて中野の顔を上目遣いに見上げた。

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