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七本場18

 普段麻雀を打っている所しか見ない中野をこんな気の利いた場所で観るのは新鮮である。中野はどちらというと地味な印象で、ライブハウスと言う華やかなイメージとは程遠い。

 しかし実際にこうやって演奏している訳であって、中野は地味ながらも非凡であると言う事を夕貴はこれまでの付き合いから何となく知っている訳で、その辺りを鑑みればさほど不自然では無いのかも知れない。

 ボーカルの女性がMCを始めている。フロアもそれに合わせて盛り上がっているようで、そのバンドの人気が窺えた。

「じゃあ一曲目行くよ!『現在進行系少女(I・N・G girl)』!」

 ドラムのカウントから曲がスタートした。これまでのバンドは何となく聴いているだけだったが、知り合いが参加しているとなると注目せざるを得ない。

 楽器と言う物は何故あんなにも複雑かつ高速な指先の動きを強要するのか。ギターにしろベースにしろチマチマと目にも止まらぬ速さでしかも正確さを求められる動きをしなければならない。それらのプリミティブが合わさって曲と言う一つの作品を作り上げているのである。

 絵画や文筆等と違い、音楽は演奏技術そのものを観覧する楽しさもある。

 これまで曲は聴くものだと決め付けていた夕貴だが──この空気はバスケットの試合にも似た空気がある──と、生粋の体育会系である夕貴は肌で感じ取っていた。

「はい!じゃあ次の曲で最後!その前にメンバー紹介しとくね!」

 ボーカルの女性が温まってきたフロアに鞭打つように高いテンションを向ける。

「リードギターのトール!サイドギターのミーシャ!ベースのチューヤン!ドラムはバイソン!んでボーカルは私、ルーミンでした!では最後の曲!『音符は急に止まれない』!」

 フロアの熱狂も最高潮に達し、申し分無い空気の中で最後の曲が始まった。夕貴もいつの間にかカウンターチェアから立ち上がっており、フロアの観客に混じって演奏を囃し立てた。

 五曲のセットリストを終え、フロアもバンドメンバーも名残惜しそうではあるが次のバンドの為にと転換作業を始めた。その間PAからは間奏曲が流されているが、夕貴の耳にはまだ先程演奏された曲が、余韻の如く響いていた。

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