表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/193

六本場14

 各校の面子が入れ替わるドサクサに、天條学院の牧田と採譜をしていた女子生徒が声を交わした。

(おい牧田、あの矢上南の男知ってるか?)

(いえ、インタージュニアでも地方の大会でも見たことはありませんね。頭数合わせの新人では?)

(ん……いや、好い。採譜を頼む)

 その女子生徒は着ている黒のカーディガンの袖をくるくるとまくり、牧田に替わって席に着いた。ネクタイを緩め、髪はロングヘアを染髪しているようで、ややガサツな印象を受ける。いわゆるヤンキーJKというヤツであろうか。

「天條学院の西葉川さえがわだ」

「飛鳥台の鍵屋町かぎやまちです」

「聖陽の梅香崎うめがさきです」

「矢上南、中野」

 他校のメンバーも入れ替わり、場所決めの結果、起家が飛鳥台の鍵屋町、後は中野、聖陽の梅香崎、天條学院の西葉川という順番になった。

 東一局、ドラ⑧。親は飛鳥台の鍵屋町。

 飛鳥台には商業科がある為、女子生徒の比率が高い。鍵屋町は眼鏡を掛けたショートヘアの女の子で、奔放な雰囲気の和坂とは違い、肩幅が中野の半分しか無く、いかにも線が細い印象である。

 しかし、身体付きは小さくとも牌を扱う手付きは十年選手のそれである。ベテランと何ら遜色はない。

 彩葉から見える中野の配牌は以下の通り。


一三五②④⑧⑨⑨245東白


 ドラは一枚あるものの好い配牌ではない。平和を狙うには急所が多く、ドラも浮き気味である。どちらかというと受け重視で戦わざるを得ない配牌だろう。鍵屋町が九を切り、中野は七をツモって一を切った。

 聖陽の梅香崎は勤勉そうな男子学生で、麻雀よりは囲碁将棋の方が似合いそうな印象である。慣れた手付きで南を切った。

 五巡目まで回ったものの差し当たり特定の傾向が見える捨て牌は無く、皆基本通りに手を進めているようだ。中野はというと、やはり急所の処理に手こずっているようで、未だに三向聴であった。


三五七八②④⑧⑨⑨245東 八


 中野はやや悩んでいたようだが2を切った。というのも東は初牌で、直前に親の鍵屋町が僅かに思考してドラ表の⑦を切っていた。となると、⑦⑧⑧の形から何を切るかの選択で、ドラ切りの両面受けではなくドラを対子にし、東はシャボ待ちあるいはポンネタとして選択した可能性がある。

 それを受けての2切りは好判断と言えよう。

 しかし何らかの形でこの東が昇華されない限りこの手は金縛りとなってしまう。

 そんな事を、採譜をしていた彩葉が考えていると、中野の対面に座る西葉川が唐突に初牌の東を叩き切って来た。一瞬場に緊張が走るが、親の鍵屋町も他の誰も鳴かず、鍵屋町は面喰らった表情でその東と西葉川にちらりと視線を向け、眼鏡を指でくいと持ち上げると、ツモった白をツモ切りした。

 彩葉は中野の左後ろに座って採譜している為、親の手の内が見える。その時点での親の手は以下の形。


二二六六⑧⑧77東東北發發


 七対子ドラドラの聴牌であり、東は鳴かなかったのではなく鳴けない形であった。シャボでは無かったが中野の判断は当たらずも遠からずといったところだが、問題は東を切った天條学院の西葉川である。

(単なるイケイケ麻雀ならさほど恐くはないのですが……)

 彩葉は西葉川をやや警戒した。中野は四をツモり、合わせ打ちで東を切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ