七本場6
『リーチ』
そうこうしている内に、親がわずか四巡目にしてリーチを掛けて来た。ツモが増えた分だけ聴牌が早くなったのであろう。
(親リーはちょっとキツイ……リー棒出されたから和了りたいところなんだけど……)
夕貴は南家が現物を切った後、⑤をツモった。
四五七七③④⑥⑧457西白 ⑤
ナイスなツモなのだが何を切るか。親は8を切ってリーチしている為、7は切り辛い。白は下家の役牌バックに当たる可能性が高い。となると、まだ残して置きたかった自風の西を切るしかない。
夕貴は初牌であるが自風の西を切った。発声は掛からず、二副露している北家がツモる。
北家はやや考えていたかと思うと、何と手出しで白を切って来た。
(えっ手出しで白?)
夕貴は面喰らったが、直後に画面上にロンのカットインと声が走った。手を倒したのは、親であった。
一二三②②②⑤⑥⑦678白
親の手はこう。8を切ってリーチという事は5-8の両面待ちを嫌って敢えて白単騎に受けている。点数自体はリーチ一発だけの三九○○であるが、夕貴の下家は役牌バックを狙われてオリ打ちで振り込んだ事になる。
「後輩クン、普通⑨からは鳴かずに白から鳴いて親リー掛かったら⑨の対子落としだよね?」
「そうだな、そんな見え見えのバックじゃ狙われるな」
恐らく親は北家の役牌バックを警戒してたまたま白を押さえたのだろうが、上手くそれで待つ事が出来た。夕貴も間一髪で振り込みを回避出来たが、トップの親との差は更に広がってしまった。ここで親被りさせて点差を縮めて置きたかったが、これでは最早二着狙いが好いところだろう。
「ホント、ネット麻雀ってところ構わず鳴く人ばっかりなんだよね……」
「和了りたがりが多いからな」
自分の手牌だけ気にしていて勝てる程麻雀は甘くない。夕貴は普段実力者を相手に打っている為、そのくらいの認識はもちろんある。
東三局一本場は北家が喰いタンドラ一をツモ和了った。今更二○○○点プラス一本場をツモ和了って親被りさせたところで特に状況は変わらない。
東四局オーラス、ドラ⑦。親は夕貴の上家。
現状での点数状況は以下の通り。
上家 二四四○○
夕貴 二二四○○
下家 一五四○○
対面 三七八○○
夕貴がトップを取るには跳ツモでは届かず、満直か倍満以上の和了りが必要である。雀々横丁は同点の場合頭ハネとなる為、起家だった夕貴が二着を取る為には二○○○点以上の和了りが必要となる。
(ノミ手なら直撃縛り、役もドラも無いなら聴牌即リーのツモ専……)
一見大した事の無い点差のように思えるが、二○○○点は意外と重いのである。夕貴が好配牌を願いながら、オーラスが始まった。




