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六本場1

「ツモ、二六○○オールです」

「あぁ~また七海ちゃんのトップかぁ」

 部活に於いて半荘二回を打ち、二回とも七海がトップを取った。そんな七海の様子を後ろ見していた彩葉は七海に心境の変化があったのであろう事を察していた。

(及川さん、垢抜けたというか涅槃を得たというか……明らかに雰囲気が違いますね)

 彩葉は点棒を差し出している中野にちらりと視線を飛ばした。

(何があったかは分かりませんが……恐らくは)

「部長」

 彩葉は中野から声を掛けられて我に還った。

「俺は▲2.6だよ」

「あ……はい。皆さん点数をおっしゃって下さい」

 彩葉は点数を手早くまとめ、二着の中野と入れ換わった。

(及川さんが迷いを捨てられたのなら……インターハイも夢ではありませんね)

 席を立った中野の背中を見上げながら、彩葉は小さく微笑んだ。


 翌日の昼休み、彩葉は教諭から召喚を受け、職員室に出向いていた。呼び出したのは麻雀部顧問の女性教師である。

「お昼休みにごめんなさいね柊さん。高麻連から通知が来てたから知らせておこうと思って」

 その女性教師は名前を堂河時乃どうかわときのという。前髪無しのボブカットに、リムレスの眼鏡を掛けている。堂河は机の引き出しを漁ると、彩葉に何枚かの用紙を差し出した。

「高麻連公認のお店の通知ですって。ここに載ってるお店なら高校生でも打てるから、他校の生徒達とも打てるみたい」

 日本高等学校麻雀連盟、略して高麻連である。高等学校の麻雀競技の統括を担う元締めの組織である。

「分かりました。部員達にも配布しておきます。それはそうと堂河先生、たまには部活に顔を出して下さい。そろそろ地区予選ですし、皆を激励する意味でも」

「うーん……行かなきゃとは思っているんだけど……」

 堂河はバツが悪そうな表情を浮かべ、耳に髪を掛け直した。これは堂河が焦っている時の癖である。

「柊さんが、そのぅ、頼りになるから……」

 消え失せそうな声を上げながらチラリと彩葉を見た堂河を見て、彩葉は内心、やれやれと達観した。

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