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六本場9

「ロン」

 彩葉はゆっくりと手を倒した。


①②③⑤⑥⑦⑧⑨南南發發發


「一六○○○です」

「わっ!」

 いきなり倍満のロン和了り、これには和坂も動揺を隠せない様子で、思わず身を乗り出している。

「一六○○○という事は配給のほぼ54%……」

 牧田が独り言の様にそんな事を呟いている。振り込んだ和坂はいきなり手持ちを半分以上失った事になる。

「ダマッパネをリーチとは、熱いな部長」

「ありがとうございます」

 採譜をしていた中野がそんな事を言ってくる。一発も裏も無いのだから、リーヅモにしたところで倍満は変わらない。いつもの彩葉ならこれは黙テンで出て跳満、ツモって倍満にするはずだ。何か彩葉なりに思うところがあったのだと思われた。

 東二局、ドラ5。親は天條学院の牧田。

 競技ルールでいきなりの倍満、こうなれば54%の彩葉は振り込まない限りはほぼ安泰であろう。そう、54%なのである。

 彩葉は先ほどの和了りで手が付いているのか、七巡目に以下の形になった。


三三四四五五⑥⑦34678 2


 雀頭無しのタンヤオ一盃口、筒子を切れば単騎待ちの聴牌である。出て二六○○点ならとりあえず仮テンに取る打ち手がほとんどであろう。

 しかし彩葉は、少考したかと思うと、四を切って一向聴に戻した。

「リーチっ!」

 直後に和坂が五を切ってリーチを掛けて来た。その五を鳴けば再聴牌出来るが、彩葉は反応せず、牧田が切った後にツモった。


三三四五五⑥⑦234678 六


 タンピンの再聴牌、この形なら現物を切って勝負になる。安易に五を鳴かなくて正解である。

「リーチです」

「ひえっ!」

 彩葉は迷う事なく五を切ってリーチを掛けた。和坂は倍満を取り戻そうと必死の様だが、彩葉の容赦ない追撃におののいている。

 彩葉の下家の向井は場に二枚出ている北切り、和坂はツモった牌を見て顔をしかめ、そっと九を切った。が、彩葉の当たり牌ではない。和坂は安堵した様な表情を浮かべた。

 牧田はその九を合わせ打ち、そして彩葉のツモ。

「ツモ」


三三四五六⑥⑦234678 ⑧


「一三○○・二六○○です」

「ま、また打ち負けちゃった……」

 一発はナシのルールだが事実上の一発ツモである。彩葉の流れはどうやら本流の様だ。

「その手で四五切りって事は、入り目は六ですか?」

 天條学院の牧田が彩葉の手を考察して来る。さすがに名門だけあって読みは的確である。

「ええ」

「という事はタンヤオ一盃口の単騎に取らず一盃口崩し……」

「じゃあ柊さんが五をポンしてたら私は六ツモ?それ、私の和了り牌……」

 余りの悔しさ故か、和坂は手を倒した。


一一一六六③④⑤999中中


 ツモり三暗刻、単純に和了るだけなら六切りの四―七待ちで好いのだろうが、先ほど打ち込んだ倍満を取り戻そうと必死だったのだろう。

 もし一度目の聴牌で単騎待ちを選択していたら、六をツモって筒子の残りを切っても自身で三枚使いの三―六待ちである。和坂も六を二枚持っていた為、下手すればツモり負けていた可能性もあった。

 倍満を和了った後ならそれをキープする為に単騎でも聴牌に取りたくなるのが人情であるが、彩葉の熟達した打ち筋はさすがといったところである。

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