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六本場6

 重たい扉を開けたらそこは、元は高級店であった事を窺わせる華やかな内装であった。床は絨毯、天井には小さいがシャンデリアが下がり、入って正面にあるカウンターには大仰な花束が活けられている。

「いらっしゃいませ」

 二人が中に足を踏み入れると、カウンターの中にいるスーツ姿の女性がお辞儀をして来店を歓迎してくれた。

「入店許可証をお持ちですか?」

「えー……あれ、どこに入れたかな」

 中野がカウンターの女性と話している隙に彩葉はちらりと店内を盗み見た。カウンターから左手に向かって店内が広がっている。中央に通路、そして待ち合い用と思わしきソファがあり、その両側に個室が三つずつある。来る前に中野が言っていた通り個室同士は間仕切りがあるが入口はオープンになっており、通路に立てば全ての個室を見渡せた。

「部長、許可証」

「えっ……あ、すいません」

 彩葉は中野から声を掛けられ、慌てて通学鞄から入店許可証を引っ張り出した。

「……はい、確かに確認致しました。現在三人がお待ちですので、お一人様、すぐに打てます」

 彩葉と中野は顔を見合わせた。正直なところ彩葉は一回目を(ケン)したい心境であった。店に詳しい中野は場馴れしている様子だし、最初は中野に打ってもらって自分は雰囲気を掴む事に専念したかった。

「部長、打つだろ?」

「え……」

 不意に中野がレディファーストを提案してきた。いや、打ちたいのは山々だがまだこの雰囲気に馴れていない。しかし、ソファで待ち合いしている他校の生徒からの視線が突き刺さった。

(柊彩葉だ……)

(すげー美人だな)

(スタイル好いー)

 他校の生徒が話している声が聞こえる。かつて雑誌に載った事のある彩葉は有名人である。ここでKY中野に打つ権利を譲るとファンの期待を裏切る事になる。いや、そもそもファンがいるのかと言われると定かではないが、少なくともこの場に於いては期待の眼差しを感じる。あるいは中野も、この視線を感じた上、なのかも知れない。

「……分かりました。では僭越ながら」

 場の期待を一身に受け、俎の上の鯉となった彩葉は覚悟を決め、待ち合いの三人と同室した。

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