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七本場1

 『我が家路』という唱歌がある。文武化学省推奨の、中~高等の音楽の教科書には必ずといって好いほど掲載されている古い唱歌である。

 ヨーロッパ地方の民謡らしいが、親しみやすい(笑)メロディライン、自然の豊かな情景を描写した歌詞で、歌詞が各国語に翻訳され、日本のみならず世界各地で愛唱されている唱歌である。普通に教育を修了した者であれば必ず一度は耳にした事があるであろう名歌である。

「う~ん……」

 そんな著名な唱歌であるが、誰もがそれを歌えるかというと、それはまた別の話である。矢上南高校二年の(自称)麻雀部副部長の平坂夕貴は、麻雀部の部室で自動卓の上にとろけるような姿勢で座り、音楽の教科書とにらめっこして何やら唸っていた。他の部員はまだ誰も来ておらず、それを好い事に夕貴は自動卓を占領して好き放題している。

「何で皆あんなに歌えるのかな~、音階なんてどうやって声に出せば好いの?」

 独り言を口にしている夕貴が読んでいるのは『我が家路』の楽譜が掲載されているページで、歌詞と主旋律の進行が記されているおり、夕貴を悩ますものの正体はそれである。

 声楽を学んでいるのでもない限り、普くJKが自身の声の音階を把握する機会などそうはない。カラオケにしても普段聴いている曲を感覚的に口にしているだけであり、特別な練習をして臨むという事は、放課後のパリピカラオケではまずないだろう。

 逆にいうと、普段聴かない曲を楽譜だけを頼りに歌え、という方が難題なのである。

 『我が家路』の原曲は四番まであるが、教科書には大体二番までを翻訳したものが載っている事が多い。夕貴がにらめっこしている教科書もご多分に洩れず二番までの掲載であるが、全体の比重が減ったからといってその労力は変わらない。

 そう、夕貴は授業の課題として『我が家路』の歌唱を行わなければならず、そのプレッシャーから来る負担に身悶えしているのであった。

※『我が家路』はフィクションです。念の為(笑)

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