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七本場12

「知り合いのバンドのサポートだよ。今からイベントさ」

「サポート?」

「正式なメンバーじゃ無いけど、臨時で手伝いをするようなモンさ」

「バンドの手伝い……」

 と言う事は中野は何かしらの楽器が演奏出来ると言う事なのだろうか。そんな話を聞いた事は無かったが、意外と言えば意外である。

「へー、後輩クン楽器が弾けたんだ」

「まあ……」

 そんな話をしていると、夕貴の脳内に『我が家路』の譜面が浮かび上がって来た。おニューのボードでのボーディングでせっかく忘れていたのに。

「バンドって事は、ギターとかドラムとか?」

「今日はベースだよ」

「今日は……?」

 ともすると昨日はドラムで、明日はギターなのかも知れない。中野は俗に言うマルチプレイヤーと言うヤツであろうか?

「へーカッコいいじゃん。私ってば音楽はからっきしだからさぁ」

「聴くくらいはするんだろ?」

「う~ん、でも流行りとかそう言うのは全然分かんないや」

「音楽は流行り廃りで聴くモンじゃ無いさ」

 どこと無く中野の言葉には含蓄があるような気がする。音楽はからっきしの夕貴であるが、中野の持つ貫禄から妙に説得力があった。

「チケット余ってるけど先輩も観に来る?」

「えっ、でも私お金無いよ?」

「大丈夫だよ、ノルマはこっちで払うから」

「ん?ノルマ?」

 中野は夕貴の疑問には答えず、どこからか紙切れを取り出し、夕貴の眼前でひらひらと振って見せた。

「時間は18時から。ワンドリンク付き。来る?」

「うーん、お金掛からないなら行ってみようかな?」

 音楽の善し悪しはともかく、未知なる世界への興味はある。しかもライブと言う現在進行形の世界を体験出来るとなれば、これは行かざるを得ない。夕貴は眼前をなびいているチケットを、人差し指と中指で受け取った。

「じゃあ悪いけど俺は先に行くよ。場所はチケットに書いてあるから。ま、夕飯前の運動のつもりにでも」

 突然現れたかと思えば異世界(ライブハウス)への招待状を突き付けて消えて行ってしまった後輩の背中を見送りながら、夕貴は夕焼けに染まり出した商店街の空を仰いだ。

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