七本場3
結局悩んでみても現況で自身の歌唱力が向上する訳でもない。渋沢試験は出たとこ勝負で肚を括るしかないと、夕貴は開き直る事にした。
それにしてももう終業からそれなりに時間が経っているが、部員が来部する気配がない。委員会等の放課後御多忙タイムなのだろうか。
部のグループトークにも何も連絡がない。来られないのであれば何かしらの連絡があるはずだが、本当に誰彼も忙しいのかも知れない。
夕貴はもう少し待ってみる事にし、スマートホンを手に取ったついでに、オンラインで対局が出来る麻雀アプリ『雀々横丁』を起ち上げた。麻雀部部員とは言え、自身は彩葉や七海に比べるとまだまだ未熟である為、勉強になればと思ってインストールしたものである。
まだ下の階級をうろうろしている自分ではあるが、対面していないとは言え対人戦である為それなりに勉強になる。実戦的な打ち方も学ぶ事が出来るし、こうした空き時間に遊ぶにはちょうど好い。
自分はまだ鳴き等の技術は低い。チーや上家からのポンなら次が自身のツモ番なのである程度は考える時間があるが、実戦だと発声が遅ければツモ番が進んでしまう事がある。ゲームの麻雀ならそこで一旦進行が止まる為考える間が出来る。
逆に言えば止まると言う事はその時に捨てられた牌が必要牌だとバレてしまう。鳴いてしまえば問題は無いだろうが、悩んだ挙げ句鳴かなければそれが隙になってしまう。
やはり攻守に優れるは門前であるが、鳴きが使えると戦略の幅が広がる。しかしポンチーだけで勝つ事は出来ない。
副露は麻雀に於いてごく当たり前の行為であるが、斯様に特殊な技術なのである。




