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一本場17

 そして六巡目に夕貴は以下の形になった。


六七③③④⑥⑦35567中 4


 ここで夕貴は中を切った。普通ならば④を先打ちして、テンパイしたら中を切ってリーチである。

(普通は④切りでしょうけど、平坂さんはまだ防御が脆い……始めてからまだ日が浅いから仕方ないでしょうけど、この辺を覚えてくれれば平坂さんも強くなれるはず)

 彩葉は組んだ脚の膝の上に頬杖をついてそんなことを考えていた。

(この巡目で三枚目の中……リーチが入らないということはまだ一向聴辺り……)

 七海は夕貴の捨て牌を眺め、沙夜が捨てた後にツモり、自分の手牌を見渡した。


七七八八九九②②④④⑤12 3


 テンパイである。④を切れば両面待ちの一盃口である。しかしドラ待ちになってしまう。

(ドラは恐らくは手が動いている親のところにある……ということは)

 七海は④ではなく、⑤を切った。

 一巡回って夕貴のツモ。


六七③③④⑥⑦345567 ⑧


(安めだけどタンピンドラドラテンパイ!ダマでも好いけど、流れがあるしここは……)

 夕貴は④を切って曲げた。

「リーチ!」

 夕貴がリー棒を出そうとした瞬間、七海が手を倒した。

「リーチは成立しません。一盃口のみ、一三○○は一六○○です」

「あちゃ!?」

 夕貴は指につまんだ千点棒の行方に困惑し、一瞬卓上を彷徨してしまった。

「えー④切りの平和じゃないの?」

「ドラ側はなるべく早く切っておいた方が好いですよ、平坂さん」

 七海は説教くさいことを語りながら点棒を受け取った。

(及川さんは人の手牌や山の残り牌を読むのも得意ですからね……この辺りはさすがといったところでしょう)

 彩葉は小さく微笑んでその様子を見ていた。

 部長として部員のクセは把握しているつもりである。好いところは伸ばし、不備のあるところは調整を掛けて行かなくてはならない。全国の猛者を相手にするには生半可では通用しないのだ。

 牌を流し、東二局となった。

 東二局、ドラ9。親は沙夜。

「ポン……」

 三巡目、不意に沙夜が中を鳴いた。初牌であるが構わない様子で中を鳴く。

「チー」

 そして五巡目、4を56でチーした。

「ツモ……」


七八11789(456)(中中中) 九


「一○○○オール……」

 中ドラ一の速攻である。しかしもう少し我慢すれば中混一色まで見えただろうが構わず和了ってしまった。

「沙夜相変わらず早ーい」

「麻雀は和了らないと意味が無いんだよ……」

(名古さんの得意は速攻……親でツボにはまれば驚異的な破壊力を持つ。ただ、長打狙いの展開に巻き込まれると脆い一面もある。逃げ切りの展開か、追い込みの展開かで名古さんの立ち位置は変わってくる。いわば遊撃手のような存在……)

 彩葉は相変わらずの体勢で見学している。どちらかと言えば中野の打ち筋を見たいのだろうが、血の気の多いこの面子のこと、負けず嫌い故にそれは容易には叶うまい。

 親が和了ったため一本場になったが、七海が白のみを僅か四巡でツモり、東三局となった。

 東三局、ドラ二。親は七海。

 今日この場のセッティングを要望した七海は中野に負けまいと意気込んでいた。雪辱戦が本来の目的であるが、部活的には中野の実力を量るためという意味も孕んでいる。

 正直なところ、五人在籍してさえいればインターハイ出場は可能であるため、打つことさえ出来れば技量の高さは関係ないという側面もある。

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