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六本場21

 南二局、ドラ⑥。親は中野。

(キーちゃん二回の振り込みは痛い!親も無いからここから逆転は厳しい!?)

 採譜している和坂は、鍵屋町のあだ名を心中に叫びながら、その身を案じていた。

(キーちゃんちょっと気が弱いから、連続で振り込んだら縮こまっちゃうんだよね……)

 七七○○点プラス二本場を中野に、更に六四○○点を聖陽の梅香崎に打ち込んでしまった鍵屋町の背中は更に小さくなってしまったようで、普段からその姿を見知っている和坂は友人を気遣う思いに溢れていた。

(ドラで打ち込みなんて……何でこんな……!)

 キーちゃんこと鍵屋町は半泣きの表情になりながら、張り合い抜けしたような手付きで配牌を取った。


一一二二三①②③⑥⑧239


(おっ?好配牌?)

 鍵屋町の配牌を採譜する為に後ろから手を覗いていた和坂は、意外なるや、その配牌の好さに身を乗り出した。連続振り込みの鍵屋町であるがチャンス手が入った。三色やチャンタも狙える。ツモが好ければ跳満、倍満もある。

 配牌を取り終えた親番の中野は、採譜をしている和坂の方をちらりと見ると北を切ってスタートした。

(中野くん……今和坂さんの方を見たような?)

 ほんの僅かではあるのだが、和坂が身を乗り出した事を中野は気付いているようであった。彩葉からは鍵屋町の手牌も見えている。鍵屋町の配牌が好配牌である事は外から見ている彩葉も分かるが、こういった観察眼は自身には無い。

 競技中は手牌捨て牌に集中している為、採譜者の微妙な反応に気付く事は無い。雀荘で打つ場合はギャラリーがいる可能性もある。ギャラリーの微妙な反応で相手の手の内を悟る事もあるいは可能なのかも知れない。この辺りは競技麻雀にとって専門外である。

 一巡目で鍵屋町は偏張の三を引いた。

(いきなり急所を……これは早そうですね)

 鍵屋町はドラと純チャンの受けを考えてか、⑧を切った。

(いきなりドラ跨ぎの⑧切り?ドラ対子でも入ったか?)

 西葉川は鍵屋町の好配牌を第一打から察した。西葉川は鍵屋町の上家であるが、七対子だとすると絞る意味があまり無い。

(ここここの手は絶対和了らなきゃ!さっきの二回振り込みはともかく、スコアでは負けないようにしないと……!)

 純チャンにしろドラドラにしろ、高めなら倍満が狙える。鍵屋町は焦りが貼り付いた心情を悟られまいと麻雀フェイスを装ってはいるが、やはり緊張は滲み出している。

 そして僅か二巡目、鍵屋町はドラの⑥を重ねた。


一一二二三三①②③⑥239 ⑥


「リ、リーチ!」

 あまりの進捗の好さに、鍵屋町はほとんど手拍子でリーチを掛けた。ダマでも高めなら跳満だが、ここは1をツモって倍満を狙う一手である。

 鍵屋町の爆速リーチを受け、現在トップ目の親である中野は何かを嘲弄したかのように小さく嗤うと、オタ風の西を切った。

 他家の二人もさすがに安牌が無いのか、初牌の字牌を切ったり、筋を切ったりしている。

 そして九巡目、鍵屋町はド安めの4を引いた。

(安めだけど跳満……キーちゃんどうする!?)

 セオリーで行けばもちろんツモ和了りである。トップ目を親被りさせられるし、まだ局はある為逆転の可能性は充分にある。

(どうしよう、部の対局なら間違い無く和了るけど……)

 鍵屋町は三秒ほど考えた後、4をツモ切りし、フリテンに受けた。

 その時の中野の手牌は以下の形。


二四五八八③⑤111白發發 東


(高めの1は中野くんの三枚持ち……果たして残りの一枚は山にあるでしょうか?)

 中野は小考したようであったが、4の筋である1を切った。一枚通れば三枚通る、一か八かの典型である。

(トップ目から出たのにフリテン!!ううっ)

 鍵屋町がフリテンである事を知ってか知らずか、中野は遠慮無く1を暗刻落としした。

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