七本場5
「麻雀アプリしてるんだな」
「うん、こういう時間潰しに便利だし」
スマートホンの画面が見えたのか、中野は夕貴の今に食い付いて来た。夕貴も何となく、スマートホンを卓の上に置いて中野と画面を共有出来るように配慮した。
夕貴がやっているのは四人打ちの東風戦で、場は東三局が始まるところ、夕貴は二三◯◯◯点持ちの三着であった。ラスは一七◯◯◯点、トップは三五◯◯◯点、二着はクビである。
夕貴は現在西家、トップは東家、ドラは③である。
中野が画面を見ているのが視線で何となく分かるが、これは大会でも部の対局でも無い。普段なら上級者の中野に見られるのは緊張するが、所詮ゲームなのだから気楽に打とう……と、そう割り切れれば好いのだが、やはりどことなく肩肘張ってしまう。
場が動いたのは親が第一打の⑨を切った時である。現在ラスの北家がいきなりその⑨をポンしたのである。
(えぇ~いきなり親の捨て牌ポンするの?トップ目の親のツモを増やさないでよ……てか親からリーチされたらどうすんだろ)
親の安牌をいきなりポンするのだから相当の手なのだろうか。ドラが③だから無理染めの可能性もあるがそれにしてもいきなりこの鳴きは無い。少なくとも夕貴はそう思う。この点差では余程の手が入っていないと鳴いた手で追い付くのはまず無理である。
夕貴はこんな手である。
四五七八③④⑧2457西白 七
タンピン系の好配牌、ドラもあるし、第一ツモで雀頭も出来た。自風や役牌、孤立牌の⑧から切っても好いが、下家がピンコロの染め手だったら援護してしまう可能性がある為、夕貴は雀頭確定の八を切った。
《チー!》
夕貴が切った八を、下家は何と六七でチーして来た。七九ならまだチャンタ系の可能性もあったが、この鳴きで現時点では役が見当たらない。
「……後輩クン、これってもう後付けしか無いよね?」
「後付けだろうな」
タンヤオでもチャンタでも一通でも無い。役牌のバックか、せいぜい三色だろう。下手すれば片和了りの可能性もある。
(うわ、白が切りにくいじゃん……役牌のダブルバックもあるかも知れないし)
夕貴は⑥をツモり、仕方無く2を切った。




